財源を無駄な歳出から捻出するという、
行政刷新委員会の「事業仕分け」は、
去年の11月に第一弾があり、先月、第3弾が終了しました。
期待を集めたものの、思うようにコスト削減効果が表れないなど、
国民の関心は離れてしまいました。
いくら事業仕分けをしても、
所管官庁が事業を廃止したり縮小したりする保証がないのだから、
うまくいくはずもありません。
であるとするならば、この際、私は、事業仕分けよりも
官庁のイノベーションを巻き起こすべきではないかと思います。
P.F.ドラッカーの著書『イノベーションと企業家精神』
(ダイヤモンド社 上田惇生訳)には、
「公的機関における企業家精神」の章があります。
公的機関がイノベーションを行えない理由がまとめてありました。
公的機関において、イノベーションと企業家精神を阻害するのは、
「公的機関そのものに内在する固有の力学」だとあります。
イノベーションの障害となりやすい原因は、三つあるというのです。
①公的機関は、成果ではなく予算に基づいて活動する
②公的機関は、非常に多くの利害関係者によって左右される
③公的機関は、善を行うために存在する
以下、ドラッカーの解釈を要約してみましょう。
①については、公的機関の予算は、税金や寄付金です。
企業が、自分で稼ぎだした利益に基づいて活動するのとは違います。
しかも、公的機関があげる成果は、業績ではなく、
獲得した「予算」によって評価されます。
「予算」を削ることは、
自分の評価を小さくすることにつながります。
②については、企業は顧客を創造することが目的ですから、
ステークホルダーのなかでも顧客は第一に考えなくてはいけません。
顧客に対して販売した成果が、収入になり、
他のステークホルダーに還元されるからです。
しかし、公的機関は、活動の成果が収入の原資になっていないため、
あらゆる人たちを満足させなくてはいけません。
事業を開始したときから、反対する人たちも抱え込みます。
③については、公的機関の使命は、
収益をあげることではありません。
使命は「善」を行うことであり、
それは、費用対効果を超えた絶対のものであると考えます。
経済の世界では、大きな成果を得るために資源配分を考え、
費用対効果で、投資と回収のバランスをとります。
ところが、公的機関には、「大きな善」はありません。
費用対効果ではなく、使命を達成するために投資し、
目標が達成できないときは、達成するためにいっそう投資します。
公的機関は、イノベーションや新しい事業を、
自らの基本的な使命、つまり「善を行うこと」に対する攻撃と受け取ります。
だから、イノベーションが起きにくいというわけです。
しかし、イノベーションが起きにくいことを、
「仕方がない」では済まされません。
では、どうしたらいいか。
(明日に続く)
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