平成28年6月7日
小雨の降る中、聴講へ、武蔵小杉駅から徒歩12分の、講義会場へ向かった。このコースの開始時間は13時半であり、この時間帯は、昼食後の眠くなる時間である。そのことを講師は十分ご承知のようで、興味が湧かなければどうぞご随意にお休み下さいとのことであるが、話す内容は非常に興味深い。多くの講師は、立場上きわどい話を避けるのであるが、狼先生は、達観されているせいか、気持ちが良いほど切れ味が良い語り口で、チクリと刺す術をお持ちのようである。
今回のテーマは、前回の復習と、リスク管理であった。この分野は、在職当時、日常に経験した危機管理の神髄に触れるもので、さもありなんと納得のいく話が面白い。自分も当時のことを思い出しながら、現実の世界の中に、理解できない不思議な論理のすり替えを経験し、その理由を改めて気づかせてくれた。世の中、摩訶不思議なことが行われていて、専門分野は異なるが、同様な思いをされていることに共感を得た。
年齢からすると先生は一回り上のようにも思われるが、さほど年齢の開きはないのかもしれない。多くの共感の中で、お伝えしたかった点は、事務職の考え方と技術職の考え方の違いである。予算や、人事面で、現場を下に見る傾向や、命令一過、全てが回るという誤認識の管理社会、根拠のない確率の曖昧さ、定義と実行の相違、たてまえと本音、事なかれ主義による組織の身勝手さなど、現在にも通じる話で、結果としてみれば、無責任体制が蔓延してきていて、論理的な物事の理解の仕方は一般的ではないとの認識を確実にすることができた。
そもそも、単純明快では複雑な世の中を渡れないのであるが、データ蓄積による多方面の分析など、時間をかけることへの抵抗感や、深い洞察力よりも人気取りの表面的な流れが、イージーさを助長してきたようで、時間の流れが、止まることを嫌う傾向に見える。実はそうではない世界の重要性をご指摘されているといえるであろう。確実性、不確実性等の論理展開から、人類は進歩したはずなのに、東京都知事の疑惑など、立場が異なると共通認識や同じ土俵でないことが明らかとなり、にわかに基盤が崩れ去ることに直面する。
リスク管理についても何度か触れてきたが、起こることが予想できればその時点での対策を行わなければ、起こった後に後悔してもそれは無意味であることも教訓としていえることであろう。安全神話は騙されやすい。安全などどこにもないとの前提で対処しなければならないのであるが。かけた費用に比例するともいえ、タダでの安全など存在しないのかもしれない。