特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

10-1・誤解されているローレンツ収縮

2024-06-19 04:16:18 | 日記

1、本来のローレンツ収縮に対する理解の仕方

ういき「ローレンツ変換」: https://archive.md/hVIVn :の「ローレンツ=フィッツジェラルド収縮」の「・相対論的解釈」に書かれてある解釈が本来のローレンツ収縮に対する理解の仕方です。

そこでは静止系に対して相対速度Vで運動している長さLの棒が静止系から見ると

L*sqrt(1-V^2) と観測される事が示されています。(但しVは光速Cで規格化したもの)

つまりは「速度Vで動いている物体の長さは進行方向に対してsqrt(1-V^2)の割合で縮んで観測される」のです。

これが本来のローレンツ収縮に対する理解の仕方です。

その有様はそこに示されたイラスト: https://archive.md/32DeU :でよく確認できます。

黒座標が静止系であってそこに対して速度Vで右方向に移動している慣性系が青座標で示されています。

この青座標での時刻0の時に長さLの棒が左端を原点に位置する様に置かれています。

もちろんこの時の長さLは青座標で計った時の棒の長さです。

でその棒は青座標の上ではもちろん静止していますから単に青座標の時間経過にしたがって青座標の上を青座標+Y方向に移動する様に表されます。

その時にその棒がMN図上に作る軌跡が薄青色の右上方向に延びるバンドとしてイラストでは示されています。

さてこのバンドの幅が棒の長さを示すのですが、イラストにあるように青座標読みでは常に長さはLとなります。

しかしながら静止系である黒座標から計りますと「その長さはsqrt(1-V^2)の割合で縮んで観測される」のです。

というのもMN図上で黒座標での同一時刻線は水平であるのに対して、青座標の同一時刻線は右上方向に傾いているからです。

しかしながら黒座標上の観測者にはその傾きは観測されず、観測されるのは「棒がもともとの長さに対して縮んでいる」という内容です。

 

といっても実は「青座標上での棒の長さを知らない場合」には黒座標の観測者には「棒が縮んだのかどうか」は判定できません。

黒座標の観測者に分かる事は「棒が相対速度Vでこちらに向かってきて通り過ぎた」という事と、「その時に棒の長さを測定したら長さがL1になっていた」という事です。

で後日、青座標からの情報で「もともとの棒の長さはLである」を入手して初めて

L1=sqrt(1-V^2)*L ・・・(1)式

が成立していた事を知るのです。(注1

さてそうであればそのイラストの説明内容は以上のようになります。

そうしてこのMN図を使った説明が「動いている棒の長さは縮んで観測される」という「本来のローレンツ収縮に対する理解の仕方」を示しています。

 

2、「空間が収縮する」という理解の仕方について

さて上記の様なローレンツ短縮を観測する場合は「棒は背景、つまり黒座標に対して動いている」のですから「収縮が観測されるのは棒だけ」です。

しかしながら「空間が収縮する」=「背景の黒座標が棒と一緒に収縮する場合がある」のです。

そうしてこれについても通説では「ローレンツ収縮」と呼んでいる場合もあります。

しかしながらこの場合の収縮が観測される理由は上記で述べたプロセスとは異なっています。

この場合の収縮が観測される理由は「動いている青座標の観測者の時間が遅れるからである」と説明できます。

これは上記のイラストで言いますと「棒と一緒に動いている観測者が今度は黒座標に原点から+X軸方向に置かれた長さLの棒の長さを観測するとどうなるのか?」という事になります。

この青座標原点に立つ観測者にとっては黒座標の棒は右から左に相対速度Vで走ってきます。(その様に青座標の観測者は観測します。)

で、(注1)で述べた黒座標の観測者と同じ事をやるのです。

そうすると青座標の観測者も黒座標の棒が自分の横を通り過ぎるのに必要だった時間ΔT1を得ることができます。

しかしながらここで注意が必要な事は「青座標の時計は遅れている」という事です。

さてそれは黒座標=静止系の時計に対してどれだけの割合で遅れているのでしょうか?

