ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

国立公園で再生エネ発電促進 環境相、規制緩和の方針

2020年10月28日 10時24分03秒 | Weblog

来年1月に召集する通常国会に関連法案を提出

(2020/10/28 1:00 日本経済新聞 電子版)

 

 小泉進次郎環境相は国立公園内で再生可能エネルギーの発電所の設置を促す規制緩和をすると表明した。公園内は地熱や太陽光、風力を利用しやすいためだ。温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする新たな政府目標に向けて再生エネを増やす。26日の日本経済新聞のインタビューで語った。

 年内に環境省がつくる脱炭素社会に向けた政策集に盛り込み、来年1月に召集する通常国会に関連法案を提出する。

 全国34の国立公園の敷地の多くは発電所の新設を制限している。一部で認めるが、資源エネルギー庁の報告書などは規制で整備できない場合があると指摘していた。小泉氏は「いい案件があっても保護一辺倒で活用が進まない例もあり得る。保護と利活用の両立へ発想を転換する」と話した。

 50年までに排出量の実質ゼロを宣言した自治体に再生エネの導入を補助金で支援する。太陽光発電を使う道路灯などのインフラ投資を後押しする。50年までの実質ゼロは既に160超の自治体が宣言済みだ。小泉氏は「国より先に宣言した自治体の再エネ導入を加速する」と強調した。

 電力消費が多いデータセンターに関しては電力を再生エネで賄う場合に整備費用を補助する。北海道石狩市では、原則として再エネで稼働する施設を民間企業が建設中だ。小泉氏は「他の地域にも広げていく」と述べた。

 電気自動車(EV)の普及を巡っては「物流や配送の分野での導入を支援したい」と方針を示した。物流企業などを念頭に、バッテリー交換式の二輪車や四輪車を購入したときの補助を拡充する。

 EVは運転しなくても蓄電池としての役割を果たす。小泉氏は「EVは『動く蓄電池』だ。社会インフラとして後押しする」と説明した。普及のため災害時は緊急電源に使えると訴えていく。

 菅義偉首相が50年までの排出量の実質ゼロ目標を唱えたことに関しては「(自分の)働きかけが首相の決断という形で実って素直にうれしい。成長戦略の柱として脱炭素社会への移行を掲げるのは歴史的な転換点だ」と指摘した。

 小泉氏は「脱炭素社会への移行は無関係な人はいない。再生エネを使っていないだけでグローバルのサプライチェーンから排除される可能性すらある」とも明言した。中小企業などでも対応が必要になると呼びかけた。

「50年までに実質ゼロ」にあわせ、これまで掲げていた「30年度までに13年度比で排出量26%削減」の目標も見直す。30年目標はパリ協定に基づいて政府が国連に提出する。今年は見直し年だったが日本は据え置きを決めて批判を受けた。

 小泉氏は来年11月に英国で開く第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)までに削減目標を再設定すると表明した。


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欧州エアバスは水素を燃料にした飛行機の事業化計画を公表

2020年10月28日 07時57分39秒 | Weblog

脱炭素へ大競争時代 中国は水素奨励、欧州は新税検討 

(2020/10/27 1:00 日本経済新聞 電子版)

 菅義偉首相が26日表明した温暖化ガス排出を「実質ゼロ」にする目標に関し、具体的な計画づくりで先行するのは欧州連合(EU)と中国だ。再生可能エネルギーや省エネの拡大に加え、水素社会の実現がカギとみる。官民挙げての技術開発競争が激化してきた。

 国際エネルギー機関(IEA)は10月に公表した報告書で、2050年に世界の排出を実質ゼロにするため30年までに必要な道筋を示した。

 (1)二酸化炭素(CO2)を10年比45%減

 (2)電力部門からの排出を19年から60%減

 (3)電力供給に占める再生エネの割合を19年の27%から60%に上げる 

 (4)30年の乗用車販売の半分以上を電気自動車(EV)に――。

いずれも容易な内容ではない。

 IEAは個人の行動を変えることも提言した。

 (1)労働者の2割が週3回以上在宅勤務

 (2)運転速度を時速7キロメートル遅く

 (3)冷暖房の設定を3度弱める

 (4)3キロメートル以内の車移動を自転車か徒歩に変更

――などを推奨した。

 EUは50年までの「実質ゼロ」を掲げる。30年までに1990年比で40%減らすとの目標も引き上げ、少なくとも55%減らす案を議論する。30年までは再生エネや省エネなどの普及が主だが、30年以降は新技術に期待する。その中心が水素だ。

