
こども、保護者そっちのけの角福戦争が自民党内でふたたび勃発したようです。
角福戦争とは、田中角栄さん率いる「田中・竹下派(木曜クラブ・経世会・平成研)」と、福田赳夫さん率いる「福田・安倍・森派(清和会)」の40年来の不毛な党内主導権争い。55年体制崩壊とともに消え耐えたかと思いきや、民主党政府提出の「子ども子育て新システム法案(幼保一元化・幼保一体化)」の3法案をめぐって、保育所や年金など厚生省社会保障利権を独占してきた平成研、幼稚園利権を独占し歴代会長の森喜朗さん、町村信孝さんらが文部相を務めた清和会の血みどろの最終戦争が、衆院一体改革特別委員の間で勃発したもよう。自民党総裁でシャドウ首相の谷垣禎一さん(宏池会)は党分裂の危機に追い込まれました。
2012年5月22日(火)の一体改革特別委員会では、自民党から元文相で清和会の町村信孝委員が登場。続いて、自民党から消費税を導入した平成研の竹下登元首相の弟である竹下亘さんが参戦。この後、児童福祉法24条の修正で「保育の義務」から解放される市町村を代表して元市長で山崎派の石田真敏さんが中休みに入ります。そして、最後は3代続けて保育族のドン、平成研の田村憲久さんが自民党の締めとなります。ですから、自民党の4人は、順に、幼稚園族、保育所族、幼稚園族(市町村の保育の義務免除を喜ぶ立場)、保育所族で、まっぷたつに分かれた格好です。
田村憲久さんは、子ども子育て新システム法案の答弁に立つ、内閣府少子化担当大臣について、厚生労働大臣である小宮山洋子さんが兼任していることを問題視。「厚労委員会は忙しい、文科省との関係もあるんですよ」と謎の発言。そのうえで、「前々任者だし、どうせこの委員会にいるんだから」として、ラインの省をもたない岡田克也副総理が内閣府少子化担当大臣を兼ねるべきだとしました。三重経済界では、田村さんの家業「日本土建」とケーブルテレビ「ztv」が、岡田屋(現イオン)をはるかに上回る発言力を持ち、田村ファミリーを3代続けて国会に送り出してきただけに、岡田さんもそうとう気色張りながら、総理の判断としました。
田村さんは児童福祉法24条の改正により、事故があったときに、市町村に国家賠償請求ができなくなるとして、内閣法制局長官(山本庸幸さん)に質問。「改正前と改正後でどちらが重いか」との質問は難しいとの答弁ながら、田村さんは「今までは市町村に請求できたが、事業主が倒産してしまえば、請求先がなくなる」としました(田村指摘)。
この「厚労大臣(兼)少子化担当大臣」という初の兼務は、保育所族には有利なように思いますが、現行維持が自民党族議員ののぞみだ、ということだと考えます。まだまだ謎の部分がありますので、そういったところも、私は国会審議を聞くなかで探っていきたいと考えます。 田村さんは「0~2歳児の保育の必要のない子どもまで、総合こども園で預かるのですか」とし、「(幼稚園を定めた)学校教育法に位置づける、位置づけないという話ならみすぼらしい」「(様々な環境の)すべての子どもに保育園(が必要)という話ではありませんから」「総合こども園で(都市部の)待機児童対策になるんですか」「総合こども園で質が上がるような幻想をあなたたちは植え付けようとしていますけど」などとドンドン挑発しました。
これに先立つ前日の審議では、自民党は石原伸晃幹事長、元文科相で元財務相の伊吹文明さんに、続き、平成研で厚労委員の加藤勝信さん、平成研で元厚労副大臣の鴨下一郎さんが選抜されました。これもおそらく、幼稚園族、幼稚園族、保育所族、保育所族でバランスをとった格好。そもそも2日目に「子ども子育て新システムの集中審議」を入れることで、石原幹事長、伊吹筆頭理事の登板の機会を確保した可能性もあります。
自民党政権が過去40年以上、こどもと保護者をそっちのけで争ってきた幼保一元化。伝統的に仲が悪く、最大派閥と第2・第3派閥だった竹下派と福田派が争っていれば、自民党で政策決定できるわけがありません。そこで、民主党政権が自民党の「消費税は上げたい」という意思と「一体改革」するということで、子ども子育て新システム法案が出てきたわけです。歴史的なことです。まあばからしいですが、これが政権交代なき独裁与党内の派閥争いの実態です。
ですから、一体改革法案の成立は、この子ども子育て新システム法案が命運を握る可能性が高くなっています。ですから、「社会保障と税の一体改革特別委員会」のことを「消費税増税の特別委員会」などと表記している一部メディアは、今後の記事が書きにくくなると考えられます。政治部デスクは社内で他に行き場所がないのですから、法案ぐらい下読みしておけ、と言いたい。で、「一体改革なんて原作者の財務省うまくやりやがったな」と思うかもしれませんが、すでに審議入りしているのですから、この法案をしっかりと修正可決し、ねじれの参院でも成立させるのが、2012年を生きる私たちの使命であります。
きつい言い方になりましたが、大事なのは、子どもたちの未来です。どのような家庭に育っても、しっかりとした保育と教育のうえで、小学校のスタートラインに載せてあげたい。明治9年に幼稚園、今風で言うと、お茶の水女子大学附属幼稚園になるのですが、出来たときは子どもを送り迎えする家政婦さん専用の待合室があったそうです。独のフレーベルの「キンダーガーテン」を具現化したこの、幼稚園ですが、例えば、「積み木」という遊びもフレーベルが考案した幼児教育のメソード。だから、自宅に積み木で遊ぶ子どもというのは、 明治時代なら大富豪。明治維新による豊かになった日本という国。角福戦争などどうでもいいのですが、私たちの人生の目的をたった一つに絞るのならば、それはこの明治維新で開化したまことに小さな日本国を次の世代に引き継ぐことです。
その審議がきょうの「子ども子育て新システム法案」です。
それにしても、新聞が本質を捉えられなくなっていることにはかなり強い危機感を覚えます。
子どもは家庭が育てて、社会がそれを支える。子供は、社会の希望、未来をつくる力であり、安心して子供を産み育てることのできる社会の実現は、社会全体で取り組まなければならない最重要課題の一つです。もう後戻りはできません。日本国民全員の総力を結集して、幼保一元化と一体改革を実現しましょう!
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