
(このエントリーの初投稿日時は2012年6月25日 7時14分)
[画像]答弁する長妻昭・修正案および法案提出者、2012年6月25日(月)、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
衆参ねじれによる「決められない政治」から脱却するため、新しい国会がスタートし、きょうのNHKテレビ・ラジオ生中継の審議でお披露目。
予算委員会でおなじみの衆議院第一委員室。しかし、きょう2012年6月25日、今までにない光景が見られるので、みなさん驚くでしょう。
なぜなら、答弁席に野田佳彦首相ら閣僚と、民主党政府外議員の長妻昭さんら、そして野党・自民党の野田毅さん、馳浩さん、公明党の池坊保子さんらが席を並べるからです。そして、質問者も民主党、自民党、公明党の議員。そして午後には、これ以外の野党が質問に立ちます。
これは、
① 政府提出法案(閣法)
② 政府提出法案の議員修正案
③ 議員提出法案(衆法)
を一体審議するという試み。衆参ねじれでも、衆議院と参議院の両方で過半数の賛成を得て、可決・成立させるために始めます。「決められない政治」批判への与野党共通の危機感が背景にあります。議事は複雑になりますが、力のある政治家にとっては、今まで以上に国会が力の見せ場になります。
5月から法案審査をしてきた衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会(中野寛成委員長)。きょうからとスタートとしましたが、先週の金曜日に趣旨説明と、日本共産党、新党きづな、社民党、みんなの党による審議が済んでいます。この模様は2012年6月22日の衆議院tvで見ることができます。きょうは首相出席の集中審議なので、NHK国会中継が入ります。テレビで見る人は風変わりに思えるでしょうし、ラジオで聴いていると違和感を持ったりするでしょう。NHKがどういうアナウンスを入れるか分かりませんが、いずれにしろ、今週は政治報道のあり方を問われる節目の週になりそうです。
では、きょう答弁席に座っている人の名鑑です。全員が衆議院議員です。
民主党・野田佳彦さん。首相、内閣総理大臣、民主党代表。テレビ入りの集中審議のときのみ出席し、答弁。「今国会中の社会保障と税の一体改革成立に政治生命をかける」という強い言葉で、一体改革の流れをつくってきました。
民主党・岡田克也さん。副総理(兼)社会保障と税の一体改革担当大臣。この委員会では公聴会、参考人質疑を除く100時間超審議に出席。各大臣の答弁を調整しながら、かつて在籍した自民党のベテランに法案修正協議入りをお願いするパイプ役もつとめてきました。初当選時から厚生委員を務めた社会保障の専門家。腕まくりして合理的な国会運営をめざす。野党に対する攻撃型答弁もまったく悪びれる様子がなく貫いています。
民主党・安住淳さん。財務大臣。昨年の岡田幹事長・安住国対委員長コンビ同様に、ことしも100時間超審議にすべて出席。消費税増税やそれに伴う給付措置、税制全体への影響について答弁してきました。のらりくらりと自分の言葉で答えながらも、自民党の先輩議員からの経験談・アドバイスを真摯に聴く姿勢に好感を持ちました。政治家らしい政治家。
民主党・川端達夫さん。総務大臣。閣僚の中で議員経験・年齢ともイチバン上。地方税の担当者として100時間超の審議にほとんど出席。答弁の機会は少なかったのですが、手堅い答弁が光りました。
民主党・小宮山洋子さん。年金法案では厚労大臣として、子ども・子育て新システム(幼保一体化)法案では内閣府少子化担当大臣として答弁。長時間にわたる答弁を安定的にこなしてきました。「我が家は4世代同居」などと気さくな答弁で法案成立への執念をかいま見せました。
