【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

◎民主党が結党以来最大のピンチ 再確認したい石関貴史さんの八ッ場ダムのホームラン質問

2011年12月27日 20時36分46秒 | 第169通常会(2008年1月~6月)ガソリン国会

[写真]民主党衆院議員の石関貴史さん。

 2011年12月27日(火)、民主党が結党以来最大のピンチを迎えました。

 “決壊”のきっかけは国交大臣の民主党参院議員、前田武志さんによる、八ッ場ダム本体着工への関連予算の平成24年度本予算政府原案への盛り込み表明でした。

 群馬2区(伊勢崎市など)選出の民主党衆院議員、石関貴史さんは、2011年12月27日(火)、群馬県の国営八ッ場ダムの本体工事着工に向けた予算が平成24年度予算(案)に盛り込まれたことに抗議して、党副幹事長と国民運動委員長代理の辞表を出した上で、民主党にとどまることを発表しました。

 国土交通大臣の前田武志さんはイカダに乗って船を出た、新生党衆院側35人衆の一人なので、徹底的に擁護したいのですが、今回の八ッ場ダム、整備新幹線3区間、外環道の3つの予算盛り込みについては残念至極です。4省庁合併のため、事務次官ポストがだぶついていることから、官房副長官(事務)や東日本大震災復興対策本部事務局長に、元事務次官を「天上がり」させた国交省が一気呵成に巻き返しをはかったようです。マニフェストは総崩れ、まさに民主党は結党以来最大の「決壊」のピンチを迎えました。

 さて、党にとどまる石関さんですが、一つ再確認したいのが、第168通常国会、ガソリン国会、民主党の青春国会でのホームラン質問主意書です。当時、石関さんは群馬県選出のただ一人の非自民系衆院議員でした。「八ッ場ダムは地元で福田ダムと呼ばれている」(民主党参院議員、大河原雅子さんの代表質問)だそうですが、その群馬4区選出の福田康夫内閣の全閣僚が花押を書いた質問主意書は驚くべき内容でした。この質問は高く評価され、橋本自社さ内閣による諫早湾干拓事業(ギロチン)に抵抗するうえでの「公共事業コントロール法案」の作成にかかわった、旧民主党(オリジナル・民主党)を中心とする議員からも高く評価されたようです。

 この石関さんの質問主意書の価値を、大臣になった前田先生は重く受け止めないと、あの第168通常国会の攻防は無駄だったことになりかねません。ぜひ、再確認したい、石関さんの憲政史上最大のヒット質問主意書とは?第169国会質問番号432、「八ッ場ダム問題に関する質問主意書」です。「質問番号432」とは何本出しているんだよ、という感じで、霞が関官僚が与党になった民主党をいじめ返そうとしているのは、心情面では理解できなくもありません。やはりできれば早く家に帰りたいです。しかし、最も多く質問主意書を出していたのは、鈴木宗男さんなのですから、その怒りは民主党ではなく、鈴木さんに向けるべきです。

 それはさておき、石関さんは「利根川の治水計画のベースとなっているのは、一九四七年のカスリーン台風による洪水である。このカスリーン台風が再来した場合、八ッ場ダムは治水基準点「八斗島」においてどのような治水効果があるのか、八ッ場ダムがない場合の洪水ピーク流量、八ッ場ダムがある場合の洪水ピーク流量をそれぞれ計算した結果について明らかにされたい」と質問しました。

 これに対して、福田康夫内閣の答弁書は「国土交通省において、昭和二十二年九月の洪水時と同程度の降雨量及び同洪水時の降雨パターンを基に、一級河川利根川水系利根川(以下「利根川」という。)の八斗島地点における流出計算を行った結果によれば、八斗島地点上流にダムがない場合の洪水のピーク流量は毎秒二万二千百七十立方メートル、既設の六ダム(相俣ダム、藤原ダム、奈良俣ダム、矢木沢ダム、薗原ダム及び下久保ダムをいう。以下同じ。)はあるが八ッ場ダムがない場合の洪水のピーク流量毎秒二万四百二十一立方メートル既設の六ダムに加えて八ッ場ダムがある場合の洪水のピーク流量毎秒二万四百二十一立方メートルである」としてます。

