佼成出版社の『東アジア仏教史』全15巻が刊行されている。旧版の全集のいくつかは目を通したことがあるが、すでに40年近く時が経過している。
▼この間、仏教学の発展は目を見張るものがある。この間、注目していたのは駒沢大学の俊英学者で、袴谷憲昭『本覚思想批判』では「悉有仏性」の本覚思想が仏教ではないとの解釈を読み衝撃を受けた経験があるし、また松本史朗『縁起と空』の如来蔵思想批判でも文献に裏付けられた論考に目を見張ったものだ。
▼シリーズの『仏典からみた仏教世界』では、論文を包括するタイトルが「解釈学の進展」とか「思想の深化」など、これまでとは明らかに異なる方法が出てきていることがわかる。実証的方法だけでは深層に迫れないとみる研究者の果敢な挑戦だとみる。
▼仏教の根幹には縁起をどうとらえるかにあるわけだが、ここの解釈、研究は徹底した実証性が求められるようで、新たな概念からの解釈なり研究はみられないのではないだろうか。それは縁起の解釈が最も地に足をつけたものだからだろう。基層にあるということか。
▼最近は仏教の思想なり成果が見直されてきている。対立と暴力の世紀は20世紀をへて21世紀に入ってもなかなか終息をみせないからだ。絶対神を否定し、神秘主義に傾かない、換言すれば理性的というか、観念性を克服するというか、その穏やかさに現代人は惹かれるのかもしれない。
▼お経は何千となく唱えることで体に入るという。それは読書の極意に通じることかもしれない。
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