カゼをひいたエンゼル(1)

2017-12-26 21:31:02 | 童話
私の名前はヨーコ、小学1年生です。
私の友達にエンゼルがいます。名前は天使ちゃんです。
毎朝、私は天使ちゃんと学校へ行きます。だけれど、天使ちゃんは小学生ではないので学校には入れません。だから、毎朝、校門の所でバイバイします。そして、学校から帰る時には、天使ちゃんが校門の所に来ていて、一緒に帰ります。

家に帰ってから、宿題をする時も、ほかの友達と遊ぶ時も、天使ちゃんはずっと一緒です。
ある日の朝、友達の天使ちゃんがカゼを引いてしまいました。
『ゴホン、ゴホン。』
熱をはかると38度あるので、今日は私のふとんの中で寝ていることにして、私は一人で学校へ行きました。
『学校へ行ってくるわね。早く良くなってね、バイバイ。』
『ええ、気を付けて行ってね。』
『うん、わかったわ。』

そして、天使ちゃんは背中の羽根をたたんで、頭のリングを外して、私のふとんの中で寝ました。
私のお母さんが『天使ちゃん、おかゆを作ったので食べてね。』と言って台所からおかゆを持ってきてあげました。
『ありがとう、ゴホン、ゴホン。』
『どう、おいしい?』
『ええ、とってもおいしいわ。ごちそうさま。』
『ゆっくり寝ててね。』
『ええ、ありがとう。』

私が学校へ行くと、同級生の男の子が聞きました。
『いつも学校の門まで一緒来る友達は、今日は来ないのかい。』
『今日はカゼを引いて家で寝ているの。』
『ふぅ~ん、カゼかぁ。』
友達には天使ちゃんはエンゼルだということを話していませんでした。

天使ちゃんの熱が下がらないので、お母さんが天使ちゃんを病院へ連れて行きました。しかし、お医者さんは『カゼをひいた子供さんはどこにいるの?』
『ここにいますけれど。』
『ゴホン、ゴホンとセキは聞こえるけれど、どこにいるのか見えないね。』
天使ちゃんは、私のお母さん以外の大人の人には見えないのです。
仕方がないので、帰ってきて、また私のふとんの中で寝ました。

かけっこ 学校は靴のかけっこ(2)

2017-12-25 21:51:04 | 童話
体育館では、たくさんの靴がキュッキュッと音を立てている。そしてボールを追っかけている、大きなポールを追いかけている。
バスケットポールだ。
こっちの靴がキュッ、あっちの靴もキュッ。たくさんの白い靴が走ったり止まったりして
いる。
あっ、こっちの白い靴がピョンと飛んだ、高く飛んだ。
シュート成功。白い靴のシュートが成功した。
こんどはネットの下の靴がボールを持って反対方向に走っていった。たくさんの靴が同じ方向に走っていく。両方のゴールに次々とシュートして、次々とボールがゴールに入っていく。右に行ってはキュッ、左に行ってはキュッ。
笛が鳴りバスケットボールの試合が終わった。
両方ともたくさんの点数が入った。
たくさんの白い靴が、たくさんがんばった。
キュッキュッ、キュッキュッと、みんながんばった。
キュッキュッ、キュッキュッと、みんなつかれた。
明日もみんなでキュッキュッみんなで、みんなでキュッキュッ。

体育館のすみでは靴が走っている、全速力で走っている。
ぴょーんと飛んだ、高く飛んだ。靴が左右に大きくわかれて飛んだ。
マットの上にポン、二つの靴がポン、跳び箱の上からポン。
この靴は成功だ。次の靴も成功するかな。
遠くから走ってきて、ぴょーんと飛んだ、高く飛んだ。
この靴も左右に大きくわかれて飛んだ。成功だ。次々と成功だ。
マットの上にポン、二つの靴がポン、跳び箱の上からポン、どの靴も成功だ。
こんどは大きな靴が飛んだ、高く飛んだ、大きく飛んだ。マットの上にポン、二つの靴が
ポン、先生がポン。

かけっこ 学校は靴のかけっこ(1)

2017-12-24 09:36:05 | 童話
学校は靴のかけっこ。
大きな靴、小さな靴、赤い靴、ブルーの靴、いろいろな靴のかけっこだ。
あれ、みんなかけっこをやめて並んでいる、おとなしく並んでいる。
そうか、朝礼だ、校長先生のお話でみんな並んでいるのだ。

こんどはまたかけっこを始めたぞ。だけど、ゆっくりのかけっこだ。
みんな教室に向かっている。もう運動場にはだれもいないや。みんな教室に行ったのだ。
この教室も、あの教室も、靴が並んでいる。じっとしている。

