
■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 米国にいち早く進出、美の世界で大きな活躍 3c20-5521
経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。
【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】は、皆様から寄せられたり、私が支援したり、見聞したりした企業の事例を紹介していますが、お陰様で、毎回拍手をいただいています。
また、あなたのクライアント・顧問先やお知り合いの会社で、ここで紹介したい企業・団体等がありましたら、是非ご連絡ください。
■ 米国にいち早く進出、美の世界で大きな活躍 3c20-5521
理容室や美容室に行くと、椅子に座らされ、その椅子がくるっと回転して鏡の前に自分の姿が映る。高さが調整されて、カットやパーマなどの施術が始まる。仕上げでは椅子がリクライニングされシェービングが施される。バーバー椅子と呼ばれるこの椅子は、米国で南北戦争が繰り広げられた1800年代後半に最初の特許が取得された。その後もバーバー椅子の進化は続き、マッサージ機能のあるものや、カットが終わるとシャンプー台が現れて、移動することなくシャンプーまでできるものなど、さまざまなものが登場している。
理美容業界にとってなくてはならない椅子で、現在世界市場トップに立つのが、T社(大阪市)だ。同社は1921年にY氏 が大阪の鋳物工場として創業した。1930年に米国製のリクライニング機能のある理容椅子に着目し、製造を始めた。1956年には、早くも米国に現地法人を設立して先行する米国メーカーに伍して市場を開拓していった。同社の米国進出は、日本企業の中でも4番目と早く、中小企業でありながら果敢に挑戦する姿勢は、注目を集めた。
そんな同社がまた世の中を驚かせたのが、1970年の大阪万博への出展だった。当時万博参加を表明していたのは、名だたる大企業ばかり。同社の当時の売上高は99億円で経常利益は2億5000万円。これに対して万博の出展費用は 2億5000万円(実際は4億円かかった)。当然周りからは心配や反対の声があがったが、「中小企業でもその気になればやれるところを見せたい」とY氏は押し切った。
パビリオン設計に建築家黒川紀章氏、コンパニオンのユニホームにはデザイナーのコシノジュンコ氏を起用するなど、新進気鋭の若手クリエイターに活躍の場を与えた。美をテーマにしたパビリオンは、開幕時には150万人の来場予想を立てていたが、最終的には350万人が訪れ大成功をおさめた。何より、全国の理容師・美容師に自分たちの仕事に対する誇りを与えたことは大きい。
【 コメント 】
「経営とは時代対応業」という私の先輩の言葉は、これまでもご紹介してきました。すなわち、「時代の潮流を読む」という観点で、T社の読みがあったわけです。先を読んで、果敢に挑戦する姿勢が、それに加わって、中小企業でも万博に出展できるまでになったのです。
万博に出展するという、その発想も、なかなか中小企業にはできないことでしょうが、それができる経営者のチャレンジ精神が、常に経営の根底にあるのでしょう。
ちなみに、同社の基本信条を紹介しておきます。
・お客様に喜びと感動を提供する
・常に新たな領域へ挑戦する
・日々改善・進化をし続ける
・努力とアイディア、スピードを是とする
・損得より善悪で判断する
「感動を提供する」というのが第一項にあります。多くの人が「感動を与える」と、上から目線的に表現するところを、「提供する」という表現に納めているところにY氏の人柄が感じられます。
一方で、この種の経営者の多くは、周囲の言うことに耳を貸さないのです。T社のY氏は、そのタイプのようには見えませんが、Y氏自身が自覚しませんと、思わぬところに落とし穴がありますので、注意が必要です。