恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

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茶倉譲二 続編第九話~その5

2015-12-13 07:03:30 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
 

☆☆☆☆☆

茶倉譲二 続編第九話~その5

〈譲二〉

そして…また店の戸が開いた。

カラカラ~ン♪

現れたのは兄貴だった。


譲二「なんで…」

驚く俺に、兄貴はいつものごとくつっけんどんに言った。


紅一「言っておくが、お前のために来たんじゃない」

そして百花ちゃんの方を見ながら、「彼女に招待されたからだ」という。


百花「ごめんなさい…どうしても、紅一さんに来てほしくて」

紅一「隅の席へ案内してもらってもいいだろうか?」

百花「はい。こちらへどうぞ」

紅一「コーヒーを」

譲二「…ああ」


驚きが隠せないまま厨房に入り、コーヒーを淹れはじめた。


(とびきりの美味しいコーヒーを淹れないとな…。そうだ!)



俺は急いでサンドイッチも作るとコーヒーと一緒に運んでいった。


譲二「お待たせ」

紅一「…なんでサンドイッチまで」

譲二「うちの看板メニューなんだよ」

紅一「サンドイッチが?」


俺は黙って頷いた。

コーヒーもそうだけど、クロフネ最後の日の今日、兄貴にはクロフネの看板メニューをじっくり味わってもらいたかった。

俺が道楽でクロフネをやってたわけじゃないってこと、できればわかって欲しい。


後ろではみんながバタバタしている。

入ったオーダーを「俺が作る」と一護が言ってくれたのが聞こえた。


本当は兄貴を置いて厨房に入るべきなのだろうが、今は兄貴の感想が聞きたかった。


兄貴は黙ってサンドイッチを一口齧り、コーヒーを飲んだ。


後ろでは相変わらず、みんなの声が聞こえる。

兄貴がポツリ、と言った。


紅一「…ずいぶんと若くて賑やかだな」

譲二「え?」


百花が一生懸命、普段はもう少し静かで落ち着いてるとフォローしてくれる。

今日は最後の日だから賑やかなのだと…。


紅一「ああ…何度か来たから、普段の雰囲気も知っているが」

紅一「最後だから来てくれるというのは、この店が愛されている証拠だ」

百花「え?」

紅一「ここは…良い店だな」




そうつぶやくと、また黙々とサンドイッチを食べ、コーヒーを飲んだ。


譲二「兄貴…」


俺は兄貴の言葉が無性に嬉しかった。

こんなふうに兄貴に褒められたのは子供の頃以来かもしれない。

そうだ…。

俺は昔から兄貴に褒めてもらいたくて、色々と頑張ってきたんだよな…。

その気持ちを久しぶりに思い出した。


その6へつづく