闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.338
伴淳三郎と花菱アチャコの二等兵物語。かれらの悲惨な軍隊生活を通じて反戦を訴えようとしている。
陸軍の兵舎に女性が訪ねてきたり、子供を便所に何日も隠したりできるとも思えないが、そういうことを平気で描いている本作のハイライトは、上官のいじめと虐待と暴力に頭に来た伴淳が、敗戦となって醜い振舞いをする彼らを機関銃で脅しながら、その非を鳴らす大演説をぶつシーンである。
そこでは理不尽な暴力と恐怖で強制的に部下を従属させるのではなく、愛と友情と協同にもとづく愛国的な軍隊組織のヴィジョンが語られるのだが、声涙俱に下りすぎてお涙頂戴の上官の告白まで飛び出す脚本はかえってよろしくなかった。
それにしてもこの映画で描かれたような帝国陸軍軍隊の非人間性は、日本人の最悪の側面であり、その遺伝子はいまなお現行の軍隊組織と我等の精神に生きながらえているのだろう。
左側にハンドルを切り高速を墜ちゆくときの軽き眩暈 蝶人