片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

装丁家・坂川栄治さんに会う②

2010-08-03 18:41:44 | 対談

片山 坂川さんは、ご自分で本も出版されたことがありますよね。
その経験が、装丁をされるうえでも役に立っているんじゃないですか。

坂川
Photo_2
そうですね。装丁をする人は、ともすると自分の作品づくりに走りがちですよね。

片山 ああ、わかる、わかる。

坂川 デザイン重視で、きれいで、自分で満足できるものをつくろうとする。

片山 作品として残そうとする。

坂川 そうそう。でも、僕は意外とそれがないんですよ。
広告の仕事をやっていたせいもあるんですが、自分で本を出してみてわかりましたね。
本を出しても、本屋さんで売れなかったら初めから置いてないのと同じです。お客さんに届かないと意味がない。日本の津々浦々にまで届けようと思ったら、数を売らなきゃいけない。それを考えると、デザインは二番手で、やっぱり、売るためにどうしようか、と考えますね。

片山 よくわかりますね。ところが、「売るため」みたいなことをいうと、「妥協だ」といういい方をされる。それは違うと思いますけどね。
われわれの業界でも、               Photo
読んでもらうため、売るための商品として、ギリギリのところで勝負するわけです。
そういう意味では、デザインだって同じですよね。

坂川 そうですね。
お客さんが、何にいちばん先に反応して、たくさんある本のなかから、自分が装丁した本に手を伸ばしてくれるか。そこがいちばん気になるし、おもしろいですよね。

片山 確かに、本は手にとって読んでもらわなきゃ意味がないよね。
その意味で、ブックデザインって、出版文化のなかで、ものすごく大きな位置をしめてますね。

坂川 片山さんぐらいですよ、そんなこといってくれるの。誰もそんなこといってくれませんよ(笑)。

片山 そうかな……。

坂川 私は別に、そんな期待はしてませんけどね(笑)。
以前、装丁の依頼にきた著者と編集者に、「まあ、これはそんなに売れないでしょうけどね」っていわれたことがあるんですよ。だけどこっちは、何でそんなことをいうんだろうと、私だけが売れると読んでました。フタを開けたら大ヒットになりましたけど。
私はデザインすることも好きですけど、どうやったらこの本は売れるだろうと考えるのが好きな装丁家です。あんまりほかにいませんけどね。
一つの商品を売ってるっていう意味では、最新のテレビも、本も、一緒ですね。
ただ、なぜか本の場合は、「商品を売ってる」と思えない関係者が多いんだろうなと思います。


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