 すなわち、八ッ場ダムがない場合の洪水のピーク水量は「毎秒20421立方メートル」で、八ッ場ダムがある場合は、「毎秒20421立方メートル」です。つまり、八ッ場ダムの治水効果は全くないということになります。前田国交相は、国直轄事業の地方負担金(東京都、埼玉県などが一部支払い済み)の返還を考えると、今から着工した方が、かえって安上がりという財政的側面を指摘しています。藤村修官房長官は、予算書に八ッ場ダムの款や項がないことから、予算執行上の国交省の箇所付けの問題にすぎない、という趣旨の発言をしています。実は、前田さんや藤村さんの言っていることは、理にかなっています。しかし、国直轄事業に地方負担金を設ける「ヤクザのみかじめ料」のような政治、予算書に書かずに族議員が国交省にあくまでも予算執行上の運用面で箇所付けするような政治、すなわちそれが自民党の中央集権、利益の誘導と分配の政治、情報が閉鎖された政治だったのです。例えば、県庁の予算書には、国直轄事業への地方負担金はやむなく書かれているだろうし、県営ダムの予算は款・項が設けられていない予算書をつくっている県庁というのは、おそらくないでしょう。ではなぜ国予算書に款・項がなくていいのか。それはまったく道理が通らない話であり、民間なら大企業ほど決算書類が分厚くて当たり前です。それくらい、馬鹿げたことをしてきたのが、半世紀にわたる自民党政治と霞が関の統治機構でした。民主党は政権交代から2年4ヶ月間、それを変えようと努力してきましたが、ついに力尽き、今まさに決壊しようとしています。1998年4月27日の結党以来最大のピンチです。

 いずれにしろ、国民が判断することです。しかし、この第169通常国会の「民主党の青春」の原点に返ることが、例え、大惨敗で下野するにしても、次につながりません。ぜひ、前田さんには、じっくりとこの石関質問に目を通していただきたいと考えます。前田先生、晩節を汚しかねない事態ですよ。ぜひ、あの日(1993年6月18日の宮澤解散)と同じ澄んだ瞳を取り戻してください。


http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/169432.htm

質問名「八ッ場ダム問題に関する質問主意書」の経過情報 項目 内容
国会回次 169
国会区別 常会
質問番号 432
質問件名 八ッ場ダム問題に関する質問主意書
提出者名 石関 貴史君
会派名 民主党・無所属クラブ
質問主意書提出年月日 平成20年 5月27日
内閣転送年月日 平成20年 6月 2日
答弁延期通知受領年月日
 
答弁延期期限年月日
 
答弁書受領年月日 平成20年 6月 6日
撤回年月日
 
撤回通知年月日
 
経過状況 答弁受理

平成二十年五月二十七日提出
質問第四三二号

八ッ場ダム問題に関する質問主意書

提出者  石関貴史

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八ッ場ダム問題に関する質問主意書

 利根川支川・吾妻川で建設が進められている八ッ場ダムは自然への影響や災害誘発の可能性など、様々な問題が指摘されており、ダム建設の必要性について徹底した検証が求められている。また、八ッ場ダム事業には様々な疑問がある。
 従って、次の事項について以下、質問する。

