はやしんばんぱくの、めげてめけめけ、言論の不自由ブログ

全国各地へ飛び回り、めげてめけめけめげまくり、色々書いていましたが、ブログ終わりました。過去を読めばいい!サラバじゃ~!

『らーめん放浪記』麺94本目・『さくら』。

2010年10月09日 15時49分18秒 | 連載書き物シリーズ
“「ジジ…ジ…♪
♪こんにちは 赤ちゃん あなたの笑顔
こんにちは赤ちゃんあなたの泣き声
その小さな手つぶらな瞳
はじめまして わたしがママよ…♪
「のんちゃん、生まれてきてくれてありがとね。
あなたのかわいい笑顔それだけで、ママは胸いっぱい、おかわり要らずです。
その小さな手、つぶらな瞳にいっぱいいっぱいの感謝!」
という広島市はラジオネーム、のんちゃんママさんからのリクエスト
梓みちよさんで、こんにちは赤ちゃん、聴いていただきました。
さて、おおっと、もうこんな時間!?
はい、時刻は0時をクルリと回っちゃいました!
ドライバーの皆様、今夜も安全運転でまいりましょう!
♪SanSanラジオ『ケロケロケロンパの、今夜も君を離さNight!』♪
ズビズバ~~~!」”

助手席に、ご存知“偽者”『九 官鳥(きゅう かんちょう)』さんを乗せ
『羊 命酒(よう めいしゅ)』さん運転の『フグさん便』トラックは
鳥取県米子市から広島市内へ向かって爆走しております。
こんな時間に走っている車がこんなにも多いなんて。
真夜中の真っ暗闇な国道をひた走る、意外な数もの車達。
それぞれが放つヘッドライトの光りが前方を照らし
数珠繋がりとなって“まるで祈る様に”等間隔で前進してゆきます。

ビュンビュンとすれ違う対向車線の車達の光りと
夜更かしさん宅から漏れる光りと街灯の光りと
様々な光りが暗闇を、様々な角度で照らしています。
かすかな光りも集まれば大きな光りとなる。
その光りが暗闇での希望となるのです。

光りは生命のともし火、の、ようなもの
そんな考えが、今の羊さんの支えだったりしまして。
きゃしゃでいてゴツゴツした手の平。
片手で大きなハンドル握りしめて
もう片方の手で自分のお腹を優しくなでる羊さん。
優しい笑顔が幸せの表れです。

助手席の九さんがパワーストーンの数珠を手首からジャラジャラと外し
そいつを羊さんのお腹にあてがいました。
「ハオ!」
赤信号。
数珠繋がりの車の行列がゆっくり停車してゆきます。
2人は目を合わせ、ほんわかとした表情で微笑み合いました。
「♪こんにちは赤ちゃん、あなたの生命
こんにちは赤ちゃん、あなたの未来に
この幸福が♪」
「おいらの」
「フフフ…
♪パパの希望(のぞみ)よ
はじめましてわたしがママよ♪」
信号が青へ変わります。
ゆっくりと、再び“車数珠”が動きだしました。

“「さてここでもう1曲。
三原市ラジオネーム春よ恋さんからのリクエスト。
最近よく聴くな~
僕も大好きなこの曲
懐かしアイドル『羊田 妖子(ひつじだ ようこ)』さんのヒット曲で…」”


『らーめん放浪記』純情旅情編。

〈3-(40)・『さくら』〉


“「♪さくらぁ
胸のつぼみ開くわ
あなたへひらり舞い降りて
素敵な大人になるの
さくらぁ
お願いそっと受け止めて
少し背伸びしたわたしを
抱きしめてKISSして
Darling 今わたしはあなただけのもの
……♪」”

ラジオから流れ出る懐かしいメロディにニッコリ。
羊さんの心はゆりかごの中でウトウトする赤ちゃんのように
安らかでかわいらしい和みをみせていました。
あの頃の“自分の歌声”にめっちゃうっとりです。

羊さんは身篭ったとおぼしき自分の身体が愛おしくてなりません。
産婦人科へ行く暇もお金も立場も無い為にしっかりとした確信に至ってはいないのですが
自分の事は自分が1番良く分かるものです。
今羊さんの体内で起こっている現象はまぎれもなき妊娠。
何にも変え難き幸せのカタチであると羊さんは信じて止みません。
はてさて真実を知るはコウノトリさんのみなのでしょうか。
真(まこと)の実(み)を頬張ったコウノトリさんが羊さんの心に幸せを運びます。
今は、今はこのまま
このままでいい
決して掴みきれちゃいないこの幸せでも
信じる事が大きな希望(のぞみ)なのだから。