「商用航空機分野でこれは歴史的な瞬間だ」。欧州エアバスのフォーリ最高経営責任者(CEO)は胸を張る。9月、水素を燃料とする航空機を35年までに事業化すると発表した。航空機は世界のCO2の約2%を排出しており、水素燃料の航空機が実現すれば排出ゼロに近づく。

 EUは7月に「欧州クリーン水素連合」を創設、官民で研究開発やインフラ整備を進める。EUのティメルマンス上級副委員長は水素を「新エネルギー界のロックスターだ」と呼ぶ。EUは50年の世界のエネルギー需要の24%を水素が担う可能性があるとみる。

 水素などの新技術にはコストがかかり、当面は欧州企業が競争力で不利になる恐れがある。環境規制の緩い国から安価な製品が欧州に流入する懸念があるが、それを防ぐためにEUが検討するのが「国境炭素税」だ。

環境対策が十分でない国からの輸入品に事実上の関税をかける内容だ。欧州企業が抱く高い排出減目標への不安に応える狙いがあり、EUは公平な競争条件の確保に必要として、遅くとも23年までに導入する。

「60年までにCO2排出量を実質ゼロにする」。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は9月の国連演説で強調した。努力目標とはいえ、踏み込んだ目標設定に他国の政府関係者は驚いた。

 中国はCO2の排出量で世界の3割弱を占める最大の排出国だが、再生エネ導入にも熱心だ。中国はEVの世界最大の市場で、IEAによると19年の販売台数は世界全体の54%だった。中国の太陽光の発電電力量は18年時点で世界の32%と、日本のシェアの3倍近い。

 26日開幕した中国共産党の重要会議、中央委員会第5回全体会議(5中全会)で決める第14次5カ年計画(21~25年)では、非化石燃料の1次エネルギーに占める消費比率を従来目標の15%から18%程度に引き上げるとの見方がある。

 具体策として、再生エネの「利用実績」を取引できる市場をつくる。温暖化ガスの排出量取引に似た仕組みだ。中央政府が決めた再生エネの利用目標を達成できない電力小売事業者らに、目標を達成した企業から「利用実績」を買い取らせる。

 水素社会の実現も急ぐ。中国政府は9月、燃料電池車(FCV)の販売補助金制度を撤廃し、中核技術の開発企業に奨励金を与える制度を導入。FCVは技術的な難度が高く、当面は技術開発に対して直接財政支援する必要があると判断した。

 20年9月、北京市は新たに「北京大興国際水素エネルギーモデル地区」を設けた。水素エネルギーのインフラを整備し、中核技術を持つメーカーの技術力を高める。

 日本は計画をどう実現するのか。まず再生エネの普及の制約となっていた送電網を増強する。出力が不安定という再生エネの欠点を補うため、大容量の蓄電池の量産体制を整える財政支援などにも取り組む見通しだ。

30年までに洋上風力発電を全国に整備し、原発10基分にあたる1000万キロワット分の発電容量を確保する計画も立てた。大量のCO2を出す石炭火力は事業者に達成すべき発電効率の目標を課すなど、非効率な設備の削減を促す措置を検討する。

 18年度に発電量の6%にすぎなかった原子力発電所について、梶山弘志経済産業相は「今後10年間、再稼働に全精力を注ぐ」との方針を示す。ただ再稼働自体のハードルが高いほか、新増設がなければ30年時点の原発の電源構成比率は最大15%程度にとどまる見通し。(ブリュッセル=竹内康雄、北京=川手伊織)

 

■再生エネ・蓄電池・CO2回収、次世代技術カギに

 優れた省エネや電池の技術で環境先進国といわれてきた日本だが、中国や欧州の飛躍でその地位が大きく揺らぐ。世界が「温暖化ガス排出ゼロ」を競うなか、日本の将来は技術革新を起こせるかにかかっている。

「脱炭素社会」で競争力の源泉となるのが、再生可能エネルギーと蓄電池技術だ。革新的なイノベーションを期待できる技術の芽生えは既にある。いかに育てるかだ。

 再生エネのなかでも、無尽蔵の太陽光を電力に変える太陽電池の進化は欠かせない。屋根に載せる一般の太陽電池は光を電気に変える効率は足踏みを続ける。だが専門家は、限界を超える太陽電池の実現は可能とみる。

 2019年秋、文部科学省の科学技術・学術政策研究所が専門家への調査などをもとに予測調査をまとめた。36年に変換効率が50%を超える太陽電池が実用化できると分析した。新しい太陽電池の開発は急速に進んでいる。「ペロブスカイト型」と呼び、低コストで薄く作れる。太陽電池を取りつけにくかった建物の壁面や曲面を覆い、太陽電池の設置面積を飛躍的に広げる可能性を秘める。

