はやしんばんぱくの、めげてめけめけ、言論の不自由ブログ

全国各地へ飛び回り、めげてめけめけめげまくり、色々書いていましたが、ブログ終わりました。過去を読めばいい!サラバじゃ~!

『らーめん放浪記』麺36 本目。

2009年07月25日 15時28分21秒 | 連載書き物シリーズ
この前お家に帰ったのはいつだったかしら?
なんて女は考えた。
思い出そうにも忙しさの記憶が邪魔をして
なかなか直ぐには答えが出ない。
そうだ。
先週の金曜日帰ったっけ。
いやあれは先々週だった。
誕生日だったもの。
しっかり憶えている。
久々自宅に戻れたのは良かったのだけど
結局すぐに携帯電話が鳴って病院へUターンしたんだった。
結果、洗濯物と私物を新旧チェンジしただけ。
で、誕生日はどうしたんだっけ。
あれ?
私、誕生日いつ?
先週の?
先々週の金曜日だっけ?
あ~あ
憂鬱。
どうせまた今夜も帰れない。

夜間の見回り。
静まりかえった冷たい廊下をひと蹴りして
「もうっ!」
と女は強めにつぶやいた。
熊本県熊本市内『火の国総合病院』は
このところある事件により
立て続けに運び込まれた患者で
ベッドは満室の定員オーバー状態。
医師連中も看護師達も多忙な毎日に明け暮れていた。
市内ライブハウス『チロルチョコ』での
放火自殺未遂&殺人未遂事件の容疑者被害者両者がこの病院に入院
治療を受けている。
不謹慎な事を言ってしまえば
容疑者である『猪股 瓜二』という青年はまだ良い。
全身火傷で“上手く動けない”為おとなしいからだ。
厄介なのは被害者の『阿蘇 熊美』。
パンクバンド『OCTOPUS ARMY』のボーカルなのだが
これが健康そのもので
やりたい放題ワガママし放題の傍若無人な小悪魔状態。
小悪魔ならかわいいが
ありゃ邪悪な餓鬼畜生だ。

しかもあの事件後熊本では
我々も続けとばかりに自らの身体に火を放つ若者が後を絶たず
市内の病院施設は運び込まれた火傷の若い患者でいっぱい。
ここ火の国総合病院もまた同様だった。
張りつめた緊張感がピークに達し院内はピリピリムードが漂っていたのだが
ここに来てやっと
ひとまずの落ち着きを見せはじめてきている。

この角を曲がりまっすぐ進んだ突き当たりの個室が
『猪股 瓜二』の病室となる。
彼は今全身包帯でぐるぐる巻きの“ミイラ”状態。
火傷の傷が痛むのか
真夜中になると唸りはじめ
ナースコールで呼び出される事もしばしば。
鎮痛剤と睡眠薬を点滴にと思い向かうのだが
何故か部屋へ行くと唸り声はピタリと止んで
彼はスヤスヤと眠りつく。
はじめは嫌がらせかとも思ったが
どうやらそうではない様子で
毎回ただ部屋を訪れるだけで
彼は“マジで”スヤスヤ安眠してくれる。
“寂しいのか”
そう女は思ったりするのだった。

病室前。
今日はやけに静かだな。
そっと扉を開けた。

“ッキューン!”

暗闇から一瞬閃光が走り

―まっしろ―

女の瞳には
“2体の鬼”が“ミイラ”を担ぎ上げた状態のまさに“地獄御輿”な残像が
日光写真さながらに焼き付けられて
「ひゃっほ~っ!」
それは
彼女がこの世で見た最後の光景となったのだった。

弾丸は女のこめかみを貫いていた。
熱い額を押さえる間もなく
若い看護師は病室の床に倒れ込む。
残酷にもその上を
こ汚い若者と外人が
ズカズカと踏みつけながら駆け抜けて
猪股瓜二を連れ去って行ったのだった。


『らーめん放浪記』

〈2-(14)・熊本&福岡&北九州&宮崎&大分&鹿児島〉


カーラジオからは
今日もいつものアホなAM番組『午後サタ』が
ご機嫌に流れていた。

「“オツムパッカァ~!
っちゅう訳で私人気絶頂落語家『熊猫家 康康(ぱんだや かんかん)』が
本日もここ『ばってんメンタイラジオ放送局・博多親不孝通りスタジオ』より
ごきげんにゆる~く!お送りしちゃう訳ですが
私未だ九州に監禁され中の身であります!
長っ!
早く解放しとくれよ!
死んじまった『飛飛(ふぇいふぇい)』の捜査が未だに難航極めちゃってて
私も九州で足止めくらっちゃってる訳。
あぁ東京が恋しいよ~!
東京恋しやオツムパッカァ~!
なんじゃそれ!
九州の皆さ~ん!
もう暫くは九州で
取り調べついでにガッポリ稼がせてもらいます故
是非寄席に足を運んでおくんなまし!
土産差し入れ同時募集中!
待ってま~す!
では本日の1曲目まいりませう。
長崎県は佐世保市
今はさすらいの渡り鳥
ラジオネーム『不眠症』さんからのリクエスト。
なんのこっちゃ。
『ザ・ピーズ』で『シニタイヤツハシネ』”」