一 八ッ場ダムの治水計画について
 昨年九月の台風九号と二〇〇一年九月の台風一五号の降雨量は八ッ場ダムの治水計画に採用されている一〇〇年に一回の降雨量に匹敵するものであった。しかし、この時ダム予定地近傍の岩島地点で計測された実測流量は、国が想定している机上の計算による八ッ場ダムへの最大洪水流入量毎秒三九〇〇m3の二八%から三〇%の量にすぎなかった。このことに関連して以下質問をする。
 1 最大流入量毎秒三九〇〇m3を決めた時期
  八ッ場ダムの治水計画は一〇〇年に一回の降雨が想定され、最大で毎秒三九〇〇m3の洪水が流入し、そのうち、二四〇〇m3をダムでカットすることになっていると聞く。この最大流入量毎秒三九〇〇m3という数字が決まったのはいつのことなのか、その数字が決まった時期を明らかにされたい。
 2 毎秒三九〇〇m3算出の根拠となった観測流量
  毎秒三九〇〇m3は一〇〇年に一回の雨量を洪水流出モデルに当てはめて計算したものと思われるが、その洪水流出モデルの係数は実際の観測流量に適合するものが選択されなければならない。八ッ場ダムの洪水流出モデルの係数選択に用いた観測流量はどの地点のものなのか、また、いつの時点の観測値なのかを明らかにされたい。
 3 八ッ場ダム予定地近傍の岩島地点の流量観測
  現在、吾妻川の八ッ場ダム予定地の近傍では国土交通省が岩島地点で流量観測を行っている。岩島地点で洪水流量観測が行われるようになったのは何年からなのかを明らかにされたい。
 4 岩島地点の洪水流量と流域平均三日雨量
  岩島地点で洪水流量観測が行われてから、その洪水ピーク流量が毎秒一〇〇〇m3を超えた時の年月日と時刻、ピーク流量観測値、及びその時の八ッ場ダム上流域平均の最大三日雨量を明らかにされたい。また、八ッ場ダムの計画三日雨量、岩島地点と八ッ場ダムの流域面積も明らかにされたい。
二 利根川に対する八ッ場ダムの治水効果について
 国土交通省によると、八ッ場ダムが計画されている吾妻川の流域面積は、治水基準点「八斗島」(群馬県伊勢崎市)の上流域の1/4を占め、また八ッ場ダムの治水容量は利根川上流域にある六ダムを合計した治水容量の約六割を占めるため、利根川下流域の洪水被害を軽減するとのことである。国土交通省のいう洪水被害の軽減がどの程度のものなのか、八斗島治水基準点における、具体的なデータについて質問する。
 1 カスリーン台風再来時の八ッ場ダムの治水効果
  利根川の治水計画のベースとなっているのは、一九四七年のカスリーン台風による洪水である。このカスリーン台風が再来した場合、八ッ場ダムは治水基準点「八斗島」においてどのような治水効果があるのか、八ッ場ダムがない場合の洪水ピーク流量、八ッ場ダムがある場合の洪水ピーク流量をそれぞれ計算した結果について明らかにされたい。

