1度地獄を見た阿部ちゃん。今地獄を見ている現代社会。

『阿部寛』
僕の好きな日本人俳優の1人だ。
あの木彫りの様な顔と
呪われた様な目付きと
置いていかれそうな声は
トータルして非常に“ずるい”。
完全に“ツボ”だ。

昨晩秋田のホテルで
そんな阿部寛の主演するドラマ『白い春』を観た。
ドラマの狙いと“阿部ちゃん”のずるさが混ざり合いとても奇妙で面白い。
いったい“阿部ちゃん”こと阿部寛なる者の“ずるさのツボ”は何なのだろう。
そんな事をついつい考えてしまう程魅力的な俳優さんだ。

以前読んだ『つかこうへい』のエッセイに
阿部ちゃんの事が書かれてあった。
もともとは『メンズノンノ』等のカリスマモデルとして活躍していた阿部ちゃんは
バブル崩壊と同時に人気が低迷した頃『つか』さんの舞台に参加していた。

当時の阿部ちゃんは過去の栄光を振り払うかの様に
朝から晩までがむしゃらに芝居の稽古に取り組み
必要以上にストイックになり汗を流し
モデルであった自分のキャラをかなぐり捨てて
狂った目付きで敢えてどん底まで落とし這い上がろうとしていたと
『つか』さんのエッセイには書かれてあった。

人気を無くしモデルとしての価値も無くし
もうこれ以上失うものは何も無い精神だろう。
『つか』さんはそんな頃の阿部ちゃんを
“モデル時代なんかより遥かに魅力的だ”
といっておられた。

成る程僕も同感だ。
モデルとして『笑っていいとも』等に出ていたあの頃の阿部ちゃんよりも
今の“ずるくて怖い”俳優阿部ちゃんの方が
心えぐられる程魅力的だ。

また俳優デビュー作の映画『はいからさんが通る』時代の爽やかな阿部ちゃんよりも
最近の映画『自虐の詩』のヤバい阿部ちゃんの方が
ずば抜けてこちらに入り込んで来る。
『はいからさん～』よりも『自虐の～』の方が
原作マンガのキャラまんまかそれ以上な迫力だ。
土足で見ている側に迫り来る。
ドラマ『トリック』や『ドラゴン桜』
『アットホームダッド』や『結婚できない男』の様なヤバさもかなり良い。

阿部ちゃんは自分自身を良く知っているのだ。
本来のキャラも作られたキャラもみな熟知しているのだ。

そうなるとおのずと周りの期待や反応が見えてくる。
悟られないようにある意味“ブラックな天然”を維持出来る。
そんな全てを阿部ちゃんは自分で計算して演じているように思う。
ちやほや、どん底、這い上がり、維持し、更に上を見る。
『つか』さんの言葉を借りて言うならばまさに
“1度地獄を見て来た者の強さ”
なのだろう。

阿部ちゃんの“ずるさのツボ”は頭と顔と精神の良さなのだろうなぁ
なんて勝手に思うのであった。

関係無いが阿部ちゃんは大のサウナ好きらしい。
ほぼ毎日サウナに入って汗を流しているそうだ。
サウナ好き。
良い！

さて今日も晴天の中秋田～岩手回り。
出張最終日だ。
やはり厳しく無いといったら嘘になる程苦戦はしている。
そんな中でもご新規さんが決まったりと明るい兆しもあったり。

いつまで続くのかってくらいしつこく時代にまとわりつく不景気。
そんな世の中だからこそ
営業としては自社商品を熟知し
世間を熟知し
お取引先さんを熟知し
自分という者をしっかり捉えておかねばと
思ったりするのである。

それが先方のツボにはまって
こちらに入り込んで来て下さった時って
何かが開けたようでとても嬉しい瞬間なのだ。

♪果てしなく続く様な 世知辛い世の中を
半分とどれくらい 僕達は走ったか
雲ははれ 猫も来た あくびする
今日のそんな事が今の
君と僕の全て♪

新幹線車内。
iPodで聴いた『ユニコーン』の曲『ひまわり』が
そう言っていた。

いろんな意味で地獄の様な現代。
何が大事か
どう強く生き抜くべきか
考えていたら
寝てもうた。

めけめけ～。

写真。秋田のローカルヒーロー『超神ネイガー』キーホルダー。
土産に購入。