特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

2-30・時間遅れの測定:光学原子時計を使った実験の7

2023-12-23 01:26:44 | 日記

光学時計と相対性理論
C. W. Chou,* D. B. Hume, T. Rosenband, D. J. Wineland

24 SEPTEMBER 2010 VOL 329 SCIENCE (原典は: https://zenodo.org/records/1230910 :からDL可)

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3、光時計による標高差(33センチ)の検出実験についての説明

『重力ポテンシャルの違いは、2つの時計のティックレートを比較することで検出できます。地球表面の高さの小さな変化に対して、高さがΔhだけ異なる時計は、次のように速くなります。

δf/f0=gΔh/c^2 ・・・(2)式
 
ここで、g≈9.80m/s^2  は重力による地元の加速度です(4)。重力変位は、高さの変化1メートルあたり約1.1×10^−16 のクロックシフトに対応します。このシフトを観測するために、最初に2つのAl+イオン時計の周波数を元の高さ差Δh=h(Mg-Al)−h(Be-Al)=−17cmで比較しました(これはレーザーレベルで測定されました)(注1)。その後、Mg-Al時計が載せられた光学テーブルを支えるプラットフォームを使用して高さを33 cm増加させ、再び周波数を比較しました。これらの2つの測定には約100,000秒の低い高さでのデータと40,000秒の高い高さでのデータが含まれており、時計は約4.1×10^−17 の分数周波数変化を示しています。(Fig. 3)。このシフトをAl-Mg時計の高さ変化の測定として解釈すると、37 ± 15 cmという結果は、33 cmという既知の値とよく一致しています。

理想的には⟨ν||⟩=0ですが、トラップ内の絶縁材料の遅い電気充電などの効果により、Al+イオンの小さな直線速度が発生することがあります。式(1)から、クロックの周波数(つまり、移動するイオンのクロック遷移にロックされたプローブレーザーの周波数)は、

δf/f0≈⟨ν||⟩/c ・・・(3)式

  という分数周波数シフトを示します。もしAl+イオンがプローブレーザービームの伝播方向に平均速度⟨ν||⟩で移動している場合、比較測定ではドップラー効果が注意深く制約され、互いに逆向きに伝播するプローブレーザービームを交互に使用することで行われました(11)。イオンの任意の運動は、2つのレーザービームによって測定される遷移周波数の差として検出されます。Al-Mg時計では、2つのプローブ方向の間に(1.2 ± 0.7) × 10^{-17}の分数周波数の差を観測しました。これは、実験室フレームでのイオンの速度が(1.8 ± 1.1) nm/sであることに対応しています。ただし、この大きさの速度によるクロックレートへの影響はほとんどないため、これは派生した2つの逆向きのレーザープローブ方向の平均からなる。

ここで報告されている小規模な相対論的効果は、前例のない精度と正確さを持つ光学原子時計で観測されました。向上した精度により、光学時計の感度が微小な重力ポテンシャルの変動に対して応用される可能性があり、測地測量(19, 20)、水文学(21)、および宇宙における基本物理学の試験(22)で利用されるかもしれません。クロックベースの測地測量の基本要素は、ここで2つの正確なAl+光学時計を75 mのノイズキャンセルファイバーを介して比較し、高さに依存するクロックシフトを測定することによって実証されました。クロックベースの測地測量(23, 24)では、正確な光学時計は「陸上潮汐ゲージ」(25)のネットワークに接続されるでしょう。このネットワークは、地球の表面から地球の重力場の等ポテンシャル面である「ジオイド」までの距離を測定するものであり、これは地球の平均海面に一致します。このようなネットワークは、クロックの場所で高い時間的(日次)および地理的分解能で動作できる可能性があります。したがって、通常の測地水準ネットワーク(更新期間が通常10年以上かかる)および2週間ごとの衛星生成の地球のジオイドマップを補完するでしょう。

ネットワークが有用であるためには、クロックの精度を10 ^−18  またはそれ以上に向上させる必要があります(26–28)。これにより、1 cmの不確実性を持つ高さの測定が可能になります。Al+時計では、イオンの運動の不確実性を減少させるためにイオンの運動を改善する必要があり、信頼性の問題も対処されなければなりません。これにより、時計は長期間無人で運転できるようになります。また、光学時計を接続するためには高品質のリンクが必要です。この研究で使用されたリンクと同様の通信ファイバーを使用した現実的なリンクデモンストレーションでは、光学周波数が不正確性が10 ^−18  以下で250 kmまで伝送できることが示されており(29–31)、大陸規模のデモンストレーションが進行中です(30)。ただし、大陸間リンクでは、光学キャリア周波数を大気を通して衛星に忠実に伝送する必要があり、これは未解決の問題であり、現在積極的に調査されています(32, 33)。』

 

『図3. 日常生活の尺度における重力時間の遅れ。 (A) 時計の1つが上昇すると、その速度はより深い重力ポテンシャルの時計の速度と比較して増加します。 (B) 異なる高さにある2つのAl+光学時計の周波数の分数差。 Al-Mg時計は最初にAl-Be時計よりも17 cm低い位置にあり、その後、データポイント14から33 cm高くなりました。高さの増加による純粋な相対シフトは、(4.1 ± 1.6) × 10^−17と測定されています。垂直のエラーバーは統計的な不確実性を示しています(縮小χ^2 = 0.87)。緑の線と黄色の影付きのバンドは、それぞれ最初の13データポイント(青いシンボル)および残りの5データポイント(赤いシンボル)の平均と統計的な不確実性を示しています。各データポイントは、約8000秒の時計比較データを表しています。』

翻訳はチャットGPT3.5+修正は当方

図3については原典を参照されたい。

光時計による標高差の検出実験についての説明になっています。

 