それは「sqrt(1-V^2)の割合で遅れている」のです。

そうであれば黒座標に置かれた長さLの棒が青座標の観測者の横を速度Vで通り過ぎるのに必要だった時間ΔT1は

ΔT1=(L/V)*sqrt(1-V^2) ・・・(2)式

となります。

ここで(L/V)は「遅れていない時計で計った場合に長さLの棒が速度Vで走った時に観測者の横を通り過ぎるのにかかった時間」を表します。

しかしながら青座標の観測者の持つ時計は「遅れていない時計」に対して「sqrt(1-V^2)の割合で遅れている」ので「通過するのにかかった時間は短く観測される」のです。

そうであれば(2)式から青座標の観測者は通り過ぎた棒の長さL2を

L2=ΔT1*V  ・・・(3)式

と判断します。

さてこの(3)式に(2)式を代入すると

L2=ΔT1*V=(L/V)*sqrt(1-V^2)*V

=L*sqrt(1-V^2)=(1)式

=L1

となります。

つまりは上記1、で述べた「黒座標が青座標に置かれた長さLの棒をローレンツ短縮のおかげで短く観測する」のと同じ様に「青座標も黒座標に置かれた棒の長さを同じ割合だけ短く観測する」のです。

そうして通常はこの状況をさして「ローレンツ短縮はお互い様」と言っています。(注2

しかしながら本来のローレンツ短縮は「静止系である黒座標から見た動いている青座標に置かれた棒の短縮」を指していて「動いている青座標から見た静止系である黒座標に置かれた棒の短縮」は本来の意味でのローレンツ短縮ではないのです。

それは「青座標の時間の遅れの発生に伴って起きてきている現象」であれば「それをローレンツ短縮と呼ぶのは不適切」であって「この2つの現象は区別してとらえる必要がある」と当方は主張します。

そうして「動いている青座標が黒座標に置かれた棒の短縮を観測する際には、黒座標の空間そのものもX軸方向に短縮している事を観測する」のです。(注3

そうであればこの場合起きている現象は「動いている棒の短縮」ではなくて「動いている様に見えている相手の空間の短縮」と言うことになります。(注4

そうしてその空間に置かれた棒は空間と一緒になって短縮して見えるのです。

 

注1:あるいは事前に棒の長さが本来はLである事を知っていれば、動いている棒の長さを測定した時点で「縮んでいる」と黒座標は判断できます。

ところで黒座標の原点に立つ観測者はどうやって棒の長さを測定するのでしょうか?

それは「自分の横を左から右に通り過ぎる棒の頭が自分に並んだ時にストップウオッチをスタートさせます。

そうして次に棒のお尻(最後の端)が自分の横に来た時に時計を止める」のです。

そうやって得られた時間ΔTに棒の相対速度Vを掛ければ、「それが黒座標で測定した棒の長さ」になります。

注2:通説が言う「ローレンツ短縮はお互い様」の説明は実はこれと違っていて「青座標が黒座標に置かれた棒の長さを短く観測する理由」は「黒座標が青座標に置かれた棒の長さを短く観測した理由と同じ」とします。

そうして「何故その様に説明できるのか」といいますれば「棒の長さを観測する方の観測者が『自分こそが静止系に立っている』と主張できる」と言うのが通説の認識であるからです。

つまりは「全ての慣性系は平等である」ので「全ての観測者は『自分こそが静止系に立っている』と常に主張できる」と通説は言っているのです。

 

こうして観測者の立場を黒座標から青座標に変える事で「青座標を静止系」とし「動いているのは黒座標である」と見るのです。

さて、その様に見るのであればあとは1、で行った説明を黒座標と青座標の立場を変えて繰り返すことで「動いている黒座標に置かれた棒の長さが短縮している」と言えることになります。

従って青座標は『黒座標は静止している青座標に対して動いている』と認識するので、「黒座標に置かれた棒の長さが短縮している」となります。

しかしながらその場合は黒座標が運動する背景になっている空間は青座標の事であり、従って「空間が収縮する」という現象は観測されない事になります。

 

