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貧困の子どもたち知って=「厳しい環境、伝える役割」-後藤さん、訪問の養護施設で
保育園の職員に、紛争地などで医療や教育を受ける機会を奪われた子どもたちについて講話をする後藤健二さん(奥)=2010年11月、長崎市(社会福祉法人明星会提供)
「貧しい子どもが世界にいることを、日本の子どもにも知ってもらいたい。それが自分の役割」。過激組織「イスラム国」とみられるグループに拘束されたジャーナリスト後藤健二さん(47)は、2010年10月に長崎市の児童養護施設「明星園」を訪問。施設で暮らす子どもたちに、紛争地などで貧困に苦しむ子どもの様子を伝えていた。
訪問は、同市内で開催された平和をテーマにしたアート展で、園を運営する社会福祉法人の伊東潮理事長(71)と知り合った後藤さんが、「一晩泊めてほしい」と打診したことから実現。数日後に宿泊した後藤さんは、子どもたちと一緒に夕飯のカレーを食べたり、図書室で紛争地での体験を話したりした。抱っこをせがむ子どもたちにも喜んで接していたという。
奥貫賢治園長(66)は「4年以上前のたった一晩の触れ合い。だけど、抱っこしてもらった子たちは、今でもしっかり覚えている」と懐かしむ。
当時中学1年だった高校3年の江川翼君(18)は、見せてもらった紛争地の写真や、取材で使う衛星電話が記憶に残るという。「日本の子どもにも、貧しい国の子どものことを知ってほしいと一生懸命訴えていた」と思い出を振り返った。
後藤さんは、同法人運営の長崎市内の保育園も訪れ、医療や教育を受ける機会を奪われたアフリカ・リベリアの子どもについて、写真や地図を示しながら職員に講話。「こういう厳しい環境にいる子どもたちのことを伝えるのが私の役割だ」と語っていた。
その年の暮れ。「すてきなクリスマスを」などと手書きしたメモを添えた、大量のチョコレートが養護施設の子どもたちに届いた。奥貫園長は「体に気を付けて頑張ってください」とメールでお礼を伝えた。後藤さんとのやりとりは、これが最後となった。奥貫さんは「とにかく命だけでも助けてほしい。子どもたちは心待ちにしている」と、無事を祈った。(2015/01/26-05:19)