【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

補正衆院通過、あれから20年・・・自民党未入閣の岩屋毅さん「決められない政治は与野党に責任」

2013年02月14日 19時31分22秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

 10・2兆円の歳出を拡大し、建設公債5・2兆円を発行する平成24年度第1次補正予算(案)が衆院を通過しました。30日ルールがあるため、遅くとも3月14日(木)には成立します。

 かなり良い審議ができました。高く評価します。予算(案)審議の充実こそ、「改革テコ入れ国会」にふさわしい。そして国会が修正することによって財政民主主義がパワーアップする。それは政府与党のためになるのではないでしょうか。これからは組み替え動議にとどまらず、議員修正案(麻生内閣の平成20年度第2次補正予算(いわゆる定額給付金補正)で参院可決)を早めに準備すべきです。

 昨夕のうちに、質疑の終局が宣言されていたため、きょうの予算委員会は午前9時から民主党とみんなの党それぞれの組み替え動議(撤回のうえ編成替えを求める動議)から始まりました。我が党は1・8兆円の公共事業交付金を削減し、建設公債も同額減らす内容でした。組み替え動議と政府案が同時に採決され、自民党、公明党、日本維新の会が政府案に賛成し、衆議院では圧倒的多数で可決されました。ただし、この3党は参院では過半数に満たないため、参院採決では否決される見通し。両院協議会の協議委員は衆議院が自民党7名、日本維新の会が2名、 公明党が1名、参議院が民主党が8名、みんなの党が1名、日本共産党が1名という配分になるでしょう。ぜひここでは民主党とみんなの党が共同で、修正案を出して欲しいと考えます。ただし、協議案の採択は3分の2以上ですので、政府原案通り成立するのは確実。そして、本予算審議でも、補正前倒し分を減額修正するなどの修正案を出し続けなければ野党の存在意義というよりも、国会の存在意義がなくなるでしょう。

 衆議院段階の審議では、公共事業のうち命にかかわる公共事業の割合を財務大臣が「3分の1」 と答弁したり(ただしくは4分の1)、箇所付けの仮配分が公表されなかったり、これを理由に乗数効果を答えられないなどの不備がありました。その中で、民主党の玉木雄一郎さん、日本維新の会の重徳和彦さん、みんなの党の柿沢未途さんが補正予算書の中身に関する質問をしました。当ブログが指摘していた繰越明許費についても、実務にあたる自治体の立場から、日本維新の会の山田宏さんが取り上げました。後は、国庫債務負担行為の補正に関してもふれてほしかったです。

 複式簿記の導入に関する石原慎太郎さんの質問に対して、麻生太郎財務相が、「イギリスの例を聞くと、徴税権や貨幣発行権が資産になるのが難しいようだ」との興味深い答弁がありました。たしかに、複式簿記だと、税の滞納も資産になってしまいます。財政の透明性確保は良いとして、その先に滞納をすべてバルクオークションで売ってしまおうという政策がでてきたら、怪しげな業者が落札して、こわいことになりそうです。 

 衆議院本会議は午後1時3分ごろに開議。ここで、伊吹文明議長が鬼塚誠事務総長に「定刻(という言い方)でいいんだっけ?」と確認した上で、「これより会議を始めます。まず、初めに申し上げます。定刻を守って(入場、着席して)ください」とのっけからたしなめる場面がありました。これをのぞけば、全体的にスムーズな委員会、本会議運びでした。ところで、素朴なギモンですが、予算委員会の間、予算委員や政務三役でない衆参国会議員はどこで何をしているんでしょうか?

 第46期衆議院では初めての議案(予算案、法案)の採決となりました。

 反対討論は民主党から奥野総一郎さんが登壇。

 続いて、賛成討論は自民党から岩屋毅さんが登壇し、「決められない政治は与野党とも責任があります」と演説しました。

 早稲田大学雄弁会、鳩山邦夫事務所秘書、大分県議を経て、32歳で初当選。1990年の自民党で、こういう肩書きの人が当選できるのかと新鮮さを感じたのは私だけではありませんでした。鳩山事務所では代議士から「戸別訪問の仕方が悪い」と見本を見せられた上で、担当地域に置き去りにされたり、衆院選では「陣笠代議士」という言葉がつくられたジェラルド・カーチスコロンビア大学教授の名著『代議士の誕生』の主人公である佐藤文生(さとう・ぶんせい)元郵政相を落選に追い込んで当選しました。

