さて、前回御紹介した「明治大正昭和建築写真聚覧」の中で、目下張りぼて化されて高層ビルを建てられている工事の最中にある三菱倉庫江戸橋倉庫の建築当時の写真が掲載されていたので、これだけは御紹介しておきたいと思った。前回は明治、大正編から紹介したが、昭和編にも馴染み深い建物が数多く収められている。ここしばらくの間で姿を消してしまったものがかなりあることに、複雑な気持になる。

この三菱倉庫江戸橋倉庫については、以前工事が始められた直後に書いたのだが、それ以前に日本橋川から撮影したカットがあったので、建築当時のものと合わせて見て頂きたい。このビルを張りぼて化してしまったことが良かったのだろうか。
昭和5年12月築三菱倉庫株式会社設計、竹中工務店施工 RC6階、一部SRC、塔屋、地下1 建築要覧15414 日本橋川に向いた側から、撮影されているというところが、この建物の由来を顕していて面白い。ビルの上部に突き出たフレームは、荷揚げ用のウインチが上部のレールに沿って移動するのだろうか。護岸も荷揚げ用に作られていることが分かるし、右側には屋根まで付けられている。これが本来のこのビルの姿だった。

現在の姿。

正面玄関は、日本橋郵便局の側にあって、この姿が正面になるはす。

これは工事開始以前に、日本橋川を行く舟から撮った写真。江戸橋越しに船の艦橋を模したと言われる塔屋が見えている。

川から見た三菱倉庫ビル。荷揚げ用のウインチのフレームも、屋根もなくなり、搬入口は埋められているが、往年の面影は感じられる。

優雅な形を描く、埋められた搬入口。

こちらは、証券取引所の写真に写り込んでいる三菱倉庫江戸橋倉庫。ちょうど反対側の上空からの撮影で、ビルの全体も良く分かる。手前にあるのが日証館である。このビルがほぼ原形を留めたままで今日まで残されてきたことが分かる。屋上の様子、塔屋なども見えている。手前側には、今では高速道路が出来ているが、この時には楓川(もみじがわ)が流れているのも分かる。水辺の巨船をイメージしていたことが感じられる。楓川があると、日本橋川にその一角だけが突き出しているかのようで、それだけで船のようにも感じられる。

高速道路のお陰で窮屈になっているが、ビルの右側面の様子も昔から変わっていない。

正面玄関の雰囲気も当時のままである。

現在の写真は工事が始まってからの撮影がほとんどなのだが、こうして見ると本当に勿体ない。ガラスと金属の安手の高層ビルを建てるくらいなら、荷揚げ用のウインチのフレームや設備なども復元して、護岸も改修して、日本橋川から東京の水辺を巡ることの出来るクルーズ船など就航させて、その基地として整備すれば、町も賑わうし、ビルも本来の姿に戻れたろうにと思う。外観はそのままに内部を使いやすくリフォームし、耐震補強なども行って有効活用すれば、日本橋の新しい名所として、ランドマークになり得た建物であっただけに、張りぼてになって高層ビルが建ってしまうのが惜しい。こういった長い歴史を町と共に作ってきた建物を活かすことが出来ないのが、日本という国の姿なのだと感じる。
そして、こういった貴重な写真をまとめた写真集は見ていて飽きない。やはり、手元に一冊欲しいと改めて思う。

この三菱倉庫江戸橋倉庫については、以前工事が始められた直後に書いたのだが、それ以前に日本橋川から撮影したカットがあったので、建築当時のものと合わせて見て頂きたい。このビルを張りぼて化してしまったことが良かったのだろうか。
昭和5年12月築三菱倉庫株式会社設計、竹中工務店施工 RC6階、一部SRC、塔屋、地下1 建築要覧15414 日本橋川に向いた側から、撮影されているというところが、この建物の由来を顕していて面白い。ビルの上部に突き出たフレームは、荷揚げ用のウインチが上部のレールに沿って移動するのだろうか。護岸も荷揚げ用に作られていることが分かるし、右側には屋根まで付けられている。これが本来のこのビルの姿だった。

現在の姿。

正面玄関は、日本橋郵便局の側にあって、この姿が正面になるはす。

これは工事開始以前に、日本橋川を行く舟から撮った写真。江戸橋越しに船の艦橋を模したと言われる塔屋が見えている。

川から見た三菱倉庫ビル。荷揚げ用のウインチのフレームも、屋根もなくなり、搬入口は埋められているが、往年の面影は感じられる。

優雅な形を描く、埋められた搬入口。

こちらは、証券取引所の写真に写り込んでいる三菱倉庫江戸橋倉庫。ちょうど反対側の上空からの撮影で、ビルの全体も良く分かる。手前にあるのが日証館である。このビルがほぼ原形を留めたままで今日まで残されてきたことが分かる。屋上の様子、塔屋なども見えている。手前側には、今では高速道路が出来ているが、この時には楓川(もみじがわ)が流れているのも分かる。水辺の巨船をイメージしていたことが感じられる。楓川があると、日本橋川にその一角だけが突き出しているかのようで、それだけで船のようにも感じられる。

高速道路のお陰で窮屈になっているが、ビルの右側面の様子も昔から変わっていない。

正面玄関の雰囲気も当時のままである。

現在の写真は工事が始まってからの撮影がほとんどなのだが、こうして見ると本当に勿体ない。ガラスと金属の安手の高層ビルを建てるくらいなら、荷揚げ用のウインチのフレームや設備なども復元して、護岸も改修して、日本橋川から東京の水辺を巡ることの出来るクルーズ船など就航させて、その基地として整備すれば、町も賑わうし、ビルも本来の姿に戻れたろうにと思う。外観はそのままに内部を使いやすくリフォームし、耐震補強なども行って有効活用すれば、日本橋の新しい名所として、ランドマークになり得た建物であっただけに、張りぼてになって高層ビルが建ってしまうのが惜しい。こういった長い歴史を町と共に作ってきた建物を活かすことが出来ないのが、日本という国の姿なのだと感じる。
そして、こういった貴重な写真をまとめた写真集は見ていて飽きない。やはり、手元に一冊欲しいと改めて思う。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます