特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その5・静止系が客観的な存在だと何が困るのか?(固有速度の導出)

2023-07-14 03:03:58 | 日記

6、固有速度の求め方(あるいは基準慣性系の求め方)

固有速度は重要な情報でしたが、今まではその値は不明でした。

それでここではその不明だった固有速度の値を求めましょう。

さてそれで、まずは基準慣性系を導入します。

具体的には以前のページで示した

V12=(b-a)/(1-b*a) ・・・(1)式

を使います。

それで「LLの一般解の導出」で前提とした、そうしてこれは特殊相対論の前提でもあった「静止系に対して運動している慣性系の時間は遅れる」をここで使うのです。

 

以前のページで示した様に慣性系①の固有速度はa、同様にして慣性系②の固有速度はbです。

さてそれでまずは求めるべき時間の遅れは慣性系②が対象でありそれはsqrt(1-b^2)となります。

それに対して速度の加法則よりbをaとV12を使って表すと

b=(a+V12)/(1+a*V12) ・・・(6)式

となります。(注1)

ここでV12は慣性系①から②を見た時の相対速度を表しています。

 

そうしてまたこの時にsqrt(1-b^2)を「時間遅れの合成則」によって表すと

sqrt(1-b^2)=sqrt(1-a^2)*sqrt(1-(V12)^2)/(1+a*V12) ・・・(7)式

となります。

 

さてここで問題になりますのは固有速度a、およびbが不明である、という事です。

しかしながら慣性系①と慣性系②の時間の遅れの割合については測定ができそうです。(注2)

そうしますと(7)式は

R=sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)=sqrt(1-(V12)^2)/(1+a*V12) ・・・(8)式

と言う様に変形できます。

ここでRは2つの慣性系①と②の時間遅れの割合sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)の実測値を示します。

そうしてその実測値は(8)式の右辺から分かりますように2つの慣性系の間の相対速度V12と慣性系①の固有速度aで計算できるのです。

 

いま、固有速度aは不明ですが相対速度V12は観測可能な値です。

そうであれば

R=sqrt(1-(V12)^2)/(1+a*V12)

という(8)式から不明であった固有速度aを決める事が出来ます。

そうして固有速度aがわかれば固有速度bも決まります。

こうして2つの慣性系①と②の時間遅れが計算できることになるのです。

ちなみにこれによって基準慣性系が慣性系①と慣性系②に対してどの位置に在るのかも分かる事になります。

さてそういうわけで「固有速度を求める」には「時間遅れの合成則」の使い方が重要になるのでした。

 

注1:実は(6)式がもともとの速度の加法則になっています。

そうしてそれを変形したものが(1)式になります。

このあたり詳細は: https://archive.md/jydqn :にてご確認願います。

注2:これはランダウ・リフシッツの提案した方法では不可能ですが、以前のページで示した様に横ドップラー効果を使えば可能となります。

但しこの場合はダブル横ドップラーの測定で基準慣性系の存在を確認できた測定系が必要となります。

 

追記:ここで述べている考え方は従来の「2つの慣性系の間の相対速度Vによって慣性系の時間のおくれがsqrt(1-V^2)によって求められる」と主張されていたやり方とは異なるものになっています。

そうして従来の「相対速度Vによって慣性系の時間のおくれがsqrt(1-V^2)によって求められる」という考え方がそのまま「時間の遅れはお互い様」に結び付いていました。

しかしながら「LLの一般解の導出」によって「時間の遅れはお互い様」が否定されてしまいました。

その事がありましたので「時間遅れの合成則が実は固有速度を求めるのに使う事が出来る」という事にたどり着く事が可能となったのです。

そうして上記で示したように時間遅れの合成則を使うのが「この合成則のとても有用な使い方である」という事になります。

 

追記の2:固有速度がわかればようやく「MN図の唯一性定理」が示すところの「現実に対応した唯一のMN図が描ける」という事になります。(注3)

そうしてそのMN図のY軸は「客観的に存在する静止系」を示す事になります。

ちなみにそのMN図にプロットされる慣性系②の(t、x)座標値でtは座標時を表す事になります。

その座標時tは慣性系②の固有時T②と次の関係が成立しています。

固有時T②=座標時t*sqrt(1-b^2) ・・・(9)式

ここでbは慣性系②の固有速度です。

 

そうしてもちろん固有時T②は

固有時T②=測定時間間隔ΔT*sqrt(1-(V12)^2) ・・・(10)式

を満足しています。

ここで測定時間間隔ΔTは慣性系②の相対速度V12を観測する為の測定時間を示します。

慣性系②はこの時間間隔ΔTの間にΔXだけ移動しました。

従ってV12は

V12=ΔX/ΔT

で求める事が出来ます。

こうして(10)式から慣性系②の固有時T②が決まる事になります。

 

固有時T②が求まりますと(9)式より座標時tが求まる事になります。

もちろんその前に固有速度bを求めておく事が必要です。

以上の手順によってようやく我々は「MN図の唯一性定理」が示すところの「現実に対応した唯一のMN図が描けた」という事になるのです。

ちなみに固有時T②が固有速度を使う事でも、また相対速度を使う事でも同じように求められる、という事は「宇宙は実に巧妙にできている」と当方には思える事なのであります。

注3:「MN図の唯一性定理」: https://archive.md/ioPCx :を参照願います。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/sURDu