こつなぎの写真ノート

身近な自然の彩りを楽しみながら

玉原湿原にて、ミズチドリとキンコウカ、2012年7月

2012-07-19 | 湿原

7月17日午後、私達は玉原湿原(群馬県沼田市)に再び向かった。湿原の花は、季節の変化にともなって、めまぐるしく変わる。前回(7月上旬)、私達をアサヒランやトキソウの花の美しさに目をうばわれた。今回は、これらの花が湿原から消え去り、ミズチドリやキンコウカが目立つようになっていた。

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木道を歩き始めるや否や、私達は歓迎のパンチを浴びた。高い茎のミズチドリが花を開いていたのであった。

この湿原での面白さで、午後の暑さも気にならなくなった。画像において、大きな実をつけているものはヒオウギアヤメである。


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ミズチドリ(水千鳥、ラン科ツレサギソウ属) 

日当たりのよく水が多い湿地に生える多年草。この画像の花の長さ(穂状の花序)は約20 cm、茎の高さは約90 cmであった。

花に芳香があるので、このものにはジャコウチドリ(麝香千鳥)との別名がある。

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キンコウカを従えて

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湿原には、ミズチドリの群生地があった。しかし、惜しいことに、その場所は木道から離れてる。

観察には望遠レンズあるいは双眼鏡が必要であった。画像において、ミズチドリの前はオズゼヌマタイゲキ。

背後(右)はコバイケイソウである。

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湿原では、キンコウカの群生が一斉に花を開いていた。午後の強い日差しを受けて、黄金色の集団は眩しいほどに輝いていた。

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キンコウカ(金黄花、ユリ科キンコウカ属)

湿原に群生する高さ20 - 30 cmの多年草。花は、終わっても散らないで緑色の面白い形状のものに変化する。

日本固有種。花名は花の色による。

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奥には、貴婦人(?)と言いたいが

 

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地上ではキンコウカのうねり、上空では夏の雲のうねり

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湿原の標高は約1,300 m。木道で、私達は午後の強い紫外線に曝された。それなりの紫外線に対する対策を準備したが。玉原湿原の総面積は約 4 haである。多種類の植物が分布し、その群落も少なくない。この湿原は尾瀬に例えられて「小尾瀬(こおぜ)」と呼ばれるとのこと(沼田市HP)。しかし、この例えに対して、私は違和感を持っている。この湿原のユニークな植物相には、「山椒は小粒でもびりりと辛い。」の諺が当を得ていると思っているからだ。

 


ところで、湿原の近くにあるブナ林での湧き水。この清らかで冷たい湧水によって、私達はリフレッシュすることができた。

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玉原湿原にて、サワラン(アサヒラン)の花、2012年7月上旬

2012-07-07 | 湿原

玉原高原(群馬県沼田市)に、高層湿原(玉原湿原、標高1,300 m)がある。規模は大きくないが、この湿原の植生は興味深い。湿原を訪れ人はあまり多くないので、木道から花を静かに眺めることができる。

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先週(7月5日)、湿原ではサワランやトキソウの花が咲き始めた。まだ、緑の中に点在している程度であるが、サワランの花や蕾は目立つ。

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紫紅色の花は周囲の緑から浮かび出るようであった。花は小さく(2 - 3 cm程度)、開く程度も控えめである。しかし、このものの濃厚な色と美しい造形には、見る人を唖然とさせるようなインパクトがある。


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湿原での雪融けが遅かったために、花々の開花が遅れているとのことであった。しかし、私達が木道を歩いたとき、トキソウ、ワタスゲ、ヒオウギアヤメ、オゼヌマタイゲキ(オゼタイゲキ)、キンコウカなどが風で揺れていた。


緑の中に、トキソウ(鴇草、ラン科)の花

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ワタスゲ、ヒオウギアヤメ、オゼヌマタイゲキ(オゼタイゲキ)(トウダイグサ科トウダイグサ属)、そしてブナの森

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花が開き始めたキンコウカ(金光花、金黄花、ユリ科キンコウカ属の多年草

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おわりに、湿原の案内板

 

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サワラン(沢蘭、ラン科サワラン属の多年草)

本州中部以北、北海道の山中の湿原に自生している。花茎が葉よりも高く伸びて、一輪(稀には二輪)の花が横向きに開く。花の色をたたえて、このものには「アサヒラン(旭蘭)」との別名がつけられている。

日差しを受けているときの花の色は鮮烈である。花をマクロレンズや望遠レンズでクローズアップしたとき、私は輝く紫紅色の造花が目の前にあるとの錯覚に陥りそうになった。多分、花に含まれている色素が紫外光によって発光(蛍光発光)していたのであろう。花茎の高さは20 cm程度。変種としてシロバナサワランがある(玉原湿原では見なかったが)。


トキソウの花などは、次回の記事としたい。

 


谷川岳に向かうと、2012年7月

2012-07-03 | 谷川岳・草津白根山

7月1日、臨時団体旅行として、私は友人と谷川岳を向かった。この日、ロープウェイ乗車口(土合口)付近では、谷川岳開山日の催しが行われていた。しかし、天候は、曇りから、濃霧、そして降雨へと変化した。



