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八尾のNPO 絶滅危機ニッポンバラタナゴ繁殖成功 伝統手法で外来種駆逐
産経新聞 4月4日(水)15時8分配信
このNPOは高校教諭の加納義彦さん(59)が代表を務める「ニッポンバラタナゴ高安研究会」。
大阪の市街地を見渡す高安山(487メートル)西麓の八尾・高安地区では、約300を数える農業用のため池が残り、ニッポンバラタナゴがわずかに生息。これを絶滅から救おうと平成10年、加納さんを中心に同NPOが発足した。
これまで、太陽光発電で池の水を濾過(ろか)させるなど、水質改善に試行錯誤を重ねたが、いずれも失敗。そこでたどり着いたのが「ドビ流し」という手法だった。
ため池の水を農業用水として利用していたころは、農作業を終えた冬に、池から水を抜き、底にたまったドロや土砂を取り除く「池干し」が行われており、ドビ流しとは、傾斜地のため池で行われていた池干しの方法だ。
ため池の用途が利水から治水へと変わったため、池干しは行われなくなったが、腐敗した動植物が池底にヘドロとして堆積すると、ヘドロには窒素やリンが多く含まれており魚の生息に悪影響を与えるため、同NPOは、ヘドロを水とともに池底に設置された栓を抜き、傾斜地の下方にある田畑に流す、昔ながらの「ドビ流し」が池の浄化に有効だと考えた。ドビは、水を流す筒状の樋を意味する土樋(どひ)が語源だ。
ニッポンバラタナゴは別の池で保護した上で、18年からドビ流しを実施。干上がった池底に現れた天敵のブラックバスやアメリカザリガニなどの外来種をわずか3年間で駆逐し、ニッポンバラタナゴを繁殖させることに成功した。
ここ数年はさらに、高安地区にある大阪経済法科大学構内の「ふれあい池」で、ヘドロを抜いた池の底に山の腐葉土を入れて実験。腐葉土は栄養が豊富なことから、ニッポンバラタナゴは21年に1万匹、22年に2万5千匹、23年に4万5千匹と劇的に増加した。
同NPOは「西日本各地で再びニッポンバラタナゴが見られる日がくるかもしれない」と話し、日本の原風景復活に期待を寄せる。日本ユネスコ協会連盟は先月、危機に直面している文化・自然遺産を守る「プロジェクト未来遺産」に、同NPOを大阪府内で初めて登録している。
【用語解説】ニッポンバラタナゴ…かつて西日本全域でみられた日本固有種だが、現在は大阪府八尾市など、関西、四国、九州のごく一部のため池で局所的に生息する。環境省レッドデータブックで最も絶滅の危険がある「絶滅危惧IA類」に指定されている。産卵期は5~6月で、繁殖期のオスの体が、美しいバラ色に染まることが名前の由来。
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