昔はマイクを握った手。
今は労働者のゴツゴツした手をお腹にあてがいながら
羊さんは希望の我が子に語りかけます。
「あなたは、さくら」
フフフと笑う羊さん。
「可憐で綺麗でそして妖艶な美しい、さくらヨ」
フフフ。
「あなたのおなまえは、さくら」
フフ。
「アタシのカワイイさくらちゃん」
九さんが割って入ります。
「さくら
女の子だったらその名はイカすが
男の子じゃ厳しいぜ」
「女の子ヨ。
アタシ分かるの。
この子は、女の子。
この子の名は、さくら」
「そうかい」
「フフフ…」
「だったら
さくらのひめって書いて“おうひ”ってのもカワイイぜ。
『羊 桜姫(よう おうひ)』」
「それもいいカモね。
でもやっぱり、『さくら』が良いワ。
きれいに、ひらがなで、さくらヨ」
「そうかい」

ラジオが歪みながらも流れます。
“「キュイン…ジジ…
もしも、もしもあなたが
中身は今のあなたのままで過去の自分に戻れるのだとしたら
いつに戻りたいですか?
ジジジ…
もう1度
中身は、経験豊富な今のあなたのままで過去をやり直せるのだとしたら
あなたはどうしますか?」”

羊さんの大好きな
『もしも明日が』のコーナーです。
ついこの間までの羊さんは
輝く18歳のあの頃の、アイドル時代の自分に戻りたいと
そう考え妄想に耽っていたのですが
今の羊さんならこの質問に迷い無くこう答えることでしょう。
「今のままで良い!」
この幸せが、ずっと続けば良い。
今があれば
「もしもは要らない!」

“「さて、今夜の放送は、明日よりいよいよ開催されますイベント
『らーめんバトル』の前夜祭が催されております広島市内平和記念公園の近所
『MMR(MomijiもみじManjyuu饅頭Radioラジオ)』放送局よりお送りしておりますが
先ほどから何やら外がやけに賑やかで騒がしい。
ピーポーピーポー、ウーウー、ザワザワと、うるさいのなんのって。
ええ~『もしも明日が』のコーナーの前に
ちょっと異常な緊急ニュースです。
広島市内平和記念公園で先ほど、おびただしい数の変死体がザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー………」”

突如としてラジオ電波の入りが悪くなりました。
ただただノイズばかりが車内に響き渡ります。
そこへ

“You’ve Got Mail”

九さんの携帯にメールの着信です。
九さん、折りたたまった携帯をパカッ
メールボックスをピッと開きます。

“ガッハッハ豆郎ちゃん!元気か!
猫目が小説を書き終え
ある程度材料も揃い
そこそこ準備は整った!
お主のトラックに詰まれたソレの到着を待っておる!
早くせい!
らーめんバトル開催前に
胡町の流川通り奥に待機しとる黒猫へ来い!
お主の上司、犬山より、ガハハッ!”

「ポ…ポポ…
ポッポッポ…
ポッポッポッポッポッポッポッ!
ポーーーッポッポッポッポッポッ!」
携帯画面の光りが
変に狂った笑い声を上げる九さんの顔を
より一層不気味に演出し
闇夜にぼんやりと浮かび上がらせていました。

「…ハ…オ……」
そんな九さんを見た羊さんは
押し寄せる巨大な不安を必死に打ち消そうと
何度も何度も
何度も何度も必要に自らのお腹をさすり続けたのでした。

「さくら、さくら…」
とささやきながら…。

『フグさん便』のトラックは
闇夜の中をひた走り
羊さん、九さん、そして…
“3人”を地獄へと運んでゆくのであります。

車の数珠が、てんでバラバラとなったり、繋がったりしながら
いつしか光りが巨大にまとまって
やけにまぶしい朝をむかえました。

広島、到着。


♪パララ~ララ
パラララララ~~~♪

街に夜鳴きの音(ね)が響く。

めけめけ~。

『らーめん放浪記』つづく。


(注)この物語はフィクションです。

写真。車、車、車…。


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