♪変態 凡人 年をとれ
シニタイヤツハシネ♪


「ビンゴッ!」
熊本県は阿蘇山の麓を爆走する軽トラック。
狂気に満ちた『(有)根津工務店』は木漏れ日を切り裂いて突き進んでいた。
殺人の容疑者として挙げられている若者『根津 実』と
銃刀法違反の容疑で指名手配されている外人『梟(ふくろう)・デ・リトマス』は
福岡県は香椎の交差点でクラッシュし
そのクラッシュが2体の凶暴な“鬼”を引き合わせてしまった。
直ぐ様2人は意気投合。
リトマスの運転していた盗難タクシーは大破した為その場に乗り捨て
ポンコツながらもまだまだ走行可能な『(有)根津工務店』に乗り換え
今度は2人で宛どもない暴走を開始した。

お互いの素性を語り合ううち実に2人は
“ピストル”というキーワードで繋がっていた事をここで初めて知ったのだった。
北九州市は小倉のホテルにて根津がおっさんの額をぶち抜いたピストルは
足を辿れば元の出所はリトマス自身であったのだ。
偶然が生み出すパワーとは恐ろしいもので
話を進めるうちに2人は
何やら根拠の無い力が湧いてきて
漠然とデカイ事を仕出かしたい衝動にかられだした。
とりあえずリトマス所有の“ブツ”を隠し場所から回収し
そのまま熊本市内の『火の国総合病院』に侵入。
昔の悪餓鬼仲間『瓜坊』を救出した訳だ。
瓜坊の仕出かした事件の事は
ラジオのニュースで知っていた。
最高にファンキーな事を仕出かしやがったと
大喜びしたものだ。


♪満足するくらいの夢でもみてれば
いちいちにつまる程のヒマはないのさ
何べんも思い通りにいかないばかりで
とうとう良い夢もみれなくなったのさ♪


自分のリクエストした曲がかかり興奮気味のリトマス。
「ビンゴッ!
コレデ2ドメネッ!」
「あうあうあ~っ!」
リトマスのピストルをいじりご機嫌な瓜坊。
「“アウアウ”キシャンオモロカネ~!」
「だからこいつは“瓜坊”!
“アウアウ”じゃなかとよ。
のう!瓜坊よう!」
じゃれる『ネズミ』こと根津。
ヘッドロック。
「あう!」
瓜坊火傷が痛い。
「がはは!すまんのぉ!」
「次ハドコイクト?」
「おぅ。次は秋翔たいっ!」
「WAO!アキショウ」
「あいおう!」

突然
“ッキューンッ!”
フロントガラスが
“バリーンッ!”

「あうあーっ!!?」
瓜坊誤ってピストルを発砲させてしまい
弾丸はフロントガラスを貫いた。
「!?」
唖然とする一同。
「ガハッ!
ガハハハッ!」
「がはははっ!」
「あうあああっ!」
秋翔から貰った土産の東京タワーキーホルダーも
大爆笑しているような気がしたネズミであった。

「♪シニタイヤツハシネ
シニタイトキニシネ
シニタイヤツトシネ
シニタイヤツハシネ♪」
ラジオと共に歌声は
いつまでも続く。


『タコインターナショナルKK』による
『他己啓発セミナー』第2段階の日の朝がやってきた。
折尾のアパートからタクシーで
会場となる北九州の遊園地『スペースタコワールド』へ向かう『白熊 秋翔(あきしょう)』。
これから始まる4泊5日の第2段階とは一体如何なるものなのか。
もしや
いやまさか
こんな堅い信念を持つ自分も“洗脳”されてしまうのか?
そんな不安はあるにせよ
彼女である『地頭鶏(じとっこ) コケ子』を守らねばという使命感と
糞セミナーの裏を暴きぶっ壊してやるという正義感に燃え上がっていたのだった。