 2 最近の洪水における八ッ場ダムの治水効果
  最近三〇年間の洪水について八ッ場ダムがあった場合の八斗島地点での治水効果を計算したものがあれば、その計算結果について詳細に説明されたい。八ッ場ダムがあった場合の洪水ピーク流量と最高水位の計算結果、及び実際の洪水ピーク流量と最高水位の観測値、その発生年月日・時刻を明らかにされたい。また、その時の八ッ場ダム地点の最大流入量と最大放流量の計算結果、及びそれぞれの発生年月日・時刻も明らかにされたい。
 3 最近の洪水における八斗島以外での八ッ場ダムの治水効果
  八斗島地点以外で利根川における八ッ場ダムの治水効果を、最近三〇年間の洪水について計算したものがあれば、その計算結果について詳細に説明されたい。八ッ場ダムがあった場合の洪水ピーク流量と最高水位の計算結果、及び実際の洪水ピーク流量と最高水位の観測値、その発生年月日・時刻を明らかにされたい。また、その時の八ッ場ダム地点の最大流入量と最大放流量の計算結果、及びそれぞれの発生年月日・時刻も明らかにされたい。
三 八ッ場ダムの暫定水利権について
 八ッ場ダムにより開発される水の約六割は既に暫定水利権として取水されていると国土交通省は説明している。このことに関連して質問をする。
 1 八ッ場ダム暫定水利権の内容
  現在、八ッ場ダムの暫定水利権が許可されている利水者の名、暫定水利権の水量、非かんがい期と通年の区別を明らかにされたい。
 2 暫定水利権の開始時期
  前記の暫定水利権それぞれが最初に許可を受けた時期を明らかにされたい。なお、開始時期は八ッ場ダムの暫定水利権に限定したものではなく、暫定水利権としての許可を最初に受けた時期を示されたい。
 3 渇水時における八ッ場ダムの暫定水利権の取水制限
  前記1の各利水者の八ッ場ダム暫定水利権は一九九〇年代以降の渇水時において安定水利権とは異なる取水制限を受けたことがあるのか。安定水利権とは異なる取水制限を受けたことがあるならば、各暫定水利権について、その状況を明らかにされたい。
四 発電について
 1 八ッ場ダムに付設される水力発電所
  八ッ場ダムに付設される予定の水力発電所の最大発電力と年間発電見込み量を明らかにされたい。
 2 吾妻川の水力発電所
  吾妻川の東京電力㈱の水力発電所のうち、八ッ場ダムの貯水が影響すると想定される川中、松谷、原町、箱島、金井、渋川発電所のそれぞれの最大発電力と最近一〇年間の年間平均発電量を明らかにされたい。
五 八ッ場ダム事業の便益計算について
 1 洪水調節の便益
  八ッ場ダムの洪水調節の便益は一九四七年のカスリーン台風洪水が再来した場合に利根川の氾濫で失われる資産を計算した結果から求められていると聞く。しかし、一方で、カスリーン台風再来時における利根川での八ッ場ダムの治水効果の計算結果はゼロに近いと聞く。カスリーン台風再来時の八ッ場ダムの治水効果を前提にした場合は、八ッ場ダムの洪水調節の便益がいくらになるのか。その計算結果を示されたい。また、八ッ場ダムがある場合とない場合の、八ッ場ダム下流域の洪水想定氾濫区域図とその計算根拠を示されたい。
 2 河川の水量確保に係る便益
  八ッ場ダムの建設により、吾妻渓谷の自然は大きなダメージを受けるにもかかわらず、八ッ場ダムによって逆に「吾妻渓谷に必要な水量を確保することによる景観改善の便益」が生まれるとされている。この便益の計算方法とその計算に用いた観光客数及びその観光客数の算出根拠を明らかにされたい。
 3 水力発電所の河川維持流量の義務付け
  吾妻渓谷の流量がたまに落ち込むことがあるのは、上流側にある東京電力㈱の水力発電所の取水堰で全量取水がされているからである。しかし、最近は水力発電所の取水に関しては水利権の更新時に河川維持流量の放流が義務付けられるようになっているから、次回の水利権更新時期を過ぎれば、吾妻渓谷の流量は増加すると予想される。吾妻渓谷より上流で取水している川中発電所及び松谷発電所の水利権更新が何年度に行われるのかを明らかにされたい。

 右質問する。


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平成二十年六月六日受領
答弁第四三二号

  内閣衆質一六九第四三二号
  平成二十年六月六日

内閣総理大臣 福田康夫

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員石関貴史君提出八ッ場ダム問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 

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衆議院議員石関貴史君提出八ッ場ダム問題に関する質問に対する答弁書

 

一の1について

 お尋ねの「数字が決まった時期」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、昭和六十一年七月に作成した特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)第四条第一項の規定に基づく八ッ場ダムの建設に関する基本計画(以下「基本計画」という。)においては、八ッ場ダムの建設される地点における計画高水流量毎秒三千九百立方メートルのうち、毎秒二千四百立方メートルの洪水調節を行うこととしている。

一の2について

 八ッ場ダムの洪水流出計算モデルの係数については、一級河川利根川水系吾妻川(以下「吾妻川」という。)の群馬県渋川市村上地先において、昭和三十四年八月、昭和五十六年八月、昭和五十七年八月及び昭和五十七年九月の洪水時における流量の観測値等により検証している。

一の3について

 お尋ねの「洪水流量観測」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、高水流量観測を指すのであれば、吾妻川の群馬県吾妻郡東吾妻町大字三島地先(以下「岩島地点」という。)においては、建設省関東地方建設局八ッ場ダム工事事務所(当時)が昭和五十六年から高水流量観測を開始している。

