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六器の名称は古来なく、いつごろからの名か不明である。火舎の左右に三個ずつおいて六個あるところからくるものであろうか。六器には火舎から、閼伽(あか)・塗香(ずこう)・華鬘(けまん)の順に盛って供養する。
『日本の美術 仏具 蔵田 蔵編 至文堂』
閼伽(あか)とは、価値あるもので、水、また閼伽水・閼伽香水・功徳水とも。(1)インドの習俗では客を歓待するに水を供する風習を密教に取り入れて、六種供養の一とし、前供養には洗足水の意、後供養は漱口水の意。閼伽井から汲んだ清浄水に香を煮沸した妙華、または香末を加えた香花水を修法に用いる。閼伽桶に入れて閼伽棚に置き、供養には六器の閼伽器に盛る。
塗香(ずこう)とは、インドでは招客を迎える際のエチケットとして暑熱の土地で体臭を消す為に用いて来たもの。密教の塗香には2種類の用法がある。(1)真言行者自身の身に縫っていわゆる五分法身を磨宝する塗香で、塗香器に入れた塗香を、作法に従って身体に縫って身体を浄めてから護身を結ぶもの。(2)本尊に供養する塗香で、大日経具縁品に説く六種供養(閼伽・塗香・華鬘・焼香・飯食・燈明)の一である。塗香の典拠は、修法の種類に応じて栴檀香(せんだんこう)・沈香(じんこう)・龍脳(りゅうのう)・伽羅(きゃら)・安息香・鬱金香(うつこんこう)などを材料にして、粉末にしたものを用いる。但し、わが国では、どれかの香木を粉末にした抹香(まっこう)を普通に用いる。
華鬘(けまん)とは、花を糸に綴った鬘で、もとインドの風習で上下を問わず装身具にし、芳香のある生花を用いるが、比丘・比丘尼は身に着けられず、専ら室内の装飾に用いた。密教では、金剛界内四供の金剛鬘菩薩、金剛食天、胎蔵五供養の華鬘菩薩の三昧耶とする。今は生花ではなく、糸(組糸)・金属板などで作り、道場内の柱や長押に懸けて荘厳具として仏菩薩の供養に当てる。種子鬘は蓮華座に金剛鬘菩薩の種子を現わす。
『密教辞典 佐和隆研編 法蔵館』