民主党・長妻昭さん。「社会保障制度改革推進法案」(180衆法24号)などの筆頭発議者。3党協議に実務者として参加し、この委員会には修正案提出した先週金曜日から登場。野党時代の「年金王子」、与党で「厚労大臣」を経て、「3党協議による法案修正」という政治家としての大きな舞台で、飛躍できるかどうか。
民主党・古本伸一郎さん。この委員会の理事として日程の段取りや、委員長の休憩時に委員長代理を務めて来ました。3党協議には、理事として、また民主党税制調査会事務局長として参加。大車輪の活躍。猛烈トヨタ自動車の管財部や生産管理部のモーレツ社員から衆院議員になり、政権交代後に財務政務官をつとめました。旧民社党系議員がつくる民社協会の会員。
民主党・和田隆志さん。財務省の官僚出身で、金融庁担当の政務官も務めました。この委員会の理事として、質問に立ち、「社会保障は、自助・公助・共助が原則です」と自民党綱領に同調して、3党協議要請の抱きつき作戦の切り込み隊長も買って出ました。
民主党・柚木道義さん。野党時代から社会保障に専心。一体改革委員として、党厚労部門会議とのつなぎ役として後輩の信望も篤いです。ただし、委員でありながら、「社会保障先送りの増税のみ採決は許せない」との発言で、党内に混乱を招いた面もあり、まだまだ修行が必要。超党派イクメン議員(子育てをする男性議員)連盟のとりまとめ役。
民主党・泉健太さん。子ども・子育て新システム法案の基となった内閣府での2年間にわたる検討チームを担当した元内閣府政務官です。野田総理が政治生命をかける社会保障と税の一体改革法案の本会議質疑(5月10日)の民主党トップバッターを務めるなど安定感ある議員です。
民主党・岸本周平さん。1期生ながら与党税調の事務局長。大蔵官僚、トヨタ自動車社員出身。一体改革特別委員としては、岡田副総理に「イオンの天下りに関係しているのではないか」との新党きづなの質問に「恥を知れ恥を」と叱れる大人の1期生。NPO税制法案の発議者として参院委員会での答弁を経験し、テレビ入り参院は初めて。いつも日焼けして地元活動の充実ぶりを感じさせます。
民主党・江端貴子さん。1期生ながら起用されました。元外資系企業取締役や元東大准教授。家庭では、介護、子育ての体験があり、議員としては衆議院財務金融委員を兼ねています。大舞台で場慣れできるでしょうか。地元は東京で、小池百合子さんとの激戦区。
民主党・稲富修二さん。こちらも1期生で松下政経塾出身。委員会や党では、税制法案に関する低所得者対策や成長戦略など「附則」周りをていねいにこなしてきた印象を持ちました。山崎拓さんを破って初当選しました。
民主党・白石洋一さん。1期生。日本長期信用銀行行員として破綻を経験し、その後政界入り。年金に関心が高く、衆議院厚生労働委員を兼ねています。この委員会でも質問しました。けっして器用な質問・答弁ではありませんが、真摯な姿勢に好感が持てます。
自民党・鴨下一郎さん。昨年の「子ども手当」に続き、ことしも3党協議を実務者としてまとめあげて実績を積んでいます。日本新党同期当選の野田総理、茂木敏充・自民党政調会長を猛追。日本医師会員で東京足立区の名家。自公政権で環境大臣や厚労副大臣を務めました。
自民党・田村憲久さん。修正案提出者。衆参ねじれ国会では、様々な法案で修正案提出者をつとめ、可決直後に「これでマニフェスト総崩れだな」とヤジる政治家らしい政治家。保育所の団体からの支持が厚く、認定こども園には懐疑的な考えがかいま見られることがありました。三重の経済界・政界の名家なので、岡田さんへ対抗心が強く、意地悪な質問で激しい言い合いがありましたが、答弁席では呉越同舟なるか?