一の4について

 岩島地点において「洪水ピーク流量が毎秒一〇〇〇m3を超えた」と思われる洪水を観測した時間帯、流量の観測値のうち最大のもの(以下「最大観測値」という。)及び洪水時の八ッ場ダム上流域の流域平均の三日雨量は、昭和五十六年八月二十三日午前三時八分から同日午前八時八分までで最大観測値が毎秒約千四百七立方メートルであり三日雨量が約二百七十九ミリメートル、昭和五十七年九月十二日午後十一時五分から翌日午前零時十五分までで最大観測値が毎秒約千百二十六立方メートルであり三日雨量が約二百十七ミリメートル、平成十年九月十六日午前八時から同日午前十一時までで最大観測値が毎秒約千三百七十三立方メートルであり三日雨量が約二百七ミリメートル、平成十三年九月十日午後三時一分から同日午後四時四分までで最大観測値が毎秒約千二百七十一立方メートルであり三日雨量が約三百四十一ミリメートル、平成十九年九月七日午前二時二分で最大観測値が毎秒約千十立方メートルであり三日雨量が約三百二十三ミリメートルとなっている。
 また、八ッ場ダム地点における計画降雨量は三日雨量で三百五十四ミリメートルであり、八ッ場ダム地点から上流の流域面積は約七百八平方キロメートル、岩島地点から上流の流域面積は約七百四十七平方キロメートルである。

二の1について

 国土交通省において、昭和二十二年九月の洪水時と同程度の降雨量及び同洪水時の降雨パターンを基に、一級河川利根川水系利根川(以下「利根川」という。)の八斗島地点における流出計算を行った結果によれば、八斗島地点上流にダムがない場合の洪水のピーク流量は毎秒二万二千百七十立方メートル、既設の六ダム(相俣ダム、藤原ダム、奈良俣ダム、矢木沢ダム、薗原ダム及び下久保ダムをいう。以下同じ。)はあるが八ッ場ダムがない場合の洪水のピーク流量は毎秒二万四百二十一立方メートル、既設の六ダムに加えて八ッ場ダムがある場合の洪水のピーク流量は毎秒二万四百二十一立方メートルである。
 なお、国土交通省において、昭和二十二年九月の洪水時と同程度の降雨量で、同洪水時を含む過去に生起した三十一の洪水時の降雨パターンを基に、八斗島地点における流出計算を行った結果によれば、そのうち二十九の洪水時の降雨パターンについて、八ッ場ダムは洪水のピーク流量に対する調節効果を有している。

二の2について

 お尋ねの「最近三〇年間の洪水について八ッ場ダムがあった場合の八斗島地点での治水効果を計算したもの」は、国土交通省が現時点で把握している限りでは存在しない。

二の3について

 お尋ねの「八斗島地点以外で利根川における八ッ場ダムの治水効果を、最近三〇年間の洪水について計算したもの」については、国土交通省が現時点で詳細を把握しているものは存在しない。

三の1及び2について

 八ッ場ダムの暫定水利権(ダム等水源開発施設の建設を勘案し許可された水利権をいう。以下同じ。)の名称、許可を受けている者、水量及び当初許可年月日(同一の名称で最も早く暫定水利権の許可を受けた年月日をいう。)は、平成十九年度末現在、次のとおりである。
 (1) 東部地域水道用水供給事業、群馬県知事、毎秒〇・四二八立方メートル(非かんがい期)、平成九年十月十七日
 (2) 藤岡市水道、藤岡市長、毎秒〇・二三五立方メートル(通年)、昭和四十三年九月三十日
 (3) 埼玉県水道(大久保)、埼玉県知事、毎秒三・七五〇立方メートル(非かんがい期)、毎秒〇・六七〇立方メートル(通年)、昭和四十八年六月三十日
 (4) 埼玉県水道(吉見)、埼玉県知事、毎秒〇・四八二立方メートル(非かんがい期)、平成十七年三月三十一日
 (5) 東京都水道(朝霞)、東京都知事、毎秒〇・五五九立方メートル(非かんがい期)、昭和六十二年五月一日
 (6) 千葉県水道(矢切)、千葉県知事、毎秒〇・四七〇立方メートル(非かんがい期)、昭和五十四年三月三十一日
 (7) 県西広域水道(水海道系)、茨城県知事、毎秒〇・〇三六立方メートル(通年)、平成十三年六月十二日
 (8) 県南広域水道(利根川)、茨城県知事、毎秒〇・五〇七立方メートル(通年)、昭和五十五年三月三十一日
 (9) 東毛工業用水道、群馬県知事、毎秒〇・二〇八立方メートル(非かんがい期)、昭和五十二年七月十九日
 (10) 千葉地区工業用水道、千葉県知事、毎秒〇・四七〇立方メートル(通年)、昭和五十一年二月二十日
 (11) 群馬用水、独立行政法人水資源機構理事長、毎秒〇・五六四立方メートル(非かんがい期)、平成十二年十月三十日
 (12) 埼玉県水道(行田)、独立行政法人水資源機構理事長、毎秒四・三一五立方メートル(非かんがい期)、昭和五十九年六月六日

