ウィーンで学ぶ

---ウィーン医科大学心臓胸部外科
留学日記とその後...---

ウィーン医科大学心臓外科 留学終了

2008年01月14日 | ウィーン
あっという間に一年半の留学期間が終了した。
今週が最終週だった。病院での出来事など書きたいことが沢山あるが引っ越しの準備で時間が無いのが残念だ。どうしても書き留めておきたいことだけにする。

毎週水曜日に医局全体の朝カンファレンス勉強会がある。注目される教授が招聘され30分から1時間程の講演をすることが多い。EU各国から著名な教授を講演に招くこともあるし、国内他大学の有名教授が講演することもある重要なmeetingだ。

今週でウィーン医科大学心臓胸部外科での留学を終了する自分に、最後の水曜カンファレンスで一言挨拶したらと年末に言われた。貴重な時間を頂けることをありがたく思いYesと返事をした。そして前日、指導教授と医局幹事のW教授の計らいで一言挨拶のはずが、presentationすることに変わっていた。

当日は、肺移植や肺梗塞の治療で世界的に著名なKlepetko教授の講演とあって、普段より聴衆は多く、40人程のDrで満席となっていた。そんな中、教授に先立ち15分程のpresentationをした。

前日、手術終了後から深夜までその準備をしたが一晩でたいした内容も準備できず、また流暢な英語が話せるわけもない。いつもながらの吃り英語だった。なるべく大きな声で話すことだけを心がけたが。

内容は日本の心臓外科の特色と、成績を簡潔にまとめたもの、それに東京の紹介をほんの少し、最後に家族を紹介し、これまでのお礼を述べた。聴衆の反応を感じたのは最後に息子を写真で紹介した時だったので、全体的には教授陣には面白くない内容だったかと自分では思った。が、

辿々しい英語が何処か情緒を誘うのか、presentationが終わるとこれまでの朝カンファレンスで聞いたことのない程の大きな拍手が待っていた。
横で聞いていたKlepetko教授からは肩を叩かれた。相当力がはいっていたのか。


(左から Prof. Grimm M, 小生,Prof.Vögele-Kadletz M, Prof. Ehrlich M)

翌日もORで麻酔科Dr.や、廊下ですれ違う教授陣から「nice presentation!」 とお褒めの言葉を沢山頂いた。自分でそれほど良いとは思えないので、本当に皆さん優しいとしか言いようがない、ありがたい。
この機会を頂けたことにも感謝。


(これがAKHの全景:巨大な病院と医学研究施設。およそ20棟の建物からなる)


書き留めことは沢山あるが、なにせ引っ越し準備で忙しい。
息子もこの1週間あまり構ってあげられず、彼も楽しくないのかグズグズ駄々をこねる日が続いていた。日曜の今日、彼の気晴らしに最後の室内遊技場に連れて行った。

昨年から同じ場所で遊んでいるから、彼の成長が分かりやすい。
彼は先月から自分一人で大きな滑り台を登れるようになっていた。
自分の背丈の何倍もある滑り台を器用に登っている。それまではほぼ全介助して登っていたから、彼もやっと一人で登れるようになったかと思っていた。見ているだけでいいので、こっちはラクになったなあと。

背伸びしながら手を伸ばしてやっと届く吊革を掴み、足を大きく広げてやっと届く足台を頼りに登っていく姿に、感心していた。
登り切ると少し得意げにこちらを振り返る。



小学生低学年の子ども達も、2歳の彼が登るのに驚いているようだ。
大きな子どもが登るとエアー滑り台はかなり揺れる。面倒見の良い小学生は彼が落ちないように見てくれる。


(初対面のお兄さんが彼をかまってくれている)

彼は何回も登っては滑りを汗びっしょり元気に繰り返した。
背伸びしながらスイスイと登っていく姿に、オーストリア人のお父さから「息子さんは何歳なの?」と聞かれる。この日は3人の親からも聞かれた。周囲の親達も驚いていたようだ。

息子は自分より大きいお兄さんと遊ぶのが大好きだ。今日も相手をしてくれそうなお兄さんを自分から積極的に追いかけ、一緒に遊んでいる。負けずと登り、滑り、飛びはね。汗だくになり、本当に楽しいそうに遊んでいる。

去年はこの遊技場内の小さなジャングルジムの滑り台でさえ、一人では怖がっていた。一歩一歩手を取り、足を取りながら歩くのがやっとだったのに。
今は自分から体当たりして年上の子とたくましく遊ぶ姿をみていると、自然と熱いものがこみ上げてきた。


日本では何もしてやれなかった。
ここに来て彼と過ごす時間は圧倒的に増えたが、自分が何を教えかというと、何も教えていないような。しかし彼は確実に成長していた。

彼の目覚ましい成長と比べたら自分の心臓外科医としての成長は微々たるものではあるが、この留学は何らかのきっかけになっただろう。


明後日のフライトを前に明日、指導教授に家族全員でランチに招待されている。
家内のお陰で荷造りも何とか間に合いそうだ。

続きは帰国後に書き留めることにしよう。
忙しい日本でも家族と楽しみたいと思う。
コメント (11)
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