『出待ち』お待ちぃ！

JR＆阪急宝塚駅を下車し幾分か歩くと
道は徐々にお洒落な小道へと繋がってゆく。
宝塚大劇場へと続く『花のみち』だ。
お目当てのスターさんや歌劇生徒さんの事を想い胸踊らせながら
ファン達はこの道を劇場へ向かい足取り弾ませ歩いてゆく。
夢とロマン満載の小道である。

そこにはロマンチックでかわいらしいお店が建ち並んでおり
まさに歌劇はそこから始まっているかの如く
何か良い事ありそな予感がぷんぷんと漂っている。

ただ宝塚歌劇好きな方曰く
そんな劇場周りや花のみちも昔に比べたら随分と寂れてしまったそうで
少々華やかさに乏しいようだ。
それにしたってまだまだ独特な雰囲気と夢は充分にあるがなと
本日宝塚を訪れてみて何となく感じられた。

宝塚の繁栄はその時その時のスターさんや芝居の内容にもよるようで
スターさんのカリスマ性が高ければ高い程当然ファンは集まるし
ド定番な鉄板の演目や芝居に話題性があれば
これも当然足を運ぶきっかけになるだろう。
過去のトップ男役娘役は色々だが
天海祐希や大地真央や黒木瞳なんかが
『ベルばら』やら『エリザベート』やらやってた時代なんかは
完璧わんさかファンが集まりお金を落としていってたんじゃなかろうか。
ファンでない僕にはそこらへんよく分からんが。
とにもかくにも宝塚歌劇はメジャーなオタクの世界に違いはない。
だからこそ独特なのだ。

昔、東京日比谷の野外音楽堂でライブを観た後の帰りに
東京宝塚劇場付近でいわゆる『出待ち』を目撃した。
『出待ち』とは終演後スターさんの帰りを出口で待ち
手紙やプレゼントを渡したり悪質なファンからスターさんをガードしたりする行為の事で
同事に『入り待ち』というものもある。
『入り待ち』は『出待ち』とやる事同じで
来る時か帰る時かの違いだけのようですが。
そんな『出待ち』をしている歌劇ファン達を銀座でたまたま見かけてしまった訳だ。

劇場裏手に物凄い数の女性が何故か均等にかたまりたむろっている。
そこには“規律”があるようで
塊が異様に“きっちり”していて怖かった。
『笑っていいとも』収録後にタレントが出て来るのをアルタ裏で待つファン達みたく
ぐちゃぐちゃざわざわ無秩序に溢れてる感じではなく
規則正しく上手い事まとまっているのである。
どうやら“元締め＆上層部”っぽい連中がいて色々取り仕切っており
それにくっついた“金魚の糞的二番手”が指示したり行動したり
後はよく分かっていない“新人”が言われるままにうねうねしているような状態だ。

そんな感じの
“静かに過激な歌劇ファン組織”
が成立しているように見え
その上品な“獣達”がたった1つの目標物
つまりは“獲物”をひたすらじっと待ち続けている。
物凄くディープな世界で不思議だった。

スターさんの登場をじっと待つ『出待ち』集団をじっと見つめる僕。
あまりの動きの無さに飽きてしまい
その時はそそくさと夜の有楽町へ飲みに行ってしまったが
またあの光景を見てみたいななんてその後に思ったものである。

たまたま先日うちの社長と宝塚歌劇について話てたらば
「今でも宝塚の劇場で『出待ち』ってやってるのかしら。
そもそもそんなスターって今いるのかなぁ？」
と社長が言いだした。
どうなんだろう。
僕は何度も営業で宝塚のそこらへ出向いているが
今までそんなん見た事ないな。

しかし
そんな光景を
あの日比谷の夜の様な光景を
今日まさか本場の宝塚大劇場で拝む事になろうとは。

冒頭の写真がそれだ。
『出待ち』だ。
どさくさ紛れに撮ったら睨まれた。
怖かった～。
一部分しか写ってないのが悔しいが
出入口から駅に向かって点々と塊が散らばっていた。
これはスターさんのガードの為か
はたまたファンの権力差の形か。
まさにファンまで
♪すみれの花～咲く頃～♪
的お上品フォーメーション。
僕は塊を横目にみながらお取引先さんへ仕事に向かった。

お取引先さんでは『出待ち』話で盛り上がる。
お取引スタッフさん曰く
『入り待ち』常連のおっさんオカマファンがいるそうで
毎朝必ずミニスカート姿でじっとスターさんを待っているそうだ。
そのおっさんオカマはファン達の信頼も得ているようで
よく仕切ったりしているらしい。
スゲー！
見たい！
でもおっさんオカマは『入り待ち』専門らしく
『出待ち』には姿を表さないとの事。
う～む残念でならない。

商談も終わり元来た道を駅へと戻る。
『出待ち』の塊は体制を崩さずに
まだそこにそのまま“あった”。

暑いのでのんびり歩いて駅へと向かう。
阪急宝塚駅に差し掛かる手前
僕の横を自転車が2台駆け抜けた。
あ、あれはっ！
宝塚歌劇のスターさんだった！
前を走るは見るからに男役の方。
後ろは多分娘役の方。
公演と公演の合間にちょいと買い物へ出て来たのだろう。
きっとあれは衣装まんまだ。
カッコエエわ～っ！
べっぴんさんやわ～っ！
思わず見とれてしまう。
おっさんオカマ歌劇ファンの気持ちが
多少なりとも分かった気がした。

ファンになろうかしら。
なっちゃうわよ。

なんちゃって。

めけめけ～。

写真。出待ち。