【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

少年院・少年鑑別所法案が全会一致で可決の衆・法務委、「就職模擬面接で嘘つくべきか」の階・谷垣問答

2014年05月23日 10時16分33秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

【2014年5月23日(金)衆議院法務委員会

 少年院法と少年鑑別所法を分離したうえで改正する3法案(186閣法38~40号が全会一致で可決しました。政府原案通りで附帯決議無し。次の本会議で可決し、参院に送付、今国会中で成立する見通し。

 少年鑑別所についての法案審査。

 民主党の階猛さんは「名称に違和感がある」として、あるところでは地名とあわせて「ネリカン」などと不良の間で呼ばれていることを指摘しました。谷垣法相が「例えば少年院ではなんとか学園と名乗っているところもある」としました。階さんは「例えば、少年看護・育成支援センターではどうか?」と提案すると、奥野信亮法務副大臣は「私も人間を鑑別する、という名称には違和感があり、事務方に他の名前を考えるよう指示している」と賛同しました。

 谷垣法相は「改正法律から、少年鑑別所長は本来業務として、地域社会の非行、いじめ、犯罪の相談に乗ることになる」と語りました。階さんは「全国で1年間の一般相談は1468件にとどまっている」として、収容者以外の相談に乗るため、メールなどの活用を求めました。谷垣さんは「なかには、うちの子が勉強しないので困るという相談もある」としながらも、善処を約束しました。

 次に、少年院について。法案審査に先立ち、法務委員が視察した少年院について階さんが見た風景をめぐって、谷垣・階問答がありました。ともに、東大法学部卒の弁護士ですが、谷垣さんは山岳部、階さんは野球部に打ち込んだこともあり、紆余曲折があり、かなり年齢が行ってから司法試験にうかり、衆議院議員をやっている共通点があります。

 階さんは少年院でみた、SSTという、教官と少年の模擬就職面接の光景を紹介。

 「模擬就職面接で経歴を聞かれた少年が『少年院を出ました』と答えると、教官が『親の介護をしていました』というような答え方をした方が良い場合もあるよ、とアドバイスしていた。あきらかな嘘をつけと教官が言っている。教官の指導のしかたはこれでいいのか」と問いました。

 谷垣法相は、「階委員が視察した際に、そのことを問題視していたことを、法務省の事務方からすでに聞いており、私も省内でかなり議論しました。事実は言うべきだと思う。ただ、法務省がハローワークにお願いすると、『自分も昔はやんちゃだったから分かる』と言ってくれる人(社長)もいるが、かなり少数派だ。こういう委員会で言うのもなんですが、省内で議論した中で、(少年院に入っていた)その間、職についていなかった期間がある、というのは事実だと思う。そこで、SSTというのは、いわゆるゲームで言う、ロールプレイングのようなものなので、少年が『少年院にいました』とこたえたときに、教官が『君、それを言うと、雇用先(の予定者)に問い詰められるかもしれないけれども、そのときどうするの?』という試行錯誤の疑似体験は必要なのではないかと思う」と真摯に答弁しました。

 階さんは「理想と現実のはざまなのかもしれないですが、教官はもっと理想の高みを目指してほしい」と呼びかけました。



[画像]「少年院を出ました」と言うべきかどうか問う、民主党の階猛さん、2014年5月23日(金)、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。


[画像]答弁する谷垣禎一法相、2014年5月23日(金)、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 二大政党は、「現実の自民党」と「理想の民主党」という感じもします。が、それはあくまでも程度問題であり、人は皆、理想と現実のはざまで揺れ続けながら、人生を歩んでいきます。

 谷垣・階問答の最後、階さんはこう締めくくりました。

 「最後に言いたいのは、視察のさい、『被害者に謝罪しても無駄ですよ』と言った少年がいた。被害者への謝罪の気持ちを持つことが何よりも大事だ。私は正直、カチンときた。もっとしっかり指導してほしい」。

 階委員にしろ、谷垣法相にしろ、冷静な議論が続いた後に、最後に熱い感情が噴き出すのが法務委員会。

 少年院法・少年鑑別所法可決のとき、他の法律と違い、可決の瞬間を見守る傍聴者は来ていなかったようです。私は2年前からこの法律の可決を要望していただけに、インターネット越しに大いに拍手を贈りたいところです。

(関連エントリー2012年9月13日付)少年院・少年鑑別所法案が参院でまったく審議されず廃案 審査順のプロセス透明化が必要だ

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