空のイルカ、夢のイルカ(3)

2020-10-25 21:15:03 | 童話
僕が目開けると、僕はジェット旅客機の操縦席にいた。
『乗客のみなさん、これから離陸しますので、シートベルトをシッカリ締めてください。管制塔、管制塔、これから離陸します。』
僕の操縦するジェット旅客機がゴーと音をたてて空高く上がって行きました。
『こちらは機長です、上空に来ましたのでシートベルトを外しても構いません。』
僕の操縦するジェット旅客機はしばらく飛行して着陸の準備を始めました。
『乗客のみなさん、これから着陸しますので、シートベルトをシッカリ締めてください。』
『管制塔、管制塔、これから着陸します。』
『乗客のみなさん、空港に着きました。お疲れ様でした。』

そして、目の前が急に明るくなった。
『すごいね。僕は夢の中でジェット旅客機を操縦していたよ。』
『まだ夢の中だよ。今度はどこへ行きたい?』
『写真で見たんだけれどオーロラがきれいだったので、オーロラが見える所へ行きたいなぁ。』
『いいよ。目を閉じていて。』

『もういいよ。』
僕が目を開けると、僕は北極にいた。
『少し寒いね。』
『今は夢の中だから、あまり寒くないけれど、本当はもっともっと寒いんだよ。』
『ふぅ~ん、そうなんだ。』
『空をみてごらん、オーロラがきれいだよ。』
『わぁ~、きれいだね。オーロラはじっとしていなくて、次から、次から形が変わるんだね。』
『寒いから、もう帰ろうか?』
『うん、いいよ。』

そして、目の前が急に明るくなった。
『もう夢の中から外に出たよ。』
僕とイルカは、さっきの海にいた。
『本当に夢の中に行けるんだね。』
『あっ、お家でお母さんが呼んでいる。もう帰るからね。またここで遊ぼうね。』
『いいよ、バイバイ。』
『バイバ~イ。』

僕は、宿題が終ると、今もイルカと仲良く遊んでいる。

おしまい

空のイルカ、夢のイルカ(2)

2020-10-24 12:01:10 | 童話
イルカは力いっぱい尾ビレで水をたたきました。すると、イルカと僕は空へ上がり始めました。
そして、イルカは尾ビレを何度も何度も動かして、ドンドン高く上がって行き、ビーチボールに近付きました。
『イルカ君、もう少しだ、がんばって。』
『うん、もう少しだね。』
『あっ、届いたよ。』
『ビーチボールをつかんだら降りて行くよ。』
『うん、いいよ。』

僕とイルカは海に戻って来ました。
『イルカ君はどこまで高く上がって行けるの。』
『ずっと空高く行けるよ。空だけでなく夢の中へも行けるんだよ。』
『夢の中へは、どうやって行くの?』
『僕が頭の上で1回転すると夢の中へ行けるんだよ。』
『やってみてよ。』
『いいよ。僕が頭の上を飛び越えるから、海の中で立っていてね。』
『うん、いいよ。』
イルカがすごいスピードで泳いで来て、立っている僕の上を飛び越えて、1回転しました。

その時僕の目の前が少し暗くなりました。
『今、夢の中に来たよ。これから、どんな夢の中へ行こうか?』
『どんな夢の中へも行けるの?』
『行けるよ。』
『飛行機を操縦している夢へ行きたいな。』
『いいよ。目を閉じていて。』
『うん。』
『もういいよ。』

空のイルカ、夢のイルカ(1)

2020-10-23 09:20:06 | 童話
『お~い、お~い。』
誰かが呼んでいる。
『なぁ~に? だぁ~れ?』
小さな島の、海の見える家に僕がいると、海の方から僕を呼ぶ声がした。
『お~い、お~い。』
とまた呼んでいる。
『誰なの?』
海の中を見ると、イルカがいて、ヒレで水をバシャバシャとやっていた。
『やぁ、イルカ君、な~に?』
『一緒に遊ぼうよ。』
『今、宿題をやっているから、1時間くらいあとでね。』
『うん、待っているからね。』

