一階の人は、自分達の部屋の前に広がる中庭の手入れをする取り決めになっていた。中庭には野芝が植えられているが、春すぎると、一斉に雑草が伸びだし、あっという間に膝丈をこえる草むらになってしまう。雑草は刈っても、抜いても、すぐに生えてきた。追いかけっこの毎日だった。
どうせ庭仕事をするなら、もっと楽しめる方がいい。部屋に一番近い側の一画の雑草を根こそぎ抜き、石をとり、耕し、草花を植えられるようにした。幸い土が非常に良く、季節ごとに見事な花を咲かせてくれた。
もう一画には、大きな軽石を積み上げロックガーデンを作った。ここでは、蒸し暑い夏が苦手な山野草も元気に育った。
マンションのベランダで、鉢植えを育てるのとは別の新たな世界が広がった。季節になると芽を出し、花を咲かせ、そして枯れる。こちらが手をかけなくても自らの力でそれを繰り返す草花達は健気で、見ているだけで元気づけられた。そして、奔放に生長する植物達は、こちらの想像を超えた造形、配色を生み出し、見事な景色を作ってくれた。
こんな生活は、私に新たな価値観を教えてくれた。
古くなるほどに味わい深くなるものがあり、それは多くのやすらぎを与えてくれる。
大地につながる庭は、発見と驚きの連続で、それは多くの喜びを与えてくれる。(ゆ)