ウィーンで学ぶ

---ウィーン医科大学心臓胸部外科
留学日記とその後...---

出張?それとも休日?

2007年03月25日 | ウィーン
職種によっては出張が多い方もいるだろう。

厄介な仕事のための出張から、ほとんど旅行のようなものまであるだろう。学会出張の場合、後者に当てはまることが多い。特に重要な研究発表でもしない限りそれになるであろう。日本は学会が多いことでも有名だ。とにかく学会を開催し、皆かなりの頻度でそれに参加する。

ここウィーン医科大学でも教授の出張の多さには驚いた。日本以上だと思う。そろそろシーズンだが、毎週誰かがいない。数人はどこかに行っている。先週休んでいた若手教授は見事に日焼けして帰ってきた。昨日は久々に一緒に手術が出来たのだが、来週はアメリカに行くと言っている。2月,3月は何週間もいなかった。もちろん夏休みはしっかりとるだろう。秋には日本の学会に招聘されるといっていた。東大の教授からだ。それ以外にも自分の興味のある学会には参加するだろうし、法律で休暇を取ることが義務づけられている国だ。とにかく休みが多い。人生を謳歌しているように見える。チマチマと真面目に働いてもたいしたモノは得られないように感じる。

見習って、わが家も2つの旅行を予定している。5月の地中海クルーズと8月のスイス周回旅行だ。5月には2週間の休みを確保した。簡単だった。何の問題もない。自分に必要だったものは、「休む」と言う勇気だけ。

日本の大学病院勤務の時は、年間の休みが3日間だったこともあった。正月も病院で過ごしていた。若い時は、病棟は自分が管理するのだという信念と義務感、それにそれなりの達成感があり、たとえ休みが無くても満足していたと思う。労働基準法は完全に無視されている。それでも本人がやり甲斐があったから、むしろ誇りに思っていた。

しかしストレスを感じたときにはその労働環境はあざとなる。自分のカラダが壊れていくのに気づく。自主的にしている仕事は楽しいが、強制的な仕事はカラダに悪い。

ここのDr達を見ていると、そんなに無理して何になるのだろうと今は思う。狭い世界にいたように感じる。当直したら皆朝には帰る。体調を崩したら休むのが常識で、咳をしながら仕事することはむしろ許されない。有休で家族と過ごすことに誰が反対するだろうか。正当な権利だ。休んでいることをとがめる人は全くいない。彼は休みだと言われたら、「そうか」で終わりだ。

なぜ日本の大学病院では法律通り休暇を取ることが不可能なのだろうか?
もちろん日本人の国民性もある。上司が休まないのであれば部下も休みを取りにくいか、若しくは全くとれない。
たとえ皆で休もうとしても、不可能なこともある。不完全な保険制度のため病院のスタッフの人数が少なすぎるか、管理職が働かず若手へのしわ寄せによる労働時間の不均等という原因もあるかもしれない。

先日大阪の国立循環器病センターで重要なポストのDr達が集団で辞職したニュースがあった。何が原因かは知らない。彼らはやる気に満ち溢れたいわゆるエリートDr達であったはずだ。患者さんへの強い義務感から長時間労働くらいは耐えられる人たちでもあったはずだ。その彼らが辞めざる終えないのは、日本を代表する病院も根本的な問題があり、まともな人が働けるような環境ではないのだろうと想像してしまう。誰かが労働環境を改革しないと皆ダメになってしまうと思う。過労死だけは避けて欲しい。この問題に気づかない人は羨ましい。
コメント
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