臨時団体列車(JR水上駅行き)の到着を待ちながら、乗車駅にて。

車両は183系(6連)であった。183系は旧国鉄時代に特急列車として活躍した。リニューアル車であろう。車体にプラットホームが映っている。1日6時25分撮影。

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用意された谷川岳と温泉を楽しむとのプランから、私達は「ロープウェイ利用、天神平から 天神尾根 → 天神山 → 高倉山 → 天神平 → (保登野沢コース) → 谷川温泉を歩く」とのプランを選んだ。ちなみに、群馬県谷川岳登山指導センターの案内に、「 保登野沢コースは中級者向け、ヤマビル(ヤマヒル)の対策が必要である。」と記されている。

 

山頂や周辺の山は濃霧の中に隠れていたが、沿道で咲く花を撮ることはできた。団体行動による時間的制約があったが。頭上には、タムシバの花(モクレン科)。花には、モクレン科のものらしい質感の美しい姿が保たれていた。9時50分頃撮影。

 

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天神尾根では、ウラジロヨウラク(ツツジ科)の花が目立っていた。花名は釣鐘型の花が仏具の瓔珞(ようらく)に似ていて、葉の裏が白味を帯びている(うらじろ)に由来する。今回のものは花と葉が美しい。10時頃撮影。

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記事を公開したとき、このものをベニサラサドウダンと誤記しましたので、これを訂正します。コメントで、当方の誤りをご指摘された「でんさん」に、御礼申し上げます。

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天神山・峠では、ナナカマド(バラ科)の花が見頃となっていた。ところで、10時半頃から雨が降りだした(天気予報は15時頃から降雨となっていたが)。10時15分頃撮影。

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次いで、天神山から天神平に下るスキー場ゲレンデを歩いた。ゲレンデ近くの岩場には、ナエバキスミレの群生が残っていた。10時40分頃撮影。

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下山での核心部分(天神平 → 保登野沢コース → 谷川温泉)に入ると、ヒメシャガ(姫射干、アヤメ科、アヤメ属)の花を見ることができた。ヒメシャガ: 日本特産の多年草、山地の森林での岩場や急斜面に自生している。ヒメシャガの園芸種については栽培法が解説されている(たとえば、NHK出版、みんなの趣味の園芸)。しかし、この自生種には、その場の雰囲気を帯びた美しさがある。11時頃撮影。

 

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ヒメシャガの花と蕾。この時はヒメシャガに気を取られ確認しなかったが、黄色の花(背景)はキスミレ(ナエバキスミレ)であったもしれない(残念)。

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保登野沢コースでの登山道は山腹(樹林帯の急傾面)に設けられている。笹などは刈り払いされているが、道が狭く岩石が露出している箇所が多々あった。岩が雨で濡れていために滑り易く、「谷側へのスリップ = 危険(転落)」となりそうな場面にも遭遇した。数箇所の渡渉地点では、橋がなく、飛び石を利用して沢を渡たることが求められた(1箇所、ロープが張ってあった)。雨で濡れた飛び石は極めて滑り易かった。下部の林道では、崩壊している場所(1箇所)に、梯子が用意されていた。

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道では、雨で活動が活発になった多数の「ヤマビル(ヤマヒル」が下山者一行を待ち構えていた。コースでの歩行時間: 約2時間。下山での標高差: 800 m程度。かなりの緊張の求められたが、保登野沢コースは歩き甲斐のある登山道であった。晴天のときに、この道を再び歩いてみたい。


画像は、右上の斜面から下山して小休止したときに撮った。このときは、幽玄を感じさせる雰囲気が周辺に漂っていた。

11時20分頃

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終着地点に近いホワイトバレースキー場ゲレンデにて、下りてきた方向を振り返えって。余談ながら、トイレ(左奥の建物)ではヘビの歓迎を受けた。13時頃撮影。

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ゲレンデのそばに咲くノアザミの花。花は私達の疲れを忘れさせてくれた(13時頃撮影)。

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谷川温泉に着き、安堵の気持ちが出てきたとき、執拗なヤマビルが私達に同伴していることに気付いた。私の靴に付いているヤマビル(吸血したものでは、膨んだ胴体が黒色を帯びる)(13時半頃撮影)。

 

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幸いにも(?)、私自身はヤマビルによる被害を受けなかった。その理由: タイツと靴下(2重)を着用して、肌(足)を露出しなかった。長袖シャッツ・手袋(ゴム製の滑り止め付き)の着用。ツバの広い帽子と首筋に巻いたタオルでヒルの侵入を防いだ。ヤマビルに対して効果がある虫除け剤(スプレー)を、歩きながら靴や衣服に散布した。


ヤマビルのアタックを数箇所ほど受けた友人の足。15時頃頃。

 

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友人の被害はこれだけでは終わらなかった。再び登山靴を履いたとき、靴の奥にいたヒルのアタックを受けた。このことによって、ヤマビルが実に執拗な生き物であることを、私達は体得した。なお、ヤマビルは靴でいい加減に踏んだくらいでは潰れなかった。

 

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天候の悪化や保登野沢コースでのヤマビルなどのために、私達は9時半頃から13時半頃まで歩き続けた。しかし、ゆったりと座れる臨時団体列車での旅。復路は、ヤマビルのことなどについて談笑しながらにて、往路のときよりも楽しかった。