未知の道。

第56回全国高等学校演劇大会。
前夜だ。

よく人は、「ありえない」、「予想外の」ことが起こった、と、慌てたり、嘆いたり、時には飛び跳ねたりする。
しかし日常というものは、そういう小さな「ありえない」出来事の積み重ねかもしれない。

「ありえない」と思っていたことが、「ありえること」となり、そしていつか人は、「あり得ること」ばかりになるのかな。


五年前、わけもわからずやってきた青森の全国大会。
高校演劇に関わる人間として衝撃的な、いや、今考えれば、「ありえないほど」衝撃的な出会いをいくつも体験した。

もっと遡れば、「ひとり1作品ねー」と、部活のノルマを消化するために書いた八年前のあの作品、いや、あの時何気なく首を縦にふったことが、その後のいくつもの「ありえない」人たちとの出会い、出来事の出発点だった。


時が経ち、断続する「ありえないこと」は、いつのまにか「ありえること」になる。

「感動」は、心が決めるものだから、繰り返される同じ出来事に同じだけの衝撃を覚えることはできない。

だけど、その時の感動した気持は忘れちゃいけないんだろな、って思う。


周りを見ると、「どうすれば」とか「何が何やら」という雰囲気をもったひとがたくさんいる。

いくつもの「ありえない」出来事を、無意識に待ち構えている人たちだ。

目の奥を見ると、どこかしらキラキラしている。

なんだか嬉しい。


この方々とつながりをもって、自分と同じく「感動する人たち」が一人でも多く増えてくれたら、と思う。



入学式。
体育祭。
修学旅行。
受験。
卒業式。

一生に一度しかない奇跡。
例え「毎度のこと」であっても、目をキラキラさせてなくちゃ、って思う。

いや、同じ瞬間は二度と訪れないのだから、厳密に言えば「新鮮でない」時間などないのだ。

だから、キラキラする権利は誰にでも、どんなときでも、ある。



全国の舞台をはじめて目にする、生徒。

今、眠れないやつらもいるんじゃないだろうか。

なんて思うと、俺も眠れない。



舞台も、
それを観ている彼女たちの横顔も、
楽しみだ。


そう。
それはもう、
明日なんだよな。