「農婦譚」 住井すゑ著
旧著を陽のめにさらすことはいささか抵抗を感ずる。発刊当時(1940)はケッサクのつもりだったが、四十余年過ぎた今では、いかにも稚拙で、お目にかけるのが羞かしい。
そういえば、昔の自分の写真顔にも、私はぞっとする。私には“今の今”が最高で、過去は古キズ以外の何ものでもない。
しかし、だからといって過去との絶縁は社会的にゆるされないし、また物理的にも不可能だ。それが歴史をつづる人間の宿命というものだろう。そこで、アキラメにアキラメて、ここに古キズ『農婦譚』を晒す。
(あとがきより)
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