トニー・ジャー主演作『マッハ!』や『トム・ヤム・クン!』、そして自身の監督作である『7人のマッハ!』で新しいアクション映画の“才能”として高い評価を受けている(私たちのようなボンクラ限定)パンナー・リットクライ。しかし、ここ最近のパンナー師匠関連作品はどうも「イマイチ」というか「一味足りない」というか何だか分からないけどそんな印象を受ける。パンナー師匠、一体どうしちゃったのよ?!
今回紹介するのは2006年末にタイで公開された(2007年中にはアメリカ公開の予定あり)『コン・ファイ・ビン』。主演は『7人のマッハ!』で注目されたパンナー師匠の秘蔵っ子であるダン・チューポン。内容はというと、幼い頃に胸に刺青のある男に両親を殺された主人公・チューポンが、推進力抜群の竹筒花火とムエタイを武器に両親の仇を探すというもの。そして何と言っても私のようなタイ・アクション映画ファン最大の売りはパンナー師匠がチューポンの仇である魔導拳士を演じていて、久々にアクションを見せてくれている事だ。
これだけの面白そうな要素が盛り込まれていながら、実際に完成された作品を鑑賞してみると「う~ん…」と思ってしまい、決してつまらない訳ではないのだが、胸を張って「面白かった、最高っ!」とも言えないのだ。
何故っ?!
最初に考えたのはパンナー師匠のアクションでのワイヤー使用の多さが幻滅した原因なのかな?なんて思っていたのだが、魔術を使う役であり、超自然的な動きを表現するにはやはりワイヤー使用は不可欠だろうという事でその考えはあっさりと×。90年代に低予算で同じようなアクション映画を撮っていたときは人間の動きだけで表現していたことを思うと、多少残念ではあるが。
敵のバリエーションを悪くないし(パンナー魔人を含め、凶悪な巨人などが登場して主人公をいろんな形で苦戦させる)、肝心のチューポンの変幻自在なアクションも決して劣っているわけでもない。どうして?ドウシテ?何故?なぜ?いろいろ考え、作品を何回も見直した結果「多分こうだからだろう」という答えが発生した。
作品中におけるアクションの見せ方がヘタなのだ。
開巻早々にチューポンが盗賊相手に立ち廻りをみせてくれるのだが、これが非常に長い!チューポンの見せれる動作をすべてこの場面で観客に見せてしまっているのだ。もうちょっと出し惜しみしてもバチは当たんねぇぞ!これじゃぁ後に控えているアクション場面も何となく「同じことの繰り返し」にしか感じられない。
派手な動作ももちろん大事だが、推理小説が最初から手の内を明かさないのと同じで、小出しで少しずつ見せていくのがベストの方法だと思う。
それに継続しているアクションの途中でカットが切り替わっちゃうのでとっても観辛い。普通にサラッと流す程度のアクションシーンならいいが結構な見せ場だったりするのでなおさらだ。こういう場面は1ショットで見たいのが普通でしょ?!
結局の所この作品、パンナー師匠はあくまでも出演しただけであってアクション演出には絡んでいないので(多少は口出ししてると思うが)、こういう事になってしまったようだ。アクション映画の見せ方の知らない者が、「見せ場繋げばいい画になるだろう」と、気張って撮ったアクション映画はこういう事が起こるのだ。せっかくのチューポンのアクロバチックな動きが台無しである。
まぁ、これはあくまでも個人的感想なので、今後この作品を目にされる方は尻込みをせず、タイ・アクション映画の現在進行形を堪能していただきたい。あれだけ不満点をつらつらと書いておきながら言うのもなんだけど、面白いっスよ、コレ。
ただし、『マッハ!』や『トム・ヤム・クン!』、それに『7人のマッハ!』を先に観てはダメだよ。それがボクとキミとの約束だ!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます