ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

「街角に帽子を持って立ち、

2008年05月13日 21時51分46秒 | Weblog
使わなかった数分があったら、お恵みくださいと通行人に頼もうかと思っとるよ」

 死に急ぐ若者たちのニュースに接するたびに思い起こすベレンソンの言葉。イタリアの山荘で隠遁生活をしながら94歳で亡くなるそのときまで日記を書き続けた美術史家バーナード・ベレンソンが直前に訪ねた愛弟子ケネス・クラークに語ったとされる言葉である。

 おじの葬儀を終えて、帰ってきて、改めてその言葉を噛みしめた。

 お茶摘みが終わり、まばゆいばかりの新緑が村の畑を包んでいる。桃の袋がけが終わり、受粉が終わったキウイの摘果、葡萄の芽かきと巻きひげ取りが続く。みかんも白い花がもうしばらくすると開くだろう。

 信州伊那谷に暮らす詩人で作家で墨彩画家の加島祥造の詩集『求めない』(小学館)をぱらぱらとめくる。

「求めない――
すると
いまじゅうぶんに持っていると気づく」

「求めない――
すると
それでも案外
生きてゆけると知る」

「求めない――
すると
自分の好きなことができるようになる」

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