 再生エネの普及を支えるのが蓄電池だ。電気自動車(EV)の性能に例えると、今は1回の充電で様々な工夫を凝らして500キロメートルを超えて走る車種がようやく出始めたにすぎない。30年ごろの実用化が待たれる次世代蓄電池に求められるのは、1回の充電で2倍以上にあたる1千キロメートル超の走行を可能とする性能だ。

 再生エネの太陽光や風力発電を長らく使いこなせていないのは、気象条件によって発電量が変動し、停電などのトラブルを恐れるためだ。大容量の蓄電池があれば、余った電気を蓄え、必要なときに使うしくみが整う。火力発電所に頼ってきた世界が一変する。

 蓄電池の進化で、EVはより長い距離を走れる。トラックなどの物流も電化が進み、脱炭素が可能となる。こうした蓄電池や再生エネの技術は互いに連携して実用化を進めることが不可欠だ。

 廃棄物の問題はあるが、原子力発電も温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)を出さない。多様な電源を求めるなら、40年代には安全な小型原子炉の実用化が必要になる。次世代原子力技術でも欧米中は競う。安全性を高めたとされる核融合発電は50年代に実用化を目指す。欧日中などはフランスで共同開発する。

 CO2を回収する技術も総動員すべきだろう。世界の企業の取り組みは進み、30年代にはCO2を大気中から取り出し、化学原料などに再利用することが当たり前になっているかもしれない。

 地球温暖化が産業界にもたらす脅威の一つは、たった一つの技術革新で、これまでの「勝ち組」と「負け組」の構図が入れ替わることだ。日本はこれまで再エネ・省エネ技術で世界をリードしてきた。脱炭素社会の進展とともにあっという間に中国や欧州に市場を奪われた。50年ゼロを規制や負担と捉えずに好機としなければ日本の環境先進国としての復権はない。(気候変動エディター 塙和也)


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中国、2035年全て環境車に 通常のガソリン車は全廃 

2020年10月28日 07時15分34秒 | Weblog

中国「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ」を発表

(2020/10/27 19:30 日本経済新聞 電子版)


 中国政府は2035年をめどに新車販売のすべてを環境対応車にする方向で検討する。50%を電気自動車(EV)を柱とする新エネルギー車とし、残りの50%を占めるガソリン車はすべてハイブリッド車(HV)にする。世界最大の中国市場の方針転換は、世界の自動車大手にも対応を迫る。
 中国の自動車専門家組織「中国自動車エンジニア学会」が「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」を27日発表した。工業情報化省の指導を受けて作成しており、中国の自動車政策はこのロードマップに基づいて実施される見通しだ。
 EVを中心とする新エネ車の比率を高める。19年の新車販売に占める比率は5%だったが、ロードマップでは25年に20%前後、30年に40%前後、35年に50%超まで高める。新エネ車の95%以上はEVとする。
 残りのガソリン車などは、すべて省エネ車のHVに切り替える。HVの比率を25年にガソリン車などの50%、30年に75%、35年に100%に高め、HVではない従来型のガソリン車などは製造・販売を停止する方針だ。


 習近平(シー・ジンピン)国家主席は9月、60年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする目標を表明した。排出量世界1位の中国が脱炭素社会に移行するにはEVなどの爆発的普及が不可欠とみて、通常のガソリン車を全廃する大胆な方針転換を図る。
 自動車の「脱ガソリン」は欧州が先行する。英国がガソリン車などの新規販売を35年に禁止すると表明し、フランスも40年までに同様の規制を設ける方針。9月には米カリフォルニア州が35年までにガソリン車の販売禁止の方針を表明した。
 日本でHVやEVなどが販売台数に占める割合は19年に39.2%。政府は30年に50~70%にする目標だが、中国や欧州などに比べ見劣りする。
 新車販売台数で世界最大の中国市場が、世界の自動車大手の戦略に影響を与えるのは確実だ。トヨタ自動車は9月の北京国際自動車ショーで、中国のHV累計販売台数が100万台を超えたと発表した。ホンダを含めHVに強い日系メーカーに有利との見方は多い。中国国有の重慶長安汽車と北京汽車集団は25年までのガソリン車などの製造・販売停止を発表した。
 米中対立の先鋭化や国際物流の停滞にも備える。35年には部品などを海外に依存しない中国独自のサプライチェーンを構築する。販売だけでなく技術でも世界をリードする「自動車強国」への転換をめざす。
 自動運転分野の開発を進める方針も示した。30年に自動運転技術を高速道路や限定地域で実現。35年に物流などを組み合わせた高度な自動運転技術を各地で実用化する。
 燃料電池車(FCV)に力を入れる方針も盛り込んだ。25年に保有台数10万台、35年には100万台にする。当面はバスなどでの利用拡大をめざす。


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