きもブログ

 「いやどみ☆こ~せい」のブログ。
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タイム・トラベル

2007年07月25日 00時30分59秒 | Weblog
 父は相変わらず行方不明だ。警察からの連絡がないかぎり、彼は「生きて」いる。そう思わないと、日常生活がうまく送れない。というより、いつ「喪中」になるかわからないような不安な日々を、毎日全力で受け止めるほどの精神力が、俺にはない。だから頭の片隅に…そうだなぁ、消費税ぐらいの割合で、頭の隅っこに置きながらなんとなく生きている。だから残念なことに、100%のスッキリ具合で生きることができない。それは、生まれたときからできていないのかもしれない。まぁ、人生、誰だってそんな感じで生きているかな。
 「後日談」として、母が言ってきたことがある。五年ほど前、父が佐賀にひょっこりとやってきて、会いに来たらしい。別れた母にこっそりと。俺と会うのはさすがに怖かったんだろうか。最初そのことを聴いたときは、「へぇ、寂しくなって別れた妻に会いに来たのか」と思っていたが、考えが甘かった。用件は、「健康器具一つを買ってくれ」…と、「まとまった金を貸してくれ」の二つ。まぁ、冷静に考えたらそんなところだろう。もちろん母は「そんな金はない」とつっぱねた。まぁノコノコ会いに行った母もお人好しというかなんというか…。
 母曰く、数年ぶりに見た元夫はかなり太っていて、顔色が悪かったらしい。人の顔を見ずに延々と自分の話をするあたりは、全く変わっていなかったとか。でも、別れ際には、「コウセイに、大学合格おめでとう、と伝えといて」と話していたらしい。当時俺は27歳。「大学合格おめでとう」とは何事だ(笑)。もう卒業して就職もしていたというのに。…と、最初その話を聴いたときは笑ってしまったが、しばらくして母も俺も黙ってしまった。
 止まった時間。動いていなかった歯車。父はそれを戻す術を知らず、だからこそ、27歳になる息子に対するメッセージがそれだったのだ。彼が身勝手に選んだ道だから、情けをかけるつもりはない。ただ、父の気持ちがわからないでもなかった。
 彼ともし、再会する日が来たとしたら、その時の俺の感情は、「驚き」だろう。再会することに「切望」も「嫌悪」もない。だって「消費税率程度」にしなくちゃいけないから。だからこそ、会ったときは「驚き」だろう。俺も、父も、互いに十数年前の顔しか知らない。十数年前の出来事のみが真実である。それ以外の、市役所や警察や元友人の「うわさ話」によって形成された「父」は、リアリティに欠けた存在である。もし俺が会えば、まさしく浦島太郎か、タイム・トラベルの世界。その日がどんな形で訪れるかわからない。訪れないかもしれない。訪れなくてもいい。
 でも、「切望」も「嫌悪」もないけど、父が潜んでいる「頭の片隅」が、ちょっとだけ重くて、切ない。

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