第一章 序 章
天台大師
天台の智者大師(ちしやだいし)は法華経(ほつけけう)を宗骨(しうこつ)として、支那天台宗(しなてんだいしう)を創唱(さうせう)せられた方で、五時八教(ごじはちけう)の教判(けうはん)を設けて如来一代教化(によらいいちだいけうげ)の真意は中道実相を説くに存すと徹見(てつけん)せられて、三諦圓融(さんだいゑんゆう)の哲理と三観十乗(さんがんじうぜう)の実践門とを組織せられた。著書に「法華玄義(ほつけげんぎ)」「法華文句(ほつげもんぐ)」があつて天台圓教の指南とせられ、また「摩訶止観(まかしかん)」十巻は一家観心(いちけかんじん)の精髄を示されたものであります。大師は隋(ずい)の開皇(かいこう)十七年春秋六十歳にて示寂(しじやく)されましたが、十一月廿四日はその御命日(ごめいにち)で現今天台会(げんこんてんだいえ)と称し、宗徒(しうと)は報恩(ほうおん)の法要(はふえう)を捧げることになつて居ります。