冬恒例の週末の鍋料理。鶏の豆乳鍋を作ってみた。無調整の豆乳をそのまま火にかけると、上に膜ができるが、それが湯葉。湯葉も食べたいし、鶏の柔らか鍋にもしたい。鶏の柔らか鍋にするためには、鶏を冷たい汁の状態から入れて沸騰後、30分、火を止めて寝かせる必要がある。そこで、考えた。湯葉は一人用の土鍋で作り、その間に大きな土鍋で、少し豆乳を減らした汁で鶏の柔らか鍋を作ることに。
出来立ての湯葉は、わさび醤油で味わう。一枚湯葉ができるのに一分くらいかかる。鍋を見つめる時間はちょっと楽しい。
ひとしきり湯葉を堪能した後、豆乳を大きな土鍋に加え、豆乳鍋に。味付けに、味噌を加えるのと最後にごま油をたらすのがポイント。風味とコクが増して豊かな味に。
そうそう、翌日ご飯を入れて作ったリゾットもおいしかったな。三つの味が楽しめる豆乳鍋。おすすめ!(ゆ)
「君影荘ができるまで」について少しずつ連載してみたいと思う。
第 1 回 思い描く理想の家 (その1)
いつか家を持ちたいと思っていた。古くなるほどに味わい深くなる家、季節の移ろいが感じられる庭。そう思うようになったのは、築40年の社宅に住んだことによるところが大きい。
その社宅は、23区内の駅から徒歩8分の場所にもかかわらず、自然の残る広い敷地内に贅沢な配置で建てられていた。建物と建物の間には桜が植えられ、その下にはたんぽぽやスミレが咲くのどかな空間が広がっていた。
建物は、古い団地の造りで、 六畳程のダイニングキッチンに六畳と四畳の和室。44㎡の小さな空間だった。私達は1階に住んだ。低い天井のため、外の光が部屋の中まで届かず、ダイニングキッチンは北側のひんやりとする暗がりの中にあった。木の格子にすり硝子をはめこんだ内窓がつけられ、その窓には手でねじ回しする鍵がついていた。どことなく幼い頃過ごした家に似ていた。そのせいか、古くて狭い社宅だったが、私の心は落ち着いた。ここは、スタイリッシュな家具は似合わない。そう感じ、シンプルなアンティークのダイニングテーブルとチェアを手に入れた。テーブルの上の真鍮とすりガラスのスタンドを灯すと、レトロなカフェのような居心地のいい空間が生まれた。
私たち夫婦も友達もこの雰囲気がとても気に入った。本来の自分のスピードとかけ離れた目まぐるしい毎日の中で、ほっとできる場所を求めていたからかもしれない。長い時間を経た家や家具は、どっしりとした落ち着きがあり、時の流れるスピードをゆるめてくれた。
庭に面した畳の部屋に寝転ぶと、桜の木がのぞめた。春には、つぼみが開いていく様を寝ながら楽しんだ。もちろん外に出れば、満開の桜も独り占めできた。
第2回につづく。 (ゆ)
写真: 庭に落ちてきた桜の花を拾い集めたもの。