あれ、この教室の靴がみんな外に出てきた。
そうか、一時間目は体育の時間だ。
ほらっ、先生が石灰でみんなの走るコースを書いている。
全部の靴がピョンピョンととびはねだした。準備体操だ。
みんなが並んだぞ。ピョンピョン、ピョンピョン。
ピストルのあいずでスタートだ。
ブルーの靴が早い、赤い靴も早い、白い靴はもっと早い。
白い靴がゴールした、一着だ。二着は赤い靴だ。
ピストルのあいずで次の組のスタートだ。
白い靴、灰色の靴、赤い靴、みんな早いや。
あれっ、前の組にくらべると靴が少ないや。どうしてだろう。どの組も同じ数だのに。
あっ、はだしだ、はだしだ。早い、早い、靴の代わりにはだしが走っている。
はだしが一着だ。次は赤い靴だ。そして白い靴、灰色の靴。
次々とピストルのあいずで走っている。
みんな走り終わった。みんなハァハァいっている。
みんながんばった。
みんな早い。

飛べない妖精(2)

2017-12-23 10:58:21 | 童話
ある日、妖精の私が歩いていると、お母さんが子供を連れて歩いていて、その子供が持っていたボールがコロコロと転がって行き、子供がボールを追いかけて走って行ったのです。
その時、自動車が走って来て子供にぶつかりそうになったのですかが、私は飛べないので時間を止めて、子供を抱えてお母さんの手に渡しました。
『危なかったわね、急に走ったら危ないでしょ。だけど、誰が助けてくれたのかなぁ?』
『それは私よ。』と小さくささやいたのです。そして、『気を付けてね。』と小さな声で付け加えました。

妖精の私が公園にいる時に、男の子が二人でケンカを始めてしまった。
大きくなったら野球選手になるか、サッカー選手になるかでケンカを始めてしまったのでした。
私は、二人の男の子にソッと息を吹き掛けました。そうすると、二人は何でケンカをしていたのか忘れて、また仲良く遊び始めたのです。
子供のケンカは、すぐに仲直りさせる事ができるが、国同士の大人のケンカの戦争は、妖精の私にも一人では力が足りない。どうしょう?
そうだわ、私の歌声でみんなをやさしい心にしてあげればいいんだわ。でも、世界には何十億もの人がいて、一人ではできないので、みんなを呼ぼう。
世界の平和のために、私の歌声を世界に届けよう。

『ねぇみんな、やさしい心になりましょう、静かな心になりましょう、そして、素晴らしい世界にしましよう。そうすると、妖精は私だけではなく、みんなが妖精になれるのよ、飛べない妖精になれるのよ。
私は、みんなが妖精になれるのを、何百年でも待っているわ。』

飛べない妖精は、澄んだ歌声でみんなが妖精の心を持つのを待ちながら、いつまでも歌い続けているのです。

      おしまい

飛べない妖精(1)

2017-12-22 21:31:28 | 童話
私は小学生のときに、いつも音楽の勉強で先生にほめられていました。
音楽以外の勉強は普通かな。
だから大きくなったら歌手になりたいと思っていたけれど、急に妖精になりたいと思いだしたの。
いや、妖精になると決めたの。
お母さんに
『どうして妖精になろうと決めたの?』
と聞かれても自分でも分かりません。
そして、図書館で妖精になる方法を調べましたが、妖精になる方法を書いた本は有りませんでした。
だけど、北極に近いフィンランドという国に妖精がいると書いている童話を見つけたの。
だから、私はお母さんに
『わたし大きくなったらフィンランドへ行くの。』
と言いました。
するとお母さんは、
『外国へ勉強に行くのは素晴らしい事だけれど、日本でいっぱい勉強しないと外国へは行けないわよ。』
と言ったので、わたしは一生懸命に勉強することにしたの。

そして、私は中学、高校、大学そして大学院で勉強をして、あこがれのフィンランドで歌の勉強と妖精になる勉強をすることができるようになったのです。
歌の勉強は努力して、もっともっとうまくなりましたが、妖精の勉強は日本人には難しかったです。
私は5年かかって、やっと妖精になれることができましたけれど、大きくなって妖精になったので羽根は有りません。だから空は飛べないのです。

『あなたはだぁれ?』
『私はフィンランドから来た妖精よ。』
『本当に妖精なの?』
『ええ本当よ。』
『あなたには羽根が無いし、大人でしょ。』
『ええ、そうね、妖精も大人になるのよ。そして大きくなると羽根が無くなるのよ。』
『ふぅ~ん。それでは今すぐ、ここで虹を出してちょうだい。』
『ええ、いいわよ。』

妖精の私が手を左から右へ大きく振ると、女の子の目の前に虹が現われた。
『わぁすごい、本当に虹だわ。』
『きれいでしょ。』
『うん、すごくきれいね。』
『お母さん、さっきの映画の妖精は本当にいるの? 絵本の中にも出ているでしょ。』
『そうねぇ、どうかしら。』
『わたし妖精に会いたい。』
『そうねぇ、会えるといいわね。』

妖精の私の前を歩いている親子が話しているが、私が妖精だとは気が付きません。
私は羽根も無く、空を飛べないが、人を幸せにすることができるのです。
『ええ、妖精は本当にいるのよ、私が妖精よ。』
と言いたかったが、妖精の国では、自分から妖精だと言うことができないのです。