特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

2-24・時間遅れの測定:光学原子時計を使った実験の1

2023-11-19 04:00:48 | 日記

「日常生活レベルの移動速度でも光学原子時計を使って時間の遅れが観測できた」という話があります。

これは前のページで紹介した「ハーフェレ・キーティングの実験」をさらに精密化したものになっています。(注1

概要については「相対性理論「時間の遅れ」、日常世界で実証」: https://archive.md/lDxfq :で紹介されています。

以下そこからの一部引用。

『・・・『Science』誌の2010年9月24日号に発表された今回の研究は、コロラド州ボールダーにある米国立標準技術研究所(NIST)で行なわれたものだ。

NISTの物理学者James Chin-wen Chou氏ら研究チームは、2つの光学原子時計を、それぞれ近接した研究室の鋼鉄製の台の上に設置した。2つの時計はいずれも電荷を帯びたアルミニウム原子、すなわちアルミニウムイオンを用いており、それが2つのエネルギーレベルの間を1秒に1000兆回以上も振動する。この2つの時計を、長さ75メートルの光ケーブルで接続し、それぞれの時間の進み方を比較できるようにした。

最初の実験でChou氏らは、油圧ジャッキを使って、一方の時計を設置した台を33センチメートル持ち上げた。すると予想通り、低い位置にある時計のほうが、持ち上げられた時計よりも時間の進み方が遅かった。その遅れは、79年間で「1秒の900億分の1」程度だ。

2度目の実験では、一方の時計のアルミニウムイオンを、電場を用いて振動させた。これも予想通り、イオンを運動させた時計のほうが、静止していた時計よりも時間の進み方が遅かった。

今回の実験は、相対性理論の証明というよりは、原子時計の驚異的な精度の方に意味がある、とChou氏は説明している。

[超高精度の原子時計に更に改良が加えられれば、物理測地学の分野で、地球の重力場を極めて高い精度で計測できるようになると期待されている]』

 

最初のテストは重力ポテンシャルの違いによる時間遅れの測定実験。

これは「ハーフェレ・キーティングの実験」でも検出されていた重力による時間遅れの現象を、その部分だけ取り出してさらに精密測定したものになっています。

 

そうしてポイントは2つ目の実験。

この実験ではアルミニウムイオン一個を単振動させ、その時のアルミニウムイオンに生じている時間遅れを検出したものになっています。

そうしてこれは「ラックに組み上げられた光学原子時計全体を上下に振動させた」のではなくて「光学原子時計の中心部=一個のアルミニウムイオン」を「上下に振動させたもの」なのでした。

 

さてこの話はほとんど量子力学の実験になっていて「時計全体を上下に振動させた」のではない為、「ハーフェレ・キーティングの実験」の様に「高速で移動している時計の時間は遅れる」という「特殊相対論の時間遅れの予測の検出実験」ほどには分かりやすいものにはなってはいません。

とはいえ「単振動による時間遅れの発生を現実に測定できた」のであれば、その意味はとても大きなものでありますから、「少々手間取っても理解するべき実験である」と言えます。

 

という訳で、まずは「原子時計とは何か」という所からレビューする事になります。

1、ういき「原子時計」: https://archive.md/Uj78x :を参照

『原理​

原子や分子はスペクトル吸収線・輝線(決まった周波数の電磁波を吸収・放射する性質もしくはその周波数)を持ち、水晶振動子などよりも高精度な周波数標準となる。周波数は時間の逆数であるから、時間を高精度で測定できる。SI秒の定義もこの性質を利用している。

原子時計は、このような周波数標準器と超高精度の水晶振動子によるクォーツ時計とを組み合わせ、その水晶振動子の発振周波数を常に調整・修正する仕組みによって実現される。』

『種類

マイクロ波時計 (例)セシウム原子時計(現在の秒の定義となっている。)

光原子時計
 単一イオン時計   (例)ストロンチウムイオン時計、イッテルビウムイオン時計

 中性原子光時計
  旧型(自由空間のもの) (例)カルシウム時計、マグネシウム時計
  新型(束縛されている)  (例)ストロンチウム光格子時計、イッテルビウム光格子時計』

「ハーフェレ・キーティングの実験」では「セシウム原子時計」が使われました。

そうしてここで紹介している実験では「単一イオン時計」が使われています。

それぞれの時計についての説明は上記ういきの記事を参照願います。

 

2、『科学全体に重要な意味を持つ「時計」開発の世界』: https://archive.md/4Rsz0 :

2種類の「光時計」についてのわかりやすい説明がされています。

 

3、「時空の歪みを探る時計」: https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/62-h24_2.pdf : 香取秀俊.

少々ながいのですが基礎から光学時計の今後の展望まで丁寧に説明されています。(注2

 

注1:「ハーフェレ・キーティングの実験」では「理論は、セシウムビーム時計が典型的なジェット機の速度で世界一周飛行した場合に、検出可能な効果を予測しています。」と予測できたので、それを実際に確認したのでした。

そうしてこの時に使われた原子時計はセシウムビーム時計でした。

注2:香取さんは「光格子時計を世界で最初に組みあげた人=発明した人」です。

「300億年に1秒の差を測る究極の時計 世界標準へ:香取秀俊」: https://www.nikkei-science.com/201101_010.html : https://archive.md/grr2a :

「ERATO香取創造時空間プロジェクト」: https://archive.md/4DGm5 :

 

追記:こんな記事・論文もありますよ、というもの。

「世界的「光原子時計」の研究者が日本に初集結」: https://archive.md/gz4wU :

単一イオンを閉じ込めるポールトラップの現物写真が確認できます。

くわえてレーザーで作られた光格子にトラップされたSr原子の状況も確認できます。

「単一40Ca+イオン光周波数標準器」: https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/38/7/38_517/_pdf :

ご参考までに

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/8tZI5