「北の山・じろう」日記

内容は主に時事問題。時々株式投資関係の記事も交じります。

ロシアの国防相人事と国防省改革の裏側<2024.05.24

2024-05-25 20:02:03 | ロシアと周辺国

今回のプーチン政権の人事のうち国防相人事は、驚きがありました。
戦争の最中に戦争で一番重要な国防省のトップである、前ジョイグ国防相を移動(更迭)することは、普通考えられません。
しかしゲラシモフ参謀総長は留任となり、替える考えはないことをプーチン氏は明言しています。ただし、いつまでも・とは言っていません。

今回新国防相に任命されたアンドレイ・ベロウソフ氏は、経済担当の第1副首相からの昇格です。
ロシアの幹部では国防省のポストは、No4です。
アンドレイ・ベロウソフ氏は、大幹部に昇格したことになります。
第1副首相時代は、兵器用ドローン機開発の政府責任者だったと言うことで、戦争への貢献度は大きいと言えます。
軍の経験がないことは不思議ではなく、前国防相のジョイグ氏も軍は未経験での国防相登用でした。
軍の経験ではなく忠誠心と能力を基準にするのが、プーチン式です。

ジョイグ氏が国防相としての能力に足りなかったのは、戦争開始後のロシア軍のドタバタぶりと弱体ぶりを見れば明らかです。その意味でゲラシモフ参謀総長も同じですが、こちらは取り敢えず留任しました。

アンドレイ・ベロウソフは国防相就任にあたり、ごく大雑把に・・・
「一般予算と国防予算との効率的両立や兵器増産、さらに兵士の待遇改善などを掲げる」

戦争の長期化が予想される中で、予算の効率化と適正配分は避けて通れません。経済専門家のアンドレイ・ベロウソフ氏が登用された一番の理由だと思います。
それ以前からプーチン氏の経済顧問として能力を発揮し評価されたのでしょう。
もう一つの要素は、プーチン氏への忠誠心です。
大統領の家族とも親しく、プーチン氏の次女カテリーナ・チホノワ氏との近い関係であるとされています。

まだあります。
国防相交代の前に・・・
ロシアのチムル・イワノフ国防次官、収賄容疑で拘束
2024.04.24 Wed posted at 20:30 JST
https://www.cnn.co.jp/world/35218213.html

超ド級の爆弾がさく裂しました。
ロシアの国防省の次官は5人くらいいて業務を分担しています。その後・・・

ロシア国防省人事担当幹部、収賄容疑で拘束 高官2人目
By ロイター編集
2024年5月14日午後 7:58 GMT+98時間前更新
https://jp.reuters.com/world/ukraine/UGPCPRECT5IGJOJWUDX2KZGQAI-2024-05-14/
「ロシアの連邦捜査委員会は14日、国防省人事総局長のユーリー・クズネツォフ中将を収賄容疑で拘束」

この他にも移動した次官もいて、ジョイグ時代の次官は一掃されたと思います。

予算の効果的な使用のためには、腐敗や汚職を排除しなければなりません。
西側の観測によるとロシアの国防関連予算の20%~40%は消えているのではないか❓と言われる「白蟻」ぶりです。
国防相とその次の次官を全部飛ばせば❓
「腐敗や汚職は、もうダメ!」
と宣言したのに等しいと思います。
これだけで使える国防予算が、20%~40%増えることになります。

更には、ここにワグネル事件も関係してきます。
ワグネル事件は、簡単に言うと国防省・ロシア軍内部の権力闘争です。
主流派がジョイグ&ゲラシモフ。
反主流派がプリゴジンとその支持者。
その支持者については、はっきり分かりません。

ワグネル事件については大きな疑問があります。
あれだけの大部隊が移動しているのに、国境警備を始めとして主に南部軍管区では、ロシア軍も警察も治安組織も全く抵抗しませんでした。ワグネルがフリーパスだからごく短時間でロシア軍の施設を掌握し、モスクワへの進撃が可能でした。
南部軍管区の司令部では、プリゴジンと国防省次官が1人、南部軍管区の将軍が1人話し合っているのが確認されています。反乱軍の首謀者のプリゴジンと、そんなのんびりしていていいのか❓
これらを考え合わせると、ロシア政府の相当な大幹部が指示を出していたとしか思えません。

共同通信ロシア・東欧ファイル編集長の吉田 成之氏の書いた記事によると、この大幹部は、当時の政権のNo2であったニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記であったとしています。

『プーチン政権に激震!国防相はなぜ解任されたのか
12年間の盟友をクビにしたプーチンの本音は』
https://toyokeizai.net/articles/-/754863

