ブログ「かわやん」

森羅万象気の向くままに。

日曜新聞読書欄簡単レビュー

2009年03月22日 12時09分15秒 | Weblog
恒例の日曜新聞読書欄簡単レビューです。産経、奈良、朝日、毎日、日経の5紙から紹介します。春の便りは小雨からなのか、近畿地方は朝から小雨模様だったが、10時前には止んだ。小鳥のさえずりが聞こえる。本の紹介は生々しい日米関係をテーマとした作品から。

日米関係の本から紹介すると、古森義久『オバマ大統領と日本沈没』(ビジネス社、1680円)ー産経ーでは、オバマ大統領のリベラル性について警戒する保守派論陣からの対米関係の今後のあり方を問う本だ。閣僚人事で中道路線のようにみえるが、リベラル性がベースにあるとみる。筆者は現在のアメリカ経済の苦境は国有化しないと活路を見い出せない経済政策部分を抱えていると見るが、アメリカ通の著者はオバマの政策(グアンタモ収容所の閉鎖、国民皆保険政策、妊娠中絶を勧める国際団体への資金提供など)は「大きな政府」による「社会主義的変革」とリベラル性を批判する。さて読者はどう見るか。リベラル性を警戒することが日本の対米関係上マイナスなのか。評者は田久保忠衛。

 もう1つは山本尚利『情報と技術を管理され続ける日本』(ビジネス社、1575円)ー奈良ーだ。アメリカの国益は世界を支配している。金融不況以降も変わりない。日米関係の実相を解明し、日本の現状を説くこの本は防衛上の自立を求めているようだ。日本の累積対米債権は4兆円以上で、これにアメリカは黙っているはずがなく、対北朝鮮の脅威を利用して軍事防衛システムの売り込みを図る。これに日本も乗る。ミサイル防衛システム(MD)がそれだ。軍事上のライフサイエンスやバイオテクノロジーもアメリカが支配する。著者は見ずからの責任で自国を守るためにはアメリカの日本脅威論者に惑わされず国家情報戦略を構築すべきだと主張する。評者は柳谷勝美。

 同じく奈良新聞は平凡社新書の『白川静ー漢字の世界』(819円)を紹介している。白川の世界は漢字を通じて東洋の精神を求めたと著者の松岡正剛は書いている。また言霊の働きかけを歌謡に求めた白川は「古代歌謡と興の方法」の章で白川が最も好きだった漢字が「遊」であったと書いている。

 面白そうな本はベン・マッキンタイマー『ナチが愛した二重スパイ 英国諜報員『ジグザグ』の戦争』(白水社、2520円)ー朝日ーだ。イギリスの下層社会で生まれた主人公(といっても本書はフィクションではなく歴史書)ジグザグは満足を通えたわけではなく、ロンドンの下町でギャング団を作る「ワル」。1939年に逮捕され島の刑務所に収監される。ところがこの島がドイツ軍に占領され、彼はスパイとして養成される。人生が大きく変わる。42年12月にイギリス上空に侵入したドイツ機から降下、自首する。そこでイギリスにドイツのスパイ組織の全容を供述し、二重スパイになることを願い出る。ドイツの空爆でロンドンに落とす被害がジグザグのドイツへの情報(二重スパイによる偽情報)で被害を最小限に食い止めることができることに。平然と二重スパイになることを求めていくジグザグの精神は母国イギリスへの愛国心なのだ。波瀾万丈のこのスパイものはフェレデック・フォーサイスの作品のようなフィクションではないだけに興味をそそられる。2001年に軍事機密扱いを説かれた1700ページの公文書を読み解いて完成した作品だ。評者松本仁一が注目しているのは人間の可能性の大きさだ。「教養も学問もなく、平時に社会のお荷物でしかない人間学問、『乱世』の中では生き生きと光彩を放ち、多くの命を救い、社会に大きな影響を与える。その面白さだ」と書いている。(文中敬称略、第1次入力)
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