三の3について

 平成十三年八月に実施された取水制限において、三の1及び2についてで述べた八ッ場ダムの暫定水利権のうち、埼玉県水道(大久保)及び埼玉県水道(行田)については、お尋ねの「安定水利権とは異なる取水制限」を実施している。当時、埼玉県水道(大久保)の暫定水利権は水量が毎秒三・〇〇八立方メートル(非かんがい期)、毎秒〇・六九八立方メートル(通年)で、埼玉県水道(行田)の暫定水利権は水量が毎秒一・六六六立方メートル(非かんがい期)、毎秒一・〇六八立方メートル(通年)であり、このうち埼玉県水道(大久保)の毎秒〇・六九八立方メートル(通年)及び埼玉県水道(行田)の毎秒一・〇六八立方メートル(通年)について、安定水利権の取水制限率が十パーセントであったのに対して、二十パーセントの取水制限率となっていた。

四の1について

 現在、手続を行っている基本計画の変更に当たっては、八ッ場ダムの建設に伴い新設される発電所の最大出力を一万千七百キロワット、年間可能発生電力量を四万九百九十二メガワット時と見込んでいる。

四の2について

 東京電力株式会社から提出された河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第二十三条に基づく許可の申請書における最大発電力は、川中発電所が一万四千キロワット、松谷発電所が二万三千五百キロワット、原町発電所が二万六千五百キロワット、箱島発電所が二万三千百キロワット、金井発電所が一万四千二百キロワット、渋川発電所が六千八百キロワットである。
 また、「年間平均発電量」については、国土交通省は、河川法第二十三条に基づく許可の条件として、実際の取水量について報告を受けているが、実際の発電量について報告を受けることとはしていないことから、把握していない。

五の1について

 お尋ねの「カスリーン台風再来時の八ッ場ダムの治水効果を前提にした場合」における八ッ場ダムの洪水調節に係る便益については算出していないため、お答えすることは困難である。なお、利根川上流域は過去の降雨の特性が多様であることから、過去に生起した三十一の洪水時における降雨パターンを用いて、年超過確率二百分の一の洪水が生起した場合における洪水調節効果を計算すること等により、八ッ場ダムの洪水調節に係る便益を八千二百七十六億円と算出しているところである。
 また、お尋ねの「洪水想定氾濫区域図」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、利根川水系においては平成三年に「直轄河川防御対象氾濫区域図」を作成し、公表しているところであり、これは計画高水位より低い沿川の地域等が浸水すると仮定して洪水時に浸水する可能性がある区域を図示したものであり、「八ッ場ダムがある場合とない場合」について、計算に基づき作成したものではない。

五の2について

 八ッ場ダムの河川の水量確保に係る便益は、八ッ場ダムにより吾妻川に維持流量を確保することによる景観改善等の効果を算定したものであり、観光客数及び沿川居住世帯数に、近隣のダムで実施したアンケート調査結果に基づいて設定した支払意思額(河川の水量を確保するための取組に対して個人や世帯が支払ってもよいと考える金額をいう。)を乗じること等により算出したものである。
 便益の計算に使用した観光客数は、約七百三十九万人であり、平成十三年度における吾妻町(当時)、長野原町、草津町、嬬恋村及び六合村の年間の観光客数を合計したものである。

五の3について

 川中発電所及び松谷発電所に関する水利権の許可期間は、平成二十三年度末までであり、東京電力株式会社からの申請があれば、必要な審査を行い、更新を判断することとなる。

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