※ただしこの筆者は、この記事が参考になるだけで基本的には、プロパガンダに沿った記事を書いています。全部が正しいとは思わないでください。この記事の内容の一部が参考になるので取り上げただけです。

当時No2であったニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記がプリゴジンと何らかの関係があったとすると、大体辻褄が合います。
国防省&ロシア軍の反主流派にもかなりの同調予備軍がいたと思われます。
一番、疑わしいのはスロビキン将軍です。
しかし、ワグネル蜂起後、映像で帰順を呼びかけました。
これでワグネルの反乱は、不発に終わったのだろうと思います。
プリゴジンの蜂起に同調する大きな部隊に命令を出せる指揮官は、いませんでした。
もし、同調者がいたならロシアは内戦状態に陥ったと思います。

そして、どうもニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記は反乱の兆候をプーチン氏に伝えず見過ごし、反乱収束に向け一切動かなかったとの説もあります。
※なぜなら、アメリカすらワグネルの部隊移動を探知していました。ロシア国内でその動きを見落とすことは、ありえません。敢えて見過ごしたとしか思えません。暴発させて、その後どうなるかの問題だったように見えます。

ニコライ・パトルシェフは、今回の人事で閑職の大統領補佐官に追放されました。プーチン政権から事実上、排除されました。

そしてジョイグ氏も12年も国防相の地位にあります。
ゲラシモフ参謀総長と一心同体のような関係ですからロシア軍に対する影響力が大きくなりすぎました。
今、戦時下で軍の権力は大きいです。
プーチン追い落としに動くことは、可能です。

このような事情が様々絡み合い、ジョイグ派閥から権力を奪ったのが、今回の国防相人事のようです。
やりそこなうとジョイグ氏の反逆まで考えられますから細心の注意を払って人事を行ったようです。
これを考えるとジョイグ氏も事実上、プーチン政権から追放でしょうね❓
今回就任した安全保障会議書記のポストは、双六で上がった人用の名誉職的な部分もあるそうです。
やはり、上り!のドミートリー・メドヴェージェフ前大統領が、副議長です。

こう見てくるとこれまでのプーチン政権の大幹部2人が事実上追放され、アンドレイ・ベロウソフ氏が大幹部の仲間入りを果たしたところまでは、分かります。
他にもいるのかどうかは、表に出てくる人事では不明です。

少なくともロシア政府では、大幹部が2人事実上の追放を受けましたし、若い有能なテクノラートが重要ポストに昇格しています。

これはプーチン氏が権力を固めたとみるのは、視野が狭すぎますし敵を侮る典型的なパターンです。西側は、それが大好きですね❓

ロシアの政治機構が安定してきて本来のあるべき政治の姿を追求し始めたと見るべきです。
プーチン氏は有能であり、ロシア政府の閣僚も上級官僚も有能です。
だから、西側のロシア潰しは失敗しつつあり、経済封鎖でロシアの政変を誘発する試みも失敗しました。

西側政府の最近の欠点は、プロパガンダを叫び、敵を侮り軽視する部分にあります。
見ていると中国政府やロシア政府の方が、余程ましなことをしています。

1回、東西冷戦で西側が完全勝利したのが、そのような風潮を生みだしたのだろうと思います。
東西冷戦の時代であれば、あり得ないようなミスを西側政府は連発し、それがミスだとすら気が付かないようです。

ウクライナ政府と同じで、自分たちのミスは絶対に認めずひたすら失敗の原因を自分以外に押し付けます。
こんな調子で西側が、中国やロシアに競り勝つことは不可能だと思います。
旧ソ連時代のソ連の悪かった部分が、そのまま西側に移動しているように見えます。
教条主義と非効率です。
共産主義を民主主義と置き換えれば、ほぼ同じです。

民主主義だって親玉が無能で茶坊主を集めれば、独裁主義と同じで、よりマシな独裁主義に劣ると言うことです。
「何でも民主主義・・・」の大きな欠陥です。
民主主義は正常に機能して役に立つのであって、機能しなければ「三文の値打ち」もないと言ことです。⇒衆愚政治=今の欧米の民主主義=日本も同じ。
アメリカの過去の傀儡政権を、見れば良く分かるでしょう❓
民主主義は適切に運用しなければ、すぐ劣化して腐敗し役に立たなくなります。今、西側はそんな状態にあります。


※関連記事目次
「中立の視点で見るウクライナ紛争」の目次⑤
https://blog.goo.ne.jp/kitanoyamajirou/e/e2c67e9b59ec09731a1b86a632f91b27



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