Kは寿司が好きな男。そして、女性にも優しい男性である。
ふたりの女性と別れてからしばらく経つが、3人目の女性は現れなかった。
ひとりで過ごす日々が続いていたある日、彼は行きつけの寿司屋に顔を出した。
いつものようにまぐろ寿司のあんこ乗せを食べ、あなごを黒みつで食べた後に、ほたてを注文した。
Kは決まって、ほたてにはシナモンをかけて食べる。
シナモンをかけて食べるほたて寿司は絶品なのだ。
シナモンのほろ苦い香りがほたての旨みとよく混ざり、キナコ餅のようにうまかった。
ふと、隣に座る女性からの視線に気づいた。
― 彼女も、ほたてにシナモンを振りかけて食べている。
なんとKに微笑みかけ、相席を申し込んできた。
もちろん彼は受け入れ、席に着く。
そのとき、彼女に注文が運ばれて来た。
ココナッツミルク入りのカニ味噌汁だった。
Kの目はみるみる輝き、彼女のココナッツミルク入りカニ味噌汁をひと口いただいた。
甘い香りが舌に広がり、鼻を包む。
ココナッツミルクと交じり合うカニの風味が、胃を元気にする。
彼女もKから、シナモンほたて寿司を一貫いただく。
ほたての濃厚な旨みがシナモンに溶け、さらに食欲をそそる。
ふたりとも、こんなに楽しい食事ができたのは初めてだった。
そしてもっとお互いを知りたいと思い、
Kと彼女は寿司屋を出て歩いた。
少し肩を寄り添って歩きながら、お互いの食生活の話をし、
食事を本当に楽しんでいる人がいないと嘆いた。
ひとしきり会話を終えたとき、あたりが静かだった。
月明かりがふたりを照らす静かな夜。
Kが彼女を見つめて交際を申し出ると、すぐに彼女もうなずいた。
Kは嬉しくなって彼女の手を握り、肩を抱き寄せた。
彼女も上目遣いで彼の目を見ている。
Kは意を決し、彼女に口づけをした。
それは、Kが今まで交際した女性たちの中で一番甘く苦い、恋と魚介の味がする口づけだった。
Fin
この記事はフィクションです。念のため
ふたりの女性と別れてからしばらく経つが、3人目の女性は現れなかった。
ひとりで過ごす日々が続いていたある日、彼は行きつけの寿司屋に顔を出した。
いつものようにまぐろ寿司のあんこ乗せを食べ、あなごを黒みつで食べた後に、ほたてを注文した。
Kは決まって、ほたてにはシナモンをかけて食べる。
シナモンをかけて食べるほたて寿司は絶品なのだ。
シナモンのほろ苦い香りがほたての旨みとよく混ざり、キナコ餅のようにうまかった。
ふと、隣に座る女性からの視線に気づいた。
― 彼女も、ほたてにシナモンを振りかけて食べている。
なんとKに微笑みかけ、相席を申し込んできた。
もちろん彼は受け入れ、席に着く。
そのとき、彼女に注文が運ばれて来た。
ココナッツミルク入りのカニ味噌汁だった。
Kの目はみるみる輝き、彼女のココナッツミルク入りカニ味噌汁をひと口いただいた。
甘い香りが舌に広がり、鼻を包む。
ココナッツミルクと交じり合うカニの風味が、胃を元気にする。
彼女もKから、シナモンほたて寿司を一貫いただく。
ほたての濃厚な旨みがシナモンに溶け、さらに食欲をそそる。
ふたりとも、こんなに楽しい食事ができたのは初めてだった。
そしてもっとお互いを知りたいと思い、
Kと彼女は寿司屋を出て歩いた。
少し肩を寄り添って歩きながら、お互いの食生活の話をし、
食事を本当に楽しんでいる人がいないと嘆いた。
ひとしきり会話を終えたとき、あたりが静かだった。
月明かりがふたりを照らす静かな夜。
Kが彼女を見つめて交際を申し出ると、すぐに彼女もうなずいた。
Kは嬉しくなって彼女の手を握り、肩を抱き寄せた。
彼女も上目遣いで彼の目を見ている。
Kは意を決し、彼女に口づけをした。
それは、Kが今まで交際した女性たちの中で一番甘く苦い、恋と魚介の味がする口づけだった。
Fin
この記事はフィクションです。念のため