6、固有速度の求め方(あるいは基準慣性系の求め方)
固有速度は重要な情報でしたが、今まではその値は不明でした。
それでここではその不明だった固有速度の値を求めましょう。
さてそれで、まずは基準慣性系を導入します。
具体的には以前のページで示した
V12=(b-a)/(1-b*a) ・・・(1)式
を使います。
それで「LLの一般解の導出」で前提とした、そうしてこれは特殊相対論の前提でもあった「静止系に対して運動している慣性系の時間は遅れる」をここで使うのです。
以前のページで示した様に慣性系①の固有速度はa、同様にして慣性系②の固有速度はbです。
さてそれでまずは求めるべき時間の遅れは慣性系②が対象でありそれはsqrt(1-b^2)となります。
それに対して速度の加法則よりbをaとV12を使って表すと
b=(a+V12)/(1+a*V12) ・・・(6)式
となります。(注1)
ここでV12は慣性系①から②を見た時の相対速度を表しています。
そうしてまたこの時にsqrt(1-b^2)を「時間遅れの合成則」によって表すと
sqrt(1-b^2)=sqrt(1-a^2)*sqrt(1-(V12)^2)/(1+a*V12) ・・・(7)式
となります。
さてここで問題になりますのは固有速度a、およびbが不明である、という事です。
しかしながら慣性系①と慣性系②の時間の遅れの割合については測定ができそうです。(注2)
そうしますと(7)式は
R=sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)=sqrt(1-(V12)^2)/(1+a*V12) ・・・(8)式
と言う様に変形できます。
ここでRは2つの慣性系①と②の時間遅れの割合sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)の実測値を示します。
そうしてその実測値は(8)式の右辺から分かりますように2つの慣性系の間の相対速度V12と慣性系①の固有速度aで計算できるのです。
いま、固有速度aは不明ですが相対速度V12は観測可能な値です。
そうであれば
R=sqrt(1-(V12)^2)/(1+a*V12)
という(8)式から不明であった固有速度aを決める事が出来ます。
そうして固有速度aがわかれば固有速度bも決まります。
こうして2つの慣性系①と②の時間遅れが計算できることになるのです。
ちなみにこれによって基準慣性系が慣性系①と慣性系②に対してどの位置に在るのかも分かる事になります。
さてそういうわけで「固有速度を求める」には「時間遅れの合成則」の使い方が重要になるのでした。
注1:実は(6)式がもともとの速度の加法則になっています。
そうしてそれを変形したものが(1)式になります。
このあたり詳細は: https://archive.md/jydqn :にてご確認願います。
注2:これはランダウ・リフシッツの提案した方法では不可能ですが、以前のページで示した様に横ドップラー効果を使えば可能となります。
但しこの場合はダブル横ドップラーの測定で基準慣性系の存在を確認できた測定系が必要となります。
追記:ここで述べている考え方は従来の「2つの慣性系の間の相対速度Vによって慣性系の時間のおくれがsqrt(1-V^2)によって求められる」と主張されていたやり方とは異なるものになっています。
そうして従来の「相対速度Vによって慣性系の時間のおくれがsqrt(1-V^2)によって求められる」という考え方がそのまま「時間の遅れはお互い様」に結び付いていました。
しかしながら「LLの一般解の導出」によって「時間の遅れはお互い様」が否定されてしまいました。
その事がありましたので「時間遅れの合成則が実は固有速度を求めるのに使う事が出来る」という事にたどり着く事が可能となったのです。
そうして上記で示したように時間遅れの合成則を使うのが「この合成則のとても有用な使い方である」という事になります。
追記の2:固有速度がわかればようやく「MN図の唯一性定理」が示すところの「現実に対応した唯一のMN図が描ける」という事になります。(注3)
そうしてそのMN図のY軸は「客観的に存在する静止系」を示す事になります。
ちなみにそのMN図にプロットされる慣性系②の(t、x)座標値でtは座標時を表す事になります。
その座標時tは慣性系②の固有時T②と次の関係が成立しています。
固有時T②=座標時t*sqrt(1-b^2) ・・・(9)式
ここでbは慣性系②の固有速度です。
そうしてもちろん固有時T②は
固有時T②=測定時間間隔ΔT*sqrt(1-(V12)^2) ・・・(10)式
を満足しています。
ここで測定時間間隔ΔTは慣性系②の相対速度V12を観測する為の測定時間を示します。
慣性系②はこの時間間隔ΔTの間にΔXだけ移動しました。
従ってV12は
V12=ΔX/ΔT
で求める事が出来ます。
こうして(10)式から慣性系②の固有時T②が決まる事になります。
固有時T②が求まりますと(9)式より座標時tが求まる事になります。
もちろんその前に固有速度bを求めておく事が必要です。
以上の手順によってようやく我々は「MN図の唯一性定理」が示すところの「現実に対応した唯一のMN図が描けた」という事になるのです。
ちなみに固有時T②が固有速度を使う事でも、また相対速度を使う事でも同じように求められる、という事は「宇宙は実に巧妙にできている」と当方には思える事なのであります。
注3:「MN図の唯一性定理」: https://archive.md/ioPCx :を参照願います。