♪調子んのって弱音吐いて弱気になれてる
ヒマなオイラは後悔するタラレバと
する事何もないならケツでも出せば
オラもうする事何もないしケツは出たまんま♪

可笑しな歌もあるもんだ。
まるで今の俺みたいだ。
タクシーのラジオに耳を傾けながら
秋翔は苦笑していた。

途中赤間駅で待ち合わせていたコケ子を乗せて
いざ会場へ向かう2人。
握りしめあった秋翔・コケ子お互いの手のひらが
異常に汗ばんでいるのを感じていた。

「♪シニタイヤツハシネ
シニタイトキニシネ
シニタイヤツトシネ
シニタイヤツハシネ♪」
コケ子が鼻で歌ったような気がした。


宮崎県内高速道路
『地頭鶏 燻(いぶし)』とツレの『ブータン』は
焦る気持ちを無理矢理抑えつつ
福岡県は博多へとミニのエンジンをフル稼働させ
休む事無く爆走し続けていた。
待ってろコケ子!
必ず“助けて”やるケンな!
ブレーキを踏み忘れているんじゃなかろうかと思う程
「ぶぅーっ!」
ミニは走り続けたのだった。


♪わざと焦ってるんだ
ひとりで焦ってるんだ
バカがひとりでわざと終わる
Happy Birthday To You
年をとれ♪


阿蘇熊美にわざわざ東京から呼び出された
スポーツ新聞『スポコン』記者『白烏(しらからす)』が
火の国総合病院に到着した時には既に
呼び出した張本人の“クマミー”は退院していた。
しかし病院内はそれどころではなく
看護師射殺&患者誘拐事件でかなりバタバタ状態。
ただならぬ事件性を察知した白烏は
「ぎゃはっ!」
ペンを舐め舐めカメラを構えるのだった。

そんな頃クマミーは
マネージャー『伊達 澄(いたち すみ)』運転のもと
北九州はスペースタコワールドへ向かっていた。
シークレットライブを催すらしい。
急な決定のようだ。
リーダー兼プロデューサーの『熊洗(ぐまあらい)アツシ』とメンバーは
先に会場入りしている。
「ピーズか…」
噛んでいたガムを窓から外へ吐き出して
クマミーはラジオに合わせガナリ歌う。

「♪正面からマトモに
自分をみれねーよボロだもん!
暮らしを変えるより
暮らしを変えるより夢を変えたいわ!
やりたい事が多すぎて
何もやりたくなくなっちまった!
やりたくない事が多すぎて
何もやりたくなくなくなっちまった!
会いたい人が多すぎて
誰にも会えなくなっちまった!
考えることが多すぎて
どうでもよくなっちまった!♪」

「左様で…」
伊達が意味なくつぶやき
クマミーに頭をどつかれた。

♪シニタイヤツハシネ♪

大分は湯布院のパン屋店主『老婆 味美(ろば みみ)』は
姉を亡くした佐賀唐人町連続放火骨無し事件から
“火元”探しを決意する。
しかし…。

♪シニタイヤツハシネ
シニタイトキニシネ
シニタイヤツトシネ
シニタイヤツハシネ♪


その頃『白熊 夏子』は
セミナーの“アシスタコ”を勤める為に
スペースタコワールドの会場にいた。
受付で大量な小銭をばらまきアタフタする青年がいる。
彼が当セミナーに支払う為に必死で貯めた小銭なのだろう。
夏子は青年が微笑ましく見えて仕方なかった。

「費用やるからセミナーに潜り込めって
“源さん”なにも小銭で40万もよこさなくても
これってただのイジメじゃんか」
ブツブツ愚痴たれながら
ばらまかれた小銭を拾う刑事『鳩山 豆郎』であった。


♪誰も止めたりしないよ しねえ
すぐに忘れるよ しねえ
五体満足のままで しねえ
何でも出来るくせに しねえ♪

そんな頃鹿児島らーめん屋台『黒猫』には
クール宅急便にてドデカイ荷物が送られて来ていた。
大汗流し必死に運ぶ『クロネコ戦艦ヤマト』のドライバーさん。
送り主は『タコインターナショナルKK』社長『晴流屋 禿蛸(はれるや はげたこ)』。
梱包を解くと
中身は冷凍された『羽犬塚 青春(はいぬづか あおはる)』の
バラバラ死体だった。
1枚メモがペラリ。

『おまちっ。
とりあえず
一丁あがり!』

♪シニタイヤツハシネ
シニタイヤツハシネ♪

ノイズだらけのラジオがじきに
“ザーザー…”
と砂嵐へ変わった頃
さて、材料はメリーゴーランドに乗って
“する、しねえ”を天秤に
何かが始まり
そして
終わろうとしていたのだった。

♪パララ~ララ
パラララララ~~~♪

街に夜鳴きの音(ね)が響く。

めけめけ~。


『らーめん放浪記』つづく。

(注)この物語はフィクションです。

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