飛べない妖精(2)

2019-11-02 10:18:23 | 童話
『お母さん、さっきの映画の妖精は本当にいるの? 絵本の中にも出ているでしょ。』
『そうねぇ、どうかしら。』
『わたし妖精に会いたい。』
『そうねぇ、会えるといいわね。』

妖精の私の前を歩いている親子が話しているが、私が妖精だとは気が付かない。私は羽根も無く、空を飛べないが、人を幸せにすることができる。
『ええ、妖精は本当にいるのよ、私が妖精よ。』と言いたかったが、妖精の国では、自分から妖精だと言うことができないのです。

ある日、妖精の私が歩いていると、お母さんが子供を連れて歩いていて、その子供が持っていたボールがコロコロと転がって行き、子供がボールを追いかけて走って行ったのです。
その時、自動車が走って来て子供にぶつかりそうになったので、私は飛べないので時間を止めて、子供を抱えてお母さんの手に渡した。
『危なかったわね、急に走ったら危ないでしょ。だけど、誰が助けてくれたのかなぁ?』
『それは私よ。』と小さくささやいた。そして、『気を付けてね。』と小さな声で付け加えた。

妖精の私が公園にいる時に、男の子が二人でケンカを始めてしまった。大きくなったら野球選手になるか、サッカー選手になるかでケンカを始めてしまったのでした。
私は、二人の男の子にソッと息を吹き掛けました。そうすると、二人は何でケンカをしていたのか忘れて、また仲良く遊び始めたのです。
子供のケンカは、すぐに仲直りさせる事ができるが、国同士の大人のケンカの戦争は、妖精の私にも一人では力が足りない。
どうしょう? そうだわ、私の歌声でみんなをやさしい心にしてあげればいいんだわ。
でも、世界には何十億もの人がいて、一人ではできないので、みんなを呼ぼう。世界の平和のために、私の歌声を世界に届けよう。

『ねぇみんな、やさしい心になりましょう、静かな心になりましょう、そして、素晴らしい世界にしましよう。そうすると、妖精は私だけではなく、みんなが妖精になれるのよ、飛べない妖精になれるのよ。

私は、みんなが妖精になれるのを、何百年でも待っているわ。』
飛べない妖精は、澄んだ歌声でみんなが妖精の心を持つのを待ちながら、いつまでも歌い続けているのです。

   おしまい

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