 そして、20年前、伝説の宮沢解散では、政治改革を推進する若手議員の会(石破茂・渡瀬憲明共同代表)の下、簗瀬進さんらとともに、小選挙区実現に尽力しました。


[写真]小選挙区法案廃案を阻止しようとする、自民党1期生(当時)の岡田克也さん(手前)、岩屋毅さん(奥)、1993年6月15日、岡田かつや後援会発行『岡田かつや20年の歩み』から。

 こうして、自民党を離党し、新党さきがけに飛び乗った岩屋さんですが、その小選挙区に苦労します。大分自治労の組織がある、横光克彦さんに連敗。政治改革を実現する会の主要メンバーがあのころの羽田孜さんや小沢一郎氏と同じ8期生となりました。岡田克也さんは与党幹事長・副総理・外相、細田博之・自民党幹事長代行は与党幹事長・内閣官房長官・国務大臣、河村健夫さんも内閣官房長官・文科相を歴任しました。きょうは、初当選直後の特別国会で、野党提出の「税制再改革基本法」(118衆法7号、社会党、公明党、民社党、社民連、進歩党共同提出)の答弁者となった北側一雄・衆議院総務委員長も、補正予算関連法案「地方交付税法改正案」(183閣法2号)の委員長報告に登壇しました。


 その中で6期生でいまだ未入閣にとどまる岩屋さん。国政復帰のために、麻生太郎さんと葉巻仲間になるなど苦労したようです。

 2010年9月、シャドウ防衛大臣に就任。露出が少ない野党で、2010年10月9日に「国家主権と国益を守るために行動する議員連盟」のメンバーで尖閣諸島上空を視察する計画が持ち上がります。しかし、このときはフジタ社員1人が中国当局に拘束されていました。このとき、与党・民主党の岡田克也幹事長は、次のように記者会見で述べています。

民主党幹事長記者会見録から引用はじめ]

【記者】

岡田幹事長は今月9日、「国家主権と国益を守るために行動する議員連盟」のメンバーが尖閣諸島上空を視察する際、中国に拘束されている日本人が残っているとして中止を求めたが、その真意は。総理官邸と連絡は取っていたのか。

【幹事長】官邸とは連絡を取っておりません。これは私の個人あるいは前外務大臣としての経験に基づく発言で、確か原口さんと、自民党の、私の信頼している友人に、それぞれお話をさせていただきました。中止を求めたのではありません。今そのタイミングなのか、ということを申し上げたわけです。それはやはり、フジタの社員が1人まだ帰ってきていないという状況、もちろん中国側は、それは関係ない事件であると言っているわけですが、何らかの出来事が日本に帰ることに影響を及ぼしかねないという中で、リスクはなるべく減らすということが、私は日本人として当然のことであると。日本人の命がかかっている、スパイ罪というか軍事施設に関する法令に反した、ということで拘束されていたということですから、日本人として、同じ日本人の生命に影響があるかもしれないリスクを、なるべく減らしたいという思いで申し上げました。別に、解放された後で尖閣を見に行くという選択もあったわけですから、このタイミングは避けてほしいなというのが、私の感覚、私の常識であります。

【記者】議連メンバーが視察を終了して3時間後にフジタの社員は解放されている。岡田さんが懸念したような、解放が長引くとか、そういう見通しではなかったのではないか。

【幹事長】それは結果論ですよね。誰もわからないわけですから。それを見通しておられる方がいたとすれば、ぜひお聞きしたいのですが、そんなことはできないと思います。そうであれば、なるべくリスクを減らすというのは、私は当然のことだと思います。それが同じ日本人としての対応であると思っております。

【記者】原口さんと自民党の信頼している友人に話した、ということだが、自民党の信頼している友人は、尖閣諸島に行ったか

【幹事長】行かれていないと思います。私は、行ってはいけない、とは言っておりません。今のタイミングで行くのはいかがか、ということを申し上げただけですから

[引用おわり]

 外交・安全保障に関して、二大政党が政局をしかけて、自らの存在感を高めて、選挙に勝とうとすることは、ときに国益を損ねます。そして、たとえ、各党共通の認識があっても、国会議員定数削減ができないようでは、どの党が勝とうと国会そのものが信頼されなくなります。

 政治改革を実現する若手議員の会として、20年前輝いていた石破茂共同代表(当時2期生)が自民党幹事長として定数削減つぶしに画策する姿は、いまさらどうとも思いませんが、悲しいといえば、悲しいのかもしれません。一度裏切る人間は二度裏切るとはよくいったものです。

 未入閣、当選6回、そして、尖閣諸島に行かなかった岩屋さん。あれから20年、まだ55歳の岩屋さんの信頼にもとづく二大政党が互いを尊重しながら決められる政治への挑戦は今まだ始まったばかりです。

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