Fig3.で示されたデータを取るためには

>これらの2つの測定には約100,000秒の低い高さでのデータと40,000秒の高い高さでのデータが含まれており、時計は約4.1×10^−17 の分数周波数変化を示しています。(Fig. 3)。

>最初の13データポイント(青いシンボル)および残りの5データポイント(赤いシンボル)

>各データポイントは、約8000秒の時計比較データを表しています。

8000秒は2.2時間、

従って

(青いシンボル)は13ポイント=28.9時間=1.2日

(赤いシンボル)は5ポイント=11.1時間≒0.5日

要するに「単原子イオン光学時計は精度は良い」ものの「その精度を出す為には長時間の安定した稼働が必要」という事になっているのです。

ちなみに「日本発の光格子光学時計」は「短時間で単原子イオン光学時計と同等以上の精度を出す事」を目標としている様です。

 

注1:最初に17センチ低く設定された単原子イオン時計の13個の測定データの内の一つが「測定例としてFig.1で示されたもの」と思われる。

そのデータを見る限り「確かに周波数がマイナス側にシフトしている」のが分かります。

ちなみに実験の順序は「最初にこの高低差検出実験」が行われ、その後「イオンを単振動させる実験」が行われたのです。

まあこれは当然、この順序になります。

というのも「イオンを単振動させる実験」は光学時計の時計としての安定性をわざと崩す実験であるからです。

 

追記:以前に投稿した文章ですが、関係がありますのでここにも再掲示しておきます。

『「馴染みのある速さ(10 m/s = 36 km/h )における相対論的な時間の遅れの検出」という主張について。

時速36 km/hはアルミニウムイオンの単振動の実効値ですので、ピーク速度は51 km/hぐらいにはなります。

とはいえ「自動車の通常の運行速度で発生している時間の遅れを検出できた」のですから「これはもう『単一原子の光学時計』は大したもの」と言えます。

さてそれはコトバを変えますと「地球のこちら側とあちら側に置かれた光学原子時計の時間の進み方はずれる」という事になります。

何故ならば「地球は基準慣性系=客観的に存在している静止系に対してドリフトしながら自転しているから」です。

そうであれば「赤道上に置かれた時計と地球をはさんでその時計の反対側に置かれた時計のたとえば1時間の経過時間を比較するとずれが生じている」のです。(注4)

はい、その状況はまさに「ドリフトしながら円運動する2つの時計は静止系に対する相対速度が回転による時計の位置によって異なるから」です。

そうしてそれが検出できれば「静止系は客観的な存在である」の直接的な証明になります。(それはまさに「アインシュタインを超えた実験」と言われる事になるでしょう。)

しかしながら「精度のよい時計はつくれた」のですが「その2つの時計を地球をはさんで光ファイバーで接続して時間の経過をリアルタイムで比較する事」は「現状では至難の業」の様に見えますがさて、、、。

注4:今のセシウム標準時計を超える精度の2つの時計のずれの検出に「セシウム時計と電波を使った同時というタイミング設定」は使う事ができません。

そのあたり「ニュートリノは光速を超えた」という判断ミスを犯した「GPS時計を使ったタイミング設定に依存した実験からの教訓」になります。

さてそうであればどうしてもこの実験の様に「2つの時計は光ファイバーでつなぐことが必要」となるのです。

 

上記に関連した情報: https://archive.md/ghvZd :2011年頃のレポートの様です。

『今回小金井-大手町間のNICTが運用する光ネットワークテストベッドJGN2plus(現JGN-X)を利用したNICT-東大間のファイバ長60kmにおいては約400THzの光周波数を積算時間1秒で標準偏差1Hz以下の伝送精度で伝送する能力があることをまず確認しました。 ただし日本ではファイバ線が空中に宙づりされたり鉄道の近傍に敷設される等雑音環境が劣悪な場合が多く、今回この精度は天候が穏やかな真夜中という好条件においてのみ得られたものです。欧州では静かな地中に敷設されたファイバによって伝送距離1,000㎞のリンクも実証されており、今後世界一の伝送能力を実証するにはファイバの敷設環境を改善することが必要不可欠になります。』

『・・・NICTの時計の周波数が3~4Hz東大側より高いことが明瞭に観測され、両地点の光格子時計が同じ周波数を生成していないことが分かります。しかし、この周波数差は主にNICT、東大の56mの標高差に起因しており較正することが可能です。NICTに比べて標高が低く重力が大きい東大では一般相対性理論が示唆するように時の流れが遅くなっていますので同一時間で比較すると周波数が小さくなります。従って2地点の標高差からこのシフト量は不確かさ0.1Hz以下で計算できます。

そして最終的にNICTと東大の時計の較正不可能な原因不明の周波数差は430THzのうちわずか0.04±0.31Hz(6,500万年に1秒)となりました。』

さてこの「原因不明の周波数差」のうち、どれくらいが「緯度経度の違いによる時間のずれに起因している」のでしょうか?

興味はありますが、「緯度経度情報が不明」ですので計算できませんね。』

 

・参考資料

「ジオイドとは」: https://archive.md/7dXJn :

「ジオイド 重力」: https://archive.md/0eMJR :

「NICT-東大間のファイバ長60kmにおいて光格子時計の周波数比較」: https://archive.md/ghvZd :

「時空の歪を探る時計」: https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/62-h24_2.pdf :の19ページ~

「相対論的ジオイド: 重力ポテンシャルと相対論的効果」: https://archive.md/BAAo0 :

「Fundamental Notions in Relativistic Geodesy - physics of a timelike Killing vector field」: https://presentations.copernicus.org/EGU2020/EGU2020-16528_presentation.pdf :

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/cdZFn