空のイルカ、夢のイルカ(1)

2020-10-23 09:20:06 | 童話
『お~い、お~い。』
誰かが呼んでいる。
『なぁ~に? だぁ~れ?』
小さな島の、海の見える家に僕がいると、海の方から僕を呼ぶ声がした。
『お~い、お~い。』
とまた呼んでいる。
『誰なの?』
海の中を見ると、イルカがいて、ヒレで水をバシャバシャとやっていた。
『やぁ、イルカ君、な~に?』
『一緒に遊ぼうよ。』
『今、宿題をやっているから、1時間くらいあとでね。』
『うん、待っているからね。』

そして、宿題が終るころにまた『お~い、お~い。』とイルカが呼んでいる。
『まだ宿題は終らないの?』
『今終ったよ。』
『一緒に遊ぼうよ。』
『いいよ、今行くからね。』
『僕は泳ぎがうまくないので、海の深い所へは行けないから、一緒に遊べるのは、海の浅い場所だよ。』
『うん、いいよ。』
『何をして遊ぶの?』
『軟式野球のボールを投げるよ。それっ。』
『よしっ、僕はヒレでポンッ。』
『今度は、僕はバットでボコン。』
ポンッ、ボコン、ポンッ、ボコン
『もう少し大きなビーチボールで遊ぼうか? 僕が海の方へボールをけるから、イルカ君は海の方からボールを投げ返して。』
『いいよ。それっ。』
僕がポンッ。
そして、イルカが尾ビレでボンときつく打ちました。
『うわっ、そんなにきつく打ったら取れないよ。』
『ゴメンゴメン。』

イルカが尾ビレで打ったビーチボールは風で空高く上がりました。
『あんなに高く上がったら取れないよ。風に流されてドンドン高く上がって行くよ。』
『よしっ、一緒に取りに行こうか?』
『あんな高い所へ、どうやって取りに行くの?』
『僕の背ビレにつかまっていて。』
『うん、いいよ。』
『それでは行くよ。』