仮に落ちたとしよう。原爆や化学兵器を搭載していればむろん、そうでなくとも、人口密集地に着弾すれば死傷者が出る。
その場合、首相は国民保護法に基づき「武力攻撃事態」と認定して自衛隊に防衛出動を下命、自衛権発動を国連に伝える。
だが、専守防衛の自衛隊は報復できない。
米軍がシリア攻撃で使った巡航ミサイル「トマホーク」(最長射程2500キロ。地形を読み取り、無人攻撃)を、自衛隊の護衛艦は持っていない。
爆弾はある。F15戦闘機に積んで北朝鮮を空爆できぬことはないが、そんな訓練はしていない。
北朝鮮は、侵入機を撃ち落とすミサイルを3400発保有、うち1700発を実戦配備している、とされる。「そんなところへ突っ込むのは特攻隊、決死隊であり、パイロットが引き受けるはずがない」(元自衛隊幹部)のである。
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そこで米軍だ。
だけど、米軍は、ロサンジェルスを犠牲にして東京を守らないでしょ、と。
北朝鮮が核開発、ICBM開発している意味はそこなのよ、ということがわかっているのかどうか。
平和国家・日本といえども自衛を放棄する選択肢はない。他方、世界は報復の連鎖に疲れている。問われているのは報復能力だけではない。平和的変革を促す知恵が必要だろう。
でも、想定が向こうから撃ってきた場合でしょ?
そんなとき、知恵もへったくれもないでしょ。
あれだけ、巨額の軍事費を使っているアメリカがなぜ、北朝鮮を攻撃しないかーーー報復が怖いからでしょ?
甚大な打撃を与えて、報復できる能力があれば、戦争を回避できる、ということなのよ。
残念ながら、少なくとも、いまのところ、それがもっとも確実な平和維持方法。