KAMAKURA☆CHAMPROO

見る前に跳べ!「無計画に走るのは世の常」が座右の銘

月刊漫画ガロINDEX 1966年10月号(通巻26)

2006-12-03 01:02:59 | COMIC
目次

白土三平「カムイ伝」第23回
上野昂志「目安箱」第19回 安全保障の逆説
勝又進「作品集」第5回
つりたくにこ「ナンセンス」
鳴海幸保「悪の華」
佐々木守「日本忍法伝」第13回(小説)
藤沢光男「青空太郎の絵日記」第8回
正井滋魚「電話魔」
楠勝平「名刀」
水木しげる「暑い日」
水木しげる「昭和百四十一年」


勝又進「作品集」



勝又さんが4コマ漫画で入選したのは66年6月号だそうです。初めはカムイ伝よろしく忍者者を志していたが、長井さんの勧めで4コマ漫画を続けたとのこと。(TBSブリタニカ刊「ガロ曼荼羅」)
社会風刺的な4コマですが、当時ののんびりした雰囲気が出ていて、殺伐とした現代から見るとなつかしい。


つりたくにこ「ナンセンス」



66年5月号ではSFユーモアものでしたが、こちらはシリアス、心理系作品。悪人を殺すことに執着する主人公が、警察に捕まって死刑となり、地獄に行く。そこには悪人のハートがストックされているが、それを再生できないように破壊する。それを悪魔に見つかり、下界で悪人のハートを地獄に送り込むように、下界に戻される。「いつまで続くのだ、この愚行の輪は」という主人公の叫びで物語は終わる。今読むと倫理観とかが若干古臭い感じですが、その実験精神はよし。


藤沢光男「青空太郎の絵日記」



画風からもわかるように、杉浦茂風漫画。特にストーリー性はないが、絵がちょっとグロいところが好み。


楠勝平「名刀」



'74年若くして亡くなった職人肌の漫画家であった楠さんの初期の名作。前出の「ガロ曼荼羅」によれば、これより前のガロに長編忍者モノを連載していたそうです。それがあまり成功せず、短編に転向したようですが。これが功を奏したといった感じです。この「名刀」という作品、江戸時代を舞台に侍と町人の人間ドラマを描いたもの。
ある夕暮れ、焼失した宿屋の前に旅人たちが佇む。おりしも雨が降り始め、皆は仕方なく近所の浪人風の男の家に世話になるが、いかつい雰囲気の武士と赤ん坊を連れた町人夫婦、その他商人、町人らしき人たちが、一部屋に集うことになる。成り行きから武士は持っていた「界鵬忠時」という名刀を皆に誇らしげに見せる。皆はあまり気乗りしない様子だが、武士はかまわず刀を抜いてその名刀ぶりを強調する。



そのとき、一行の中の少年が「ハハハハハ 俺の持ってる方がよくきれらあ!」と笑い転げる。



武士の顔色が変る。少年を連れていた老人は「早くわびるんだ」と少年を叱るが、少年は敵意の目を武士に向けるのみ。「小僧、目の保養をさせてもらおうか」と武士。「みせもんじゃねえ」と少年。激高した武士は少年を斬る。そして荷物を改めると中から鉋が出てくる。武士は鉋を投げつける。スーっと床の上を滑り板を削る鉋。



少年の死体の周りに呆然とする旅人たちと水溜りの中に投げ出された鉋。
この作品は全部で17ページで、コマの構成が緊迫感に富み非常に密度の濃い作品です。表現が抑制されているため、権力者対生活者、暴力に対する怒りといったテーマが、現在にも通じるものとして語られているように思います。青林工藝社から単行本が出ているようなので、機会があれば読むことをお勧めします。


水木しげる「暑い日」



暑い夜眠れなくて街を歩く「水木しげる」。石屋が作業をしている。石屋も生存競争が激しく、展覧会に出品用の墓石を彫っているとのこと。墓石の名前は「水木しげる」で死亡日付は本日。主人公はどぎまぎするが、石屋のおかみに勧められるままビールを飲む。あと5分で日付が変るそのとき、別の部屋では石屋の主人が包丁を研いでいる。

水木しげる「昭和百四十一年」



昭和四十一年に竜宮城に行った男は百年経って地上に戻ってきた。百年後の地上は植物はすべて枯れ、前衛芸術のような建築物が建ちならぶ世界。人口が増え住む場所がなくなって貧乏人は小さな体になり、逆に豪邸に住む上流階級は象のような大きさになっていた。男の子孫はもちろん小さい側で、住居も小さく、男の寝る場所はない。男は「生活にあえいでいた昭和四十一年が幸福な時期だったとは気づかなかった」と言いながら、どこへともなく去っていく。見ようによってはJ.G.バラードの終末世界を思わせる、それでいて水木的とぼけた味の漫画です。

「読者サロン」

読者サロンには「『判決』と白土三平氏」というタイトルで投稿があり、社会批判的なテレビドラマ「判決」の打切りに反対する会に、手塚治虫、大内兵衛、家永三郎氏らと並び、白土さんが名前を連ねていることに対し、白土さんがそういうことに積極的であることを喜ぶ読者の声が寄せられています。時代を感じます。

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