第一章 序 章
仏教は如来の開設に基く
さて流れを尋ね宗源(しうげん)を求めて一家法門の由来を眺めよう。そもそも仏教は大聖釈迦牟尼如来(たいせいしやかむにによらい)の自ら悟り得給うた真理であつて、その教旨は転迷開悟(てんめいかいご)即ち成仏の最高究境(さいこうきうけう)に達するを目的とする。如来の教化は菩提樹下(ぼだいじゆげ)に成道せられてから、沙羅双林(さらそうりん)の間に涅槃を示し給ふ迄、一代五十年、機に応じ法を説き病に随つて法薬(ほうやく)を与へ、あらゆる人々を教化誘導せんが為に、諸方(しよほう)に遊歴して説き給ふ。