自民党・野田毅さん。竹下内閣での消費税導入時にも本会議で発言。消費税創設反対1万人集会で藁人形を燃やされた経験もあります。大蔵官僚出身。新進党政審会長として小沢一郎党首から突然「消費税引き上げ反対を選挙公約にしろ」と命令されたことがあり、「小沢切り」を主張。他の自民党議員と発言が異なることもあり、3党協議では主流から外れてしまいましたが、国会での気概ある答弁に期待。
自民党・加藤勝信さん。財務省官僚出身で、加藤六月さんの娘婿なので民主党と人脈も。今通常国会の当初予算審議初日に「年金交付国債取り下げによる3党合意」の流れをつくるお手柄。それもあってか3党協議実務者に3期生ながら抜擢されました。社会保障、税制どちらでもこなせる印象。
自民党・馳浩さん。森首相と同じ派閥・同じ県連ということもあってか、幼稚園関係につよい元文科副大臣。認定こども園法の充実策をまとめた「小渕報告」(2009年、小渕優子少子化担当大臣)を紹介し、総合こども園法撤回・認定こども園法改正案提出の流れをつくりました。超党派で仲の良い小宮山大臣に「あなたはいつも結論を急ぎすぎるんですよ」としながら、落とし所に徐々に近づく政治家らしい審議をして、私も大変その能力の高さに驚きました。もはやプロレスラー議員などと呼ぶ人はいません。
公明党・西博義さん。民主党・自民党とくらべて、あまり乗り気でなかった公明党から理事に就任。3党協議実務者には、党幹部2人が起用されたものの、その2人は委員でも答弁者でもないという難しい役回りです。あまり馴染みはないでしょうが6期生でベテランの域に入りかけています。公明党の議員内でも議員と支持者の間でも軋轢が生じていますが、「3党合意は私たちの(社会保障の)理想への第1歩」という元教師・野球部監督らしさでねばり強く切り抜けて欲しいです。
公明党・竹内譲さん。野田総理とは同期当選ながら、いったん京都市議を務めて、2期目の衆院議員。衆議院財務金融委員会として野田財務相の家庭教師的存在でした。今回は委員に抜擢され、難しい役回りをこなしている。政治家としての信念を感じさせます。やや持論にこだわりすぎる面も。
公明党・池坊保子(いけのぼう・やすこ)さん。池坊華道会元理事長。認定こども園をつくったときの文科副大臣なので、認定こども園に強いこだわりを持っています。質問者としても答弁者としても噛み合わない審議が散見されるのですが、その知見をしっかりと審議に反映させることは有益だと思います。非創価学会員。義理の息子さんNHK経済部のエース記者でとても素晴らしいジェントルマンです。
◇
次にきょうの委員会の議題です。
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以上の9議案です。新聞で言う消費税増税法案は下の2本(国税分と地方税分)です。
このオールスターキャストは、衆院通過後は、参議院の第1委員会室で100時間前後の審議にも答弁席に座ることになります。
ところで、修正案提出前の6月7日の委員会。上記のように対決色が強い自民党・田村憲久委員の質問に対して、民主党の岡田克也・社会保障と税の一体改革担当大臣は次のように答弁しています。
「結局、田村さんは若いですから期待しておられる有権者の方も多いと思うんですが、あなたの今の発言というのは、また与党になったときに言われてしまいますよ。だから、お互い、そこはやはり踏まえて議論すべきだということを私は申し上げているわけであります」
これは田村さんの問責閣僚を交代させろという議論の中での答弁です。「また与党になったとき」・・・あれあれ何か変? 民自公3党協議は密室談合で、大連立構想が報道されているはずですが。なぜ3党協議路線を敷き、大連立を唱えることも多い岡田さんがなんで田村さんに「また与党になったとき」と言ったのでしょうか。こういったところについても、私が今説明するよりも、まずは衆議院・参議院の第1委員(会)室でのオールスターキャストによる答弁と質問者(ともに政治家)を時折興味を持って、テレビ、ラジオやインターネットで目を通してもらえばいいと思います。日本の政治は良い方に明るい方に向かっています、とだけ申し上げておきます。
そうそう大事な人を忘れてしまいそうでした。衆議院における社会保障と税の一体改革に関する特別委員長は中野寛成さんです。
民主党・中野寛成さん。民社党政策審議会長、連立与党政策責任者、新進党政審会長・国会対策委員長、民主党幹事長・国対委員長、衆議院副議長、国務大臣を務めたオールラウンドプレイヤー。意外にも、第1委員室での委員長席はこれが初めて。政府よりもまさに議会の子。野党が長かったのでマスコミ政治部デスクから下に見られる傾向がありますが、7法案(追加提出の衆法を含めると9法案)一括審議、100時間超、民自公3党協議というすべてが記録的な委員会をノンストップで進めています。議長である民主党常任幹事会を欠席してでも、委員会をすべて優先してきた当たり前のことを当たり前にできる数少ない民主党議員。その名にちなんだ中野正剛を越える憲政史に残る議会人に今なろうとしています。
[お知らせ1]
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