それに対して当方の主張は「客観的に存在する静止系を認める立場にたつもの」です。

その為に上記1、と2、の説明では「黒座標は常に客観的に存在する静止系」であって「青座標はその静止系に対して運動している慣性系である」として扱って説明しています。

従って「1、で棒が短縮して観測される理由と2、で棒の短縮が観測される理由は異なっている」と主張する事になります。

しかしながら同時にまた「そのように異なる原因で短縮が観測されるのですが、結果として観測される棒の短縮量は1、と2、では結果的に同じになる」と説明できるのです。

注3:上記1、での場合のローレンツ収縮では空間の収縮は起りません。

なんとなれば「空間は黒座標系に属している」としているからです。

あるいは「静止系である空間に黒座標を設定したから」です。

他方で2、で説明した収縮では黒座標の空間と一緒に棒の収縮が起こります。

さてこの場合、「縮むのは物体ではなくて空間」なのです。

これが普通の「物体の長さが縮むローレンツ短縮とは異なる点」になります。

注4:しかしながら本来、空間は動くものではありません。

動くのはあくまで物=オブジェクトであって、それが背景となっている空間の中を動くのです。

 

追記:空間が短縮する件:チャットGPToの回答

『ローレンツ短縮において、「空間が縮む」という表現は正確ではありません。ローレンツ短縮は、相対的な運動により観測される物体の長さが縮む現象であり、空間自体が縮むわけではありません。以下に詳しく説明します。

・ローレンツ短縮の本質
ローレンツ短縮は、物体が相対的に高速で運動しているときに、その物体の長さが観測者から見て運動方向に縮む現象です。この現象は、以下の式で表されます:

L=L 0*sqrt(1− (v^2/ c^2) )
ここで、

L は観測者が見る物体の長さ
L 0  は物体の静止時の固有長さ
v は物体の相対速度
c は光速

 

・空間は縮まない
1、相対的な観測の違い:

ローレンツ短縮は、物体が運動しているときに観測者がその物体をどのように観測するかに関する現象です。空間そのものが変形するわけではなく、物体の運動に伴う観測される長さの変化です。

2、空間の性質:

空間自体の性質や形状が物理的に変わるわけではありません。特殊相対性理論は、物体がどのように観測されるかを説明していますが、空間そのものの変形は含まれていません。

3、相対性原理:

相対性原理によれば、物理法則はすべての慣性系で同じであるとされます。これに基づき、どの慣性系から見ても空間自体は一貫しており、観測される長さが変わるのは観測者と物体の相対運動の結果です。


・まとめ
ローレンツ短縮において、実際に縮むのは「観測される物体の長さ」であり、「空間そのものが縮む」というわけではありません。これは、相対的な運動により観測される現象であり、空間の性質が変わるわけではないことを意味します。』

以上のチャットGPToの回答は業界の通説の認識を表しているとみて良いでしょう。

しかしながら次に示します様にういきはこれとはまた別の認識を表明しています。

 

追記の2:ミュー粒子にとっては移動する空間が短縮する=移動距離が短くなったと認識する件

もともとこの話は「ほとんど静止系と見なせる地球に降り注いでくる宇宙線由来のミュー粒子の寿命が延びる」という話題について「その場合にミュー粒子からみると上空から海面までの距離が短縮して見える、従ってミュー粒子の本来の寿命時間である2.1マイクロ秒でも十分に到達できるのだ」という認識の仕方、理解の仕方が元になっています。

そうであれば「静止系に対して運動している観測者の時間が遅れるので、その観測者にとってはまわりの空間が進行方向に短縮して見える」という理解の仕方は当方の発案ではなく、以前からこの業界に存在していた認識方法、理解の仕方であります。

たとえばその事は以下の記事を参照すれば分かる事です。

(µ 粒子の寿命と走行距離 (1)) : http://rokamoto.sakura.ne.jp/education/physicsIIB/life1.pdf :

『2. 同様に、運動中の µ 粒子から見た地上までの距離は短くなるので、所要時間は~となり 、寿命よりも十分に短いので平均として地上に到達できる。
以上の結果より、同じ現象が二つの見方から整合的に記述されたことになる。』とまとめられています。

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/3jeTA