時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

蜜蜂と遠雷 下

2019-12-11 | 読書
2次予選での課題曲「春と修羅」
この現代曲をどう弾くかが
3次予選に進めるか否かの分かれ道だった
優勝候補筆頭
マサル・カルロス・レヴィ・アナトールの演奏は
素晴らしかったが
高島明石は
自分の「春と修羅」に自信を持ち
勝算を感じていた
12人が残る3次(リサイタル形式)を経て
オーケストラと
コンチェルトを弾ける本戦に勝ち進む
本戦出場者6人は誰!?
そして
優勝を手にするのは…



風間塵は
まさに‘ギフト’でした
栄伝亜夜にとっては
一度ならず
二度 三度と
亜夜を覚醒させた
最高の‘ギフト’でした
ただ
逆もまたしかり
亜夜の存在は
塵にとっても
大きな‘ギフト’だったと
思います

この作品には
基本的に
嫌な人間が登場しません
クラシックを
音楽をこよなく愛する者たちだけが
登場しています
コンテスタントが
自分の人生のすべてかけて
真摯に
クラシックと向きあい
音楽を奏でるシーン
それらを
色眼鏡ではなく
音楽家のプロとして
時に
いち音楽を愛する者として
公平に審査する
審査員が語るシーン
純粋に
コンテスタントが奏でる
音楽を満喫する
観客のシーン
どれもこれも
美しいのであります
リアルな世界では
どうなんだろう
少なくとも
その昔
σ(^_^;)が
クラシックピアノの
コンクールなるモノに
出た時には
誰かを
ねたんだり
蹴落とそうとする
感情は湧いてこなかったなぁ~
って
規模がコンクールの規模が
比較にならんか


良い人ばかりが
登場するけれど
だから言って
物足りない!
と言う感じを与えない!
『蜂蜜と遠雷』は
メインとなる
風間塵
栄伝亜夜
高島明石
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
四人のバックボーンについて
必要以上に
深く掘り下げず
極力
コンクール会場内で
繰り広げられる
演奏描写や
演奏の合間に語られる
彼らの会話だけで
読者を引き込んじゃうから
凄いわ…

入賞は逃したけれど
音楽家として
生きていこうと決心した
明石と

亜夜
マサル
しいて言うなら
四人が絡むシーン
読みたかったぁ~
明石の音楽性を
塵がどう感じたか
知りたかったぁ~

何年かかってもいいから
その後の
彼らを描いて欲しい
例えば
マサルが作曲した曲を
亜夜が演奏するの

そのピアノは
塵の自前のピアノなの
例えば
塵と亜夜とマサルが
日本でコンサート開くの
小さな会場なだけど
そこに
国内で演奏を続けている
明石が参加するの
お客さんは
なんと
子供だけ!
とか

耳を澄ませは
こんなにも世界は音楽に満ちている
ねえ 先生?

どこからか
蜜蜂の羽音が聞こえてきた
いつも聞いていたあの羽音は
世界を祝福する音なのだ
せっせと命を輝きを集める音
まさに
命の営みそのものの音

少年はもう一度大きく伸びをしてから
くるりと海に背を向けた
パッと駆け出し
一目散に海から離れていいく

音楽が駆けていく
この祝福された世界の中で
一人の音楽が
ひとつの音楽が
朝のしじまを切り裂いて
みるみるうちに
遠ざかる


頭の中に
塵が走り去った後の
浜辺に
打ち寄せる波の音と
朝日の昇る光景が
浮かんできました
静かな感動が
湧き上がり

涙しました

やはり
映画は見ないでおこう
この余韻
ぶち壊されたくない!


そうそう
最後になりましたが
第6回芳ヶ江国際ピアノコンクール
審査結果
書かれてました

第一位:マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
第二位:栄伝亜夜
第三位:風間塵
第四位:チョ・ハンサン
第五位:キム・スジョン
第六位:フレデリック・ドゥミ
聴衆賞:マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
奨励賞:高島明石/ジェニファ・チャン
菱沼賞:高島明石
(日本人作曲家演奏賞)

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