株式新聞 2020/3/5 8:27配信
新型コロナウイルスに対応し、日本企業の間で治療薬や検査機器などの開発が加速しつつある。既存製品の活用も含め、感染拡大による被害を抑え込む動きが強まっている。
武田薬品工業は4日に、新型コロナウイルスによる肺炎から回復した患者の血液から得た抗体を使い、治療薬を開発していることを明らかにした。治験を経て9~18か月で実用化が見込まれるという。
同ウイルスの治療薬はまだ存在しない。武田薬は昨年に買収したアイルランドの製薬大手シャイアーの持つ血液由来の医薬品技術を応用するとみられる。武田薬の4日のADR(米国預託証券)は円換算値で前日比5.4%値上がりし、PTS(私設市場)でも人気化している。
新型コロナウイルスの感染者に対しては、これまで富士フイルムホールディングスが開発したインフルエンザ治療薬「アビガン」や、エイズウイルス(HIV)向けの「カレトラ」、さらには米製薬会社ギリアド・サイエンシズのエボラ出血熱向け抗ウイルス薬「レムデシビル」などが試験的に投与されている。また、帝人の子会社の帝人ファーマの手掛ける喘息(ぜんそく)治療薬「シクレソニド」で症状が改善したという報告もある。
一方、重篤な新型肺炎の患者が、「体外式膜型人工肺(ECMO)」と呼ばれる人工の肺によって回復した例もあるようだ。NHKの報道によれば、日本全国で少なくとも15人の新型コロナウイルスの感染者がECMOを使って生存しているという。人工肺の関連銘柄としてはテルモが有力だ。
検査体制の拡充が喫緊の課題となる中、島津製作所は4日に、同ウイルスの感染有無を1時間で調べられるキットの開発に着手したと発表。今月中の提供を目指すもよう。核酸(RNA)の抽出工程を省くことで検査時間を短縮化した点が特徴。SMBC日興証券はこれを受けたリポートで、「同社の医用、計測機器の技術力の高さを示すものであり、ポジティブ」と指摘している。
このほか、東ソーも直近、RNAを増幅検出する「TRC法」を用いた新型コロナウイルス検出試薬の開発を開始した。また、ノーリツ鋼機傘下で遠隔画像診断サービスのパイオニア的存在のドクターネットは、同ウイルスの感染を、画像情報を基に判定する技術の実証実験を中国のAI(人工知能)企業と組んで始めると伝わった。