秋田発東京行き“なまこ”。

晴天。
すがすがしい。
爽やかに秋田市内回り。
半袖が心地よい。
しかし行く店行く店で
「あらまあ寒くねぇがぁ！？」
と言われる。
寒くない。
いやむしろ暑い。
急いだりしたら汗がにじむくらいだ。
「信じらんねぇな！
若けぇ証拠だぁ！」
「んだなぁ！」
と、いじられ
まんず“掴み”はOKだ。

秋田はまだまだ朝晩はかなり冷え込むそうで
ストーブが手放せないそうだ。
昨晩夜9時すぎに秋田入りしたのだが
僕にとっては全く寒くなかった。
ひんやり気持ち良かった。
これでストーブなんかたかれた日にゃ
んなもんたちまちサウナだ。
罰ゲームだ。
お笑いウルトラクイズだ。
辛い！
聞いてないよぉ！
ダチョウ倶楽部だ。

こんな時いつも思う。
「僕の身体はいったい何なんだ！？」と。
何時でも何処でも体温高く火照ってて
暑っちい暑っちい汗ダラダラ。
鬼社長には
「あなたが会社にいる日は社内の気温が急激に上昇して暑苦しいわ。
早いトコ外回りに出て行って欲しいわ」
などと言われる始末。
冷え症を体験してみたい！
なんて言ったら冷え症にお悩みの方々に叱られそうだが
1度で良いから冷えてみたいなんて思ったり。
それはそれでまた違った辛さがあるのだろうが。

丁度良い気候の中、秋田をくるくる回る。
不景気で厳しいっちゃ厳しいが
皆さん何とか乗り気ろうと必死だ。
「東京はこんなに厳しくないんでしょ？良いわねぇ」
なんてあちこちで言われるが
そんな事は無い。
ちょー厳しい。
「秋田は日本1貯蓄が少なく自殺が多い県だからね。
もう大変よ」
昔秋田は石油と米で大いに潤っていたそうだ。
ぬくぬくと何の危機感も無くきてしまい
“貯蓄する”という行為を何処かに忘れてきてしまったらしい。
自殺は何故多いんすかねと尋ねると
「分がんねぇが
ま、とにかく死にてぇんじゃねぇが？」
これまた良くわからん答えが帰ってきた。
おいおい。

お取引先さん曰く東京は秋田と違って不思議で恐ろしいそうだ。
はじめて渋谷へ行った時のあの“人溢れ”の衝撃は
未だに忘れられないと言う。
溢れかえった人々を見て
「この人達は皆、帰る所があるのだろうか」
なんて思ったそうだ。
上野や新宿の公園で思うならまだしも
無きゃそりゃ浮浪者だ。

食べ物なんかも東京は高いお金払わないと美味しいものにめぐり会えないし
こっちならそこそこな値段でめっちゃ美味いものがたらふく食べられるのに。
確かにそうだ。
東京は土地代高いから仕方ない。

地物で新鮮なもんはみんな東京に取られちゃって
地元民の口にはなかなか入らないのに
みな東京に美味いもん大集合しているのに
軒並み美味くないのは許せんし不思議らしい。
そりゃ高級料亭なんかに流れちゃったりしてるから仕方ない。

あるオーナーさん曰く。
「私“なまこ”が大好きでね。
“なまこ”よく食べるんだけんどもさ。
周りからは“なまこ”が大好物だなんて珍しいなぁなんて言われったり
“なまこ”？気持ち悪りぃなんて言われったりするんだけんどよ。
もう好き過ぎて食わずにはいられねぇのさ。
秋田の土崎港なんかで“なまこ”さ大量に上がるんだけんどもよ
良い“なまこ”は全部東京に取られちゃうのよ。
いやいっぱい売ってんのよ
売ってんだけんど。
良いのがさぁ食べたいのよねぇ。
上等な“なまこ”！
食いてぇなぁ」

不謹慎かもしれないが
思わず想像してしまう。
そのオーナーおば様が生の“なまこ”にかぶりついている姿を。
あのうねうねしたブツブツした
押すと海水をピュッピュッと水鉄砲みたく吐き出す
あの気味悪い物体に
ガブリ喰いつき片っ端から食いまくり
「うめえ！うめえ！」
と叫んでいる姿を。
いつしか僕の頭ん中で上品なオーナーおば様が
“なまこ好きのなまはげ”に変貌し
「良質な“なまこ”いねぇがぁ！
買い占めてる築地のナカガイはいねぇがぁ！」
と叫びまくるのだった。

おば様…東京は“なまこ”そんなにいりませんから
どうか堪忍を！
なんのこっちゃ。

この“なまこ”といい宮崎のマンゴーといい北海道のカニといい
その他色々地方の物産で良いものって
それなりのところ回って
それなりの人々のもとへと流れゆくもんなのだろうか。
その流れはどこの世界も同じか。

うんまい秋田の“なまこ”！
食ってみたいなぁ。

うめえ“なまこ”いねぇがぁ！
築地行け。

めけめけ～。

写真。駅前のなまはげパネル。