【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【12/1】種苗法改正案「バランス論」解消されず参・委通過、予防接種法改正案も、幹事長会談で国民投票法改正案採決しないこと確定

2020年12月01日 17時20分54秒 | 第203回臨時国会(2020年10月下旬)菅首相初答弁
[写真]国会議事堂、3年前の2017年夏、宮崎信行撮影。

【与野党幹事長・国対委員長会談 令和2年2020年12月1日(火)】
【与野党国対委員長会談 同日】

 会期は土曜日まで、残り5日間になります。

 木曜日が定例日の憲法審査会での「憲法改正手続きのための国民投票法改正案」(196衆法42号)の採決を、月曜日という異例の早さで言及しました。この理由ははっきりしました。きょうの再会談の後、二階俊博幹事長が登場して、幹事長・国対委員長が急きょセットされ、開かれました。この場で、「196衆法42号」を今国会で採決しないことが、二階幹事長から断定されました。二階さんらは「通常国会で、(196衆法42号についての)結論をえたい」としました。また、立憲民主党の「年末まで会期を延長して関係委員会を開けるようにする」との提案について、二階さんは「ご意見としてうけたまわった」とだけ答え、延長されずに閉会する公算が高まりました。8月28日(金)午後2時に突如首相が辞め、29日(土)に二階、森山、菅さんの衆議院赤坂議員宿舎での会合であっという間に流れが決まりました。日本で育った人は「8月28日の金曜日」というと、忙しいという感覚を持つ日に、突如7年8か月ぶりの大政局が始まり、新首相はとくにやりたいことが無い人のようで、秋の臨時国会は、きょうの、二階・森山・福山・安住というキーパーソンが顔をそろえて、幕を引くかたちとなりました。

【参議院農林水産委員会 同日】

 「種苗法改正案」(201閣法37号衆修正)が立憲・共産反対、自民・公明・国民民主党の賛成で可決すべきだと決まりました。質疑の中では、「バランス論」という言葉が出て、育成権者の権利の向上と海外流出の水際対策に異論は出ませんでした、育成者と農業者の権利のバランスがおかしいとされました。衆議院では施行日だけの与党修正で、バランス論では法案の修正はされませんでしたが、けっきょく「種子法廃止法により農政不信が高まり、グローバル種苗メーカーの寡占に巻き込まれる不安が高まった」という認識が共有されているようです。

 日本農業新聞によると、きのうの規制改革会議農林水産ワーキンググループで養父市の企業農地取得特区の延長と全国化を求める意見が相次ぎ、河野行革相も賛同した、と報じられています。これについて、通常国会に法案が出る場合は、衆参の内閣委員会ではなく、地方創生の特別委員会にかかると思われますので、与野党とも常連が多い農林水産委員の隔靴掻痒はもうしばらく続く気配。

 委員会の最後に、「特定水産動植物等の国内流通の適正化に関する法律案」(203閣法4号)が趣旨説明されました。質疑は次回木曜日で、金曜日の本会議で成立の見通し。

【参議院厚生労働委員会 同日】

 「予防接種法及び検疫法改正案」(203閣法1号)が全会一致で可決すべきだと決まりました。次回の本会議で成立し、与党の肩の荷が降ります。

 この後、篠原孝衆議院議員(立憲民主党、長野1区)が「労働者協同組合法案」(201衆法26号)の趣旨説明をしました。質疑は次回。

【参議院外交防衛委員会 同日】

 先週金曜日の本会議で代表質問された「日英EPA承認案」(203条約1号)が趣旨説明だけされました。防衛省の給与法の成立を優先したため、審議入りが遅れ気味となりました。次回1日だけ審議して、採決される見通し。衆議院では共産党が反対しましたが、他の野党は賛成に回りました。

【参議院内閣委員会 同日】

 手続きが簡素化する、「NPO法改正案」(203衆法4号)が全会一致で可決すべきだと決まりました。

【参議院国土交通委員会 同日】

 超党派で目的・理念から見直した、「交通政策基本法など改正案」(203衆法5号)が審議されました。共産党議員は「コロナによる旅客輸送事業者への配慮が入ったことなどは異論がない」としながらも「地域内外のモビリティの向上のなかで、基幹道路が特出しされた法文があることは、首都圏の外環道などの大規模開発を優先する意図があるように思える」という趣旨の緩めの反対がありました。採決では、共反対、自民・公明・立憲・国民・れいわ新撰組の賛成多数で可決すべきだと決まりました。

【参議院文教科学委員会 同日】

 プロバスケを支援する、「totoスポーツ振興くじ法及び日本スポーツ振興センター法改正案」(203衆法5号)が共反対、自公立などの賛成多数で可決すべきだと決まりました。趣旨説明は常連中の常連の、遠藤利明・衆議院議員(元五輪相)。共産党は「射幸心をあおる」と反対しました。

【参議院財政金融委員会 同日】

 一般質疑がありました。例年臨時国会は波静か、通常国会は大荒れのこの委員会。公明党は、常連の西田実仁会長から秋野公造・国対委員長に委員を交代させたようですが、あまり財務金融の印象は無いので、国対シフトということだと思います。但し、来年の国の税制改正法案も小ぶりなものとなる見通しです。

●参議院の総務、法務、経済産業、環境の4つの委員会は開かれませんでした。4つの委員長ポストは公明2つ、立憲2つで、あまり法案が積もらないようにする、参議院自民党の長年の知恵がうかがえます。さはさりながら、停滞感もありますので、衆議院側の情勢が変われば、来年半ば以降は大嵐に代わるかもしれません。

【衆議院東日本大震災復興特別委員会 同日】

 平沢復興大臣の所信的あいさつに対する一般質疑がありました。復興住宅は今月も新規に開業しますが、年収要件などで、津波などで負った負債を勘案していない計算をしているとの批判が、立憲民主党の岡本あき子さん(宮城1区)から出ました。

【衆議院法務委員会理事懇談会 同日】

 理事懇談会があり、あす委員会の開催で与野党合意。あすの委員会で参議院議員から「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の母子関係に関する民法の特例に関する法律案」(203参法13号)が審議される見通しで、採決もあるか。この法案では、出自を知る権利を今後の検討条項にしたことについて、当事者が実名顔出しで「後から知ったので家族が崩壊した」と記者会見。そして、今週、野田聖子自民党幹事長代行らが火消しをしているのが、第3条第4項「生殖補助医療により生まれる子については、心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう必要な配慮がなされるものとする」。これは私が、以前に違和感を指摘した改正(案)条項でした。私は配慮条項の主語が、国なのか、自治体なのか不明確だとしましたが、「健やかに生まれ育つ」が優生思想を感じさせ、差別的ではないかとの懸念が生じているようです。たしかに、そうだと思います。100%参議院のセンセイの責任ですが、参議院法制局も少しセンスはいかがか。すぐに成立させてほしいという当事者もいるようで、今週成立するとみられますが、ときどき議員立法に変なのが混じっていてそのまま成立することがあるので、国会クラスタがよく注意しないといけません。生殖補助医療で生まれた当事者の方が、既に41歳(以上)になっておられるということを私は知らなかったので、ちょっとこれから勉強します。

●明日の予定

 上述の衆・法務委。そして、参・災害特では、義援金差し押さえの法案が可決される公算。参議院本会議は法律成立ラッシュとなりますので、NHKの昼のニュースや、時事通信の速報に注目しましょう。

【閣議 きょう】

 開かれました。

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