そして、宿題が終るころにまた『お~い、お~い。』とイルカが呼んでいる。
『まだ宿題は終らないの?』
『今終ったよ。』
『一緒に遊ぼうよ。』
『いいよ、今行くからね。』
『僕は泳ぎがうまくないので、海の深い所へは行けないから、一緒に遊べるのは、海の浅い場所だよ。』
『うん、いいよ。』
『何をして遊ぶの?』
『軟式野球のボールを投げるよ。それっ。』
『よしっ、僕はヒレでポンッ。』
『今度は、僕はバットでボコン。』
ポンッ、ボコン、ポンッ、ボコン
『もう少し大きなビーチボールで遊ぼうか? 僕が海の方へボールをけるから、イルカ君は海の方からボールを投げ返して。』
『いいよ。それっ。』
僕がポンッ。
そして、イルカが尾ビレでボンときつく打ちました。
『うわっ、そんなにきつく打ったら取れないよ。』
『ゴメンゴメン。』

イルカが尾ビレで打ったビーチボールは風で空高く上がりました。
『あんなに高く上がったら取れないよ。風に流されてドンドン高く上がって行くよ。』
『よしっ、一緒に取りに行こうか?』
『あんな高い所へ、どうやって取りに行くの?』
『僕の背ビレにつかまっていて。』
『うん、いいよ。』
『それでは行くよ。』

僕は自転車(5)

2020-10-22 08:47:46 | 童話
僕が他の家に貰われて行く日、今度の家のおじさんが自動車でやって来た。
おじさんが僕を自動車に積む時に、僕を大事にしてくれた男の子が、サドルをボンポンと叩いて
『今迄ありがとう。』
と言った。僕はみんなに見つからないようにして涙を流した。

『バイバイ。』男の子と男の子のお父さんに見送られて、走り出した自動車の中から手を振った。いや、手ではなくハンドルを振った。
ほどなく、自動車は今度僕に乗ってくれる子供の家に着いた。
『わ~い自転車だ、ピカピカの自転車だ。』
『大事に乗るんだよ。』と言っておじさんが僕を自動車から降ろした。
『うん、大事にするよ。』
『明日の日曜日に、公園で乗る練習をさせてやるよ。』
『うん。』と言って僕をずっと眺めていた。

次の日から、自転車の練習が始まった。
『ほらほらっ、下を見ないで前を見て。』
僕は、練習する時に大人はみんな同じ事を言うのだなぁと思った。
『お父さん、手を離さないでね、離したらダメだよ。』
前の男の子の時と同じようにグラグラ、グラグラとしている。僕は必死になってこらえて転ばないようにしていた。しかし、おじさんが手を離した時に僕は転んでしまった。そして、この子も膝を擦りむいてしまった。
『うわ~ん、痛いよ~。』
おじさんは
『少し怪我するくらいでないと自転車に乗れないよ。』
また僕は前の男の子のお父さんと同じ事を言っていると思った。
毎週、練習をして、グラグラするが、やっと転ばないようになった。

この子も僕を大事にしてくれる。転んだ時は家に帰ってから、僕を綺麗に洗ってくれる。この子も大きくなって、大きな自転車を買っても、僕を大事にしてくれると思う。

そして、外から帰って来た時に、何も言わないでサドルをボンポンと叩いてくれると嬉しいなぁ。

そう思いながら、この子と練習を続けている。

おしまい

僕は自転車(4)

2020-10-19 09:56:35 | 童話
そして僕は、綺麗に磨かれて、油もさしてもらって元気にしている。
新しい自転車で帰って来た男の子は必ず僕の所に来て、サドルをボンポンとたたいてくれる。
何も言わないが僕は嬉しい。

少し経って、僕の仲間ができた。男の子が大人になって、自分のお金でカッコいいマウンテンバイクを買ったのだ。
そして、今迄乗っていた大きな自転車も綺麗にして、僕の隣り置いてある。
2台の自動車で時々お話しをするので僕は寂しくない。

ある日、僕は他の家に貰われて行くことになった。
小さな子供が居る家で、自転車の練習をしたいというのだ。
僕は昔を思い出した。
転びながら練習をしたよね。
僕は今度の小さな子供も上手く乗れるようにしてあげようと思った。

僕が貰われて行く日に、男の子がやって来て、サドルをボンポンと叩いた。
僕は涙をこらえるのが大変だった。
僕は